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【読書感想2】「スパイ教室01 ≪花園≫のリリィ」

※多少のネタバレが含まれる点に注意。

 今回わたしが読んだのは第32回ファンタジア大賞を受賞した「スパイ教室」だ。

 以下簡単にあらすじを紹介する。
 かつてディン共和国にはとてつもない能力を持つ精鋭たちによるスパイチーム「焔」が存在した。「焔」は様々な任務をこなしてきたが、ガルガド帝国の研究施設から兵器<奈落人形>を盗み出す任務でクラウスを除く全員が死亡。残されたクラウスは、研究施設から兵器を盗み出す任務にリベンジするため、スパイチーム「灯」を結成する。しかしそのメンバーとして彼が集めたのはスパイ養成学校の落ちこぼれの少女たちだった。少女たちは世界最強のスパイのクラウスを陥れる実践的な訓練を積んだあと、死亡率9割を超える<奈落人形>奪還任務に挑む。しかしそこにはとある人の影があってーーという物語。

 この作品はアニメにもなっていてアニメの評判はあまりよくないように把握していたが、読んでみるとまあまあ面白いと思えた。
 一番評価できるのはキャラクターたちの個性がきちんと立っているところだ。世界最強のスパイであるにもかかわらず授業がへたくそ過ぎて教え子に命を狙われるクラウス、ポンコツなくせにとある能力とあまりのしたたかさを備えるリリィ、かなりの根暗さ(これにも原因がある)でチームメイトとなじめずにいたが、とある出来事をきっかけになじんでいくエルナなどは、登場人物の中でもとても魅力的なキャラクターをしていた。
 ストーリー的な観点で見ると、読み始めた当初はファンタジーアクション的なジャンルなのかと思っていたが、実はメインストーリーはミステリーという事実が後からわかる。スパイという作品の特性を見事に叙述トリックを用いて表現し、読者をミスリードさせる手腕はさすが大賞受賞作というふうに感じられた。
 もっとも、ファンタジア大賞を受賞した当時は学園もののストーリーだったらしく、そのあらすじの違いからも作者の苦労の跡がうかがえる。まず主人公格に当たるキャラクターが女子ではない。
 とはいえ前回紹介した「魔女首」のカトリーヌのように、(筆者的に?)激烈な見せ場を作ってくれるキャラクターがいなかったのは個人的には不満点である。この点を加味して作品の面白さの比較をすると、魔女首の方に軍配が上がると言いたい。とはいえストーリーはどちらもそれなりに面白く、文章も同様に読みやすい。

 今回は竹町先生によるファンタジア大賞受賞作「スパイ教室」の感想だった。続刊もたくさん出ているようなので、気になった人は是非チェックして下さい。


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