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新政権の誕生に向け、アンドリーセン・ホロウィッツが語るテクノロジーの新たな夜明け[Part 2]


 ドナルド・トランプ氏が勝利した選挙後に収録・公開された、a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)の共同創業者であるマーク・アンドリーセンとベン・ホロウィッツによるファイアーサイドチャットの内容を紹介します。
全編で約1時間に及ぶコンテンツから、昨日公開した前半部分のPart1に続いて、後半部分であるPart2を今回投稿します。

 Part2では、暗号資産、AI、半導体、エネルギー政策、ディフェンス・テックなど、多岐にわたる分野について議論が行われています。特に、a16zがロビー活動を行い推進している暗号資産マーケットストラクチャー法案(FIT21法案)についての話。またAI政策に至ってはエネルギー政策や半導体、気候変動といった相互に関連する隣接領域において同時並行的な規制緩和の必要性についての彼らの見解が述べられています。
 これらのくだりでは、これまでの政権に対する厳しい発言も見られ、実質的に機能するに至っていないCHIPS法の問題、また軍需産業における非合理的かつ非効率的な予算執行プロセスなど、現行政府がこれらの課題に真剣に取り組んでいない点について苦言も聞かれ、全体として政治的に踏み込んだ内容が多い印象です。ご参考下さい。


「ファイヤーサイドチャット「 Part 2」のサブテーマ」

<Part 2.>(今回の投稿分)
  ・暗号資産の規制構造を明確化するFIT21法案
  ・ワシントンD.C.の政策展望
   (AI、エネルギー、半導体、ディフェンス・テック)
  ・中国製軍用ドローンへの警戒


前回投稿分となるPart1は、以下からご覧になれます。

<Part 1.>(前回の投稿分)
  ・バイデン政権の4年間の総括とクリプト業界への締め付け
  ・トランプ候補へのa16zの貢献
  ・国家にとってテクノロジーが重要な理由
  ・暗号通貨業界への期待

 


[Part 2]


[マーク・アンドリーセン]
 それから、よく受ける質問には、「結局、あなた方は無法状態を望んでいて、規制なんて不要だと思っているのでしょう。」という批判的なものがあります。では、我々が実際に必要だと考えている規制は何で、人々を守るためにはどう変更すれば良いのか、ということです。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 我々は超党派の支持を得て、下院を通過した法案の成立に向けて非常に尽力してきました。今度は上院を通過することを期待しています。ですから、我々は規制に賛成であり、FIT21という法案を支持した候補者を応援しました。

[マーク・アンドリーセン]
 「FIT21」について少し説明しましょう。「FIT21」(※1)は暗号資産に関する新しい規制のための下院法案です。

(※1)FIT21
FIT21(Financial Innovation and Technology for the 21st Century Act:21世紀のための金融イノベーション・テクノロジー法)

[ベン・ホロウィッツ]
 これが「マーケットストラクチャー法案」(※2)と呼ばれるものです。マーケットストラクチャーとは何かというと、これが新たな技術であることを示しています。米国証券取引委員会(SEC)は「新しいものではないため、新たな規制は不要」とばかげた主張をしていますが、実際は新しいテクノロジーです。例えば、NFTやトークンは、ポケモンカードのように扱える場合もあれば、株券のように機能することもできます。この違いをどう判別するのか。証券として規制すべきなのか、それともコモディティ(商品)として扱うべきなのか。これらは全く異なるカテゴリーです。
 こうしたトークンはサイバースペースでのあらゆるものに対するデジタル財産権を表し、どちらのカテゴリーにも分類される可能性があります。そのため、起業家や消費者、取引業者に対して、これらが何なのかを明確にする指針を示す必要がありました。そしてこの法案は、これは商品、これは証券と定義を明確にするものです。そして興味深い点は、SECがこの法案に激しく抵抗したことです。しかし、こうした分野には規制が重要です。これらは新たな資産であり、規制が存在しなければ、例えば株式市場のように物事がうまくいかなくなる可能性があるのは明らかです。
 

(※2)マーケットストラクチャー法案
「暗号通貨マーケットストラクチャー法案」(Crypto market structure bill)のことで、暗号通貨やNFTといった新しいデジタル資産がどのように分類され、どの規制下で扱われるべきかを明確にするための法案です。具体的には、証券(Securities)として扱われる暗号資産は、米国証券取引委員会(SEC: Securities and Exchange Commission)が管轄。商品(Commodities)は主に商品先物取引委員会(CFTC: Commodity Futures Trading Commission)が管轄することになります。これによって、法的な不確実性を減らし、デジタル資産市場の安定化を図ることを目指しています。


[マーク・アンドリーセン]
 そして、ワシントンでは、わずか3人の共和党員以外を除いて全員が賛成し、FIT21法案が下院を通過しました。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 71人の民主党議員も賛成しました。
 

[マーク・アンドリーセン]
 71人の民主党議員が賛成したのは、選挙の前のことです。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 その民主党議員たちは、どれほど勇敢であったかをお伝えすると、ホワイトハウスに反対する立場を取り、ホワイトハウスの反対を押し切りました。法案通過前には拒否権の行使がちらつかされていたにもかかわらず、彼らは信念を貫きました。結果、超党派の支持を集めたこの法案に対しては、拒否権を発動することはできませんでした。自身の政党の最も力のある権力に立ち向かって、「これは正しいことで、米国と国民のためにやるべきことだ」と言うのは、ワシントンで頻繁に聞くことのできない話です。次の選挙で影響を受ける可能性を知りつつも、それでも信念を貫いた彼らの勇気には心から敬意を表します。
 

[マーク・アンドリーセン]
 このことは、これまでの強迫下で何が起きていたかをよく表しています。もちろん、新政権と新議会は、新鮮な目ですべてを見つめ直し、両陣営が何をしたいのかを見極めることになるでしょう。我々は良識ある規制、つまり国民を守るための適切な規制を100%指示します。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 我々には必要ですよね?なぜなら、市場には信頼が必要であり、これらもまた市場だからです。それに、ブロックチェーンや暗号資産のマーケットは、最も平等な市場であるという驚くべき特徴があります。なぜこのことが重要なのでしょうか?
 そうです。インフレを見てください。インフレは誰を苦しめたのでしょうか?インフレは本当に貧しい人々を破滅させました。あなたや私には問題なかったでしょう?なぜ私たちには良かったのでしょう?私たちはお金を現金で持っているのではなく、不動産や株などの資産で持っているからです。貧困層は不動産や株式、債券などのポートフォリオを持っていません。ですが、彼らは暗号資産のポートフォリオを持っています。特にアフリカ系米国人のコミュニティを見ると、彼らが多くの投資をしている資産クラスの1つがブロックチェーンや暗号資産です。なぜかと言えば、それが金融システムへの平等なアクセスと公平性を提供するからです。だから今回の取り締まりは、そうした金融システムへのアクセスと公平性に対する弾圧とも言えるもので、我々が議論してきた以上に巧妙で極悪非道なことだったといえます。
 

[マーク・アンドリーセン]
 さて次に、AI政策について話しましょう。暗号資産については3年前から本格的に取り組み始め、AIについても過去12か月で積極的に関与してきました。では、今のワシントンにおけるAIの見通しについてどう考えているかの話をしましょう。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 AIは少し複雑です。全く新たなテクノロジーであり、呼び方もある意味、これまでで最も恐ろしいものになってしまいました。正直なところ、別の名前にすればよかったのですが、もう定着してしまっています。
 

[マーク・アンドリーセン]
 「確率的アルゴリズム」(Stochastic algorithms)です。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 そうです、確率的アルゴリズム、いわば高次元空間での線形代数です。ただ、現実として状況は複雑で、業界内にも派閥が生まれています。特に、規制を利用して自分たちの利益を守ろうとする動きが生まれており、暗号資産やフィンテックの時には見られなかった「テクノロジー同士の争い」が生まれています。問題は、どの視点で見るかです。
 考え得る視点は、規制による市場支配の狙い、もしくは予防原則の視点です。この予防原則は、まだ起きていないことを事前に禁止する、という考え方です。一方、それとは異なり、トランプ政権が示したアプローチもあります。つまり、「我々は勝たなければならない。見守りつつ、現行法を破らないよう注意しなければならないが、勝つことが最優先だ。勝利を妨げるような規制は、阻止しようとするリスクよりも有害だ」という姿勢です。現時点の適切な姿勢はこちらだと思います。
 今のところ、AIは高度な数式や自動化の技術であり、意識があるわけでもなければ、自律的に改善されるわけでもありません。確かに未来にはいろいろな可能性がありますが、たとえばタイムトラベルの方法を発見する可能性もあるわけです。でも、今それを規制する必要はありません。それが予防原則ということです。
 このような規制を推進している人々の多くは、大企業でありながら、市場での優位性がまだ盤石ではない企業です。例えば、今のAIはちょうど1997年頃のインターネット検索のようなもので、まだ多くの競争相手がいる状況です。当時の37社の検索エンジンには、Googleという会社は存在しませんでした。もしGoogleを排除できるならば、当時の企業はそうしていたでしょう。今、名前は伏せますがある特定の企業が、そういったことを試みています。
 

[マーク・アンドリーセン]
 そうですね。そして今、一部の政府関係者が賢明だと思うのは、AIとエネルギーが密接に関連するテーマであることを理解している点です。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 ええ、非常に密接なものです。面白いのは、今後、AIのGoogle的な存在が生まれる可能性がある理由の一つに、さまざまなボトルネックが変化していることが挙げられます。現時点では、データがボトルネックになっていますが、次はエネルギーのボトルネックが控えています。最初はチップのボトルネックがあり、次にデータ、そしてエネルギー、さらにその後には冷却のボトルネックも出てくるかもしれません。特にエネルギーは最も厄介で、現在の電力網が既に負荷を抱えている中でAIの負荷を乗せれば、持ちこたえられなくなるでしょう。
 

[マーク・アンドリーセン]
 ここで少し話がそれますが、過去について触れておきます。
 私の政治仲間の中でも親しい友人の一人で、現在ノースダコタ州知事を務めるダグ・バーガム氏は、テクノロジーとビジネス界の伝説的な人物でもあります。
 彼はかつてマイクロソフトの重役であり、後にマイクロソフトに買収された「Great Plains Software」という成功したソフトウェア会社を設立し、今は州知事として2期目を迎えています。ノースダコタ州は、フラッキング(水圧破砕法)や15年ほど前に始まったアメリカのエネルギー・ルネッサンスなど、米国のエネルギー・ブームの中心にありました。このブームのおかげで、アメリカは2010年代に、ほぼ初めてのエネルギー自給を達成することができました。ダグはノースダコタ州でその成長を促進するために働いています。
 今年の夏に彼と話したとき、バイデン政権が米国のエネルギー部門に対して行っていることを説明したのですが、まるでそれは、我々がテクノロジー分野で話している法外な抑圧や絶え間ない脅威、極度の否定的な圧力がそのまま加わっていることを感じました。
 私がこの話を持ち出したのは、これらの課題がいかに相互に関連しているかを浮き彫りにしているからです。AIに携わる人々はエネルギーのボトルネックが現実のものであり、解決しなければならないことを認識しており、エネルギーに携わる人々は、これらの進歩に電力を供給しなければならないため、解決する必要があることを認識しています。また、米国が卓越した技術・経済・軍事大国であり続けたいのであれば、この2つのボトルネックに対処しなければならないことも強調されています。テクノロジーで勝ち、エネルギーで勝たなければならないのです。そして...
 

[ベン・ホロウィッツ]
 それは、汚いエネルギーを意味するわけではありません。我々が資金を出しているプロジェクトの一つに、ポータブルな原子力エネルギーがあり、そのようなものも含まれています。しかし、今の状況よりもはるかに自由にビルダーが建設を進められるようにする必要があります。エネルギーがボトルネックになってAIが停滞するかもしれませんが、それはAIだけでなく、他の多くのものにも影響を及ぼします。そしてこれらに関連する話題ですが、この状況は奇妙な地政学的不安定も生み出しています。
 

[マーク・アンドリーセン]
 そうですね、地政学を研究している人ならわかると思いますが、これは今のヨーロッパ、特にドイツにとって大きな要素になります。戦争やその他の全体の力学に関係しています。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 ドイツはロシアに依存していますね。
 

[マーク・アンドリーセン]
 ロシアのウクライナ侵攻についてですが、ヨーロッパはロシアのガスを購入することで、結果的にロシアの軍需品に資金を提供している状態です。ヨーロッパがロシアからガスを買わざるを得ない理由は、自国でのガス資源の開発をやめ、自国の原子力発電所を次々に閉鎖し、代替エネルギーの導入も拒否してきたからです。完全に自らを袋小路に追い込んでしまい、今もロシアへの資金提供を止められない状況が続いています。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 そして気候変動に関する問題について言えるのは、実際の解決策は政策ではなく、技術革新にあるということです。この点については、我々もエキスパートであるイーロン(イーロン・マスク)と多くの議論をしてきました。技術的な解決策があるのに、政策によってそれが台無しになる危険があります。例えば、イーロンはバッテリーストレージや太陽光発電で優れた成果を上げてきましたし、核分裂や安全な核融合でも大きな進展が見られています。さらにAIがシステム設計をサポートすることで、大気や気象の理解が深まり、さまざまな新たな解決策が生まれてきています。最近聞いたアイデアの一つに、太陽からの熱を調整する技術がありました。少し怖い話ですが、映画『スノーピアサー』のようなディストピア的な未来を想起させる技術で良いアイデアかどうかはわかりません。まだその技術の詳細には目を通していませんが、こうした新たな技術のアイデアが多数出てきています。
 ただ、政策によって、新しいエネルギーの導入は禁止、ガスコンロの使用をやめるべきだ、などの制約がかかると、気候変動に対する取り組みは大きく阻まれます。実際、温室効果ガス排出の多くは、我々が規制できない中国やインドのような国に起因しており、ガスコンロをやめたところで問題解決にはほとんど寄与しません。それよりも、技術を活用して解決しようとする人たちの努力を妨げることの方が問題であり、それこそが非常に危険な状況であると思います。結局、真の解決策がなくなってしまうので。
 ちなみに、これは原子力エネルギーの歴史とも似ていますよね。もし核インフラを構築できていたら、我々は今こんな問題に直面していなかったかもしれません。
 

[マーク・アンドリーセン]
 私の生まれた1971年を振り返ると、当時のニクソン大統領は「プロジェクト・インディペンデンス」と呼ばれる構想を発表していました。これは1970年代のエネルギー危機の前のことで、米国が核エネルギーを活用してエネルギーの自給自足を達成すべきと提唱したものでした。彼は2000年までに1000基の民間の原子力発電所を建設し、米国全体を電力化する計画を掲げました。この計画が実現していれば、全土のエネルギー生産がゼロエミッションの原子力に転換され、電力網と交通システムが電気化されるはずでした。
 その規模でエネルギーを生成できれば、化石燃料は完全に不要となり、米国は真のエネルギー安全保障を達成できたでしょう。そしてそれは実現可能な目標でもありました。しかし、ニクソンは同時に原子力規制委員会(NRC:Nuclear Regulatory Commission)を設立し、その後40年にわたり、この委員会が実質的にその構想の実現を阻んできました。NRCは新しい原子力発電所の認可を40年以上出さず、原子力開発の進展は完全に停滞してしまいました。
 この問題を見守り、関わってきた身として、本当に歯がゆい思いをしてきました。我々には解決策があり、それを実現する手段もあります。今設計・建設できる原子力発電所は、1970年代のものとは比べものにならないほど進化したものになります。それでも前進を阻まれてきたのです。今、核エネルギーが再興されるチャンスが生まれており、我々はすでに投資を始めていますが、もし条件が整えば、さらに積極的に投資をしたいと考えています。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 まさにその通りです。核エネルギーは最もクリーンなエネルギーで、安価に提供できる可能性もあります。フランスは見事なもので、完全にクリーンで、誰にもエネルギーを依存せず、ロシアに何も支払っていません。彼らは、我々が今持っている技術よりもずっと古く、安全性の低い技術でやっているのですから、見事なものです。
 

[マーク・アンドリーセン]
 そして関連する問題ですが、我々としては半導体産業に直接関わっているわけではありませんが、少しは関与しています。半導体はAIにとっても大きなボトルネックであり、さらに米国が台湾や中国に依存しているという点で重要な戦略課題でもあります。ここ6~8年の間に、米国内で半導体製造を再開する必要があるという認識が両党で強まってきました。
 バイデン政権は「CHIPS法」(※2)を成立させることで、当初は先見性のある行動を取ったように見えました。バイデン氏はこの法案により、米国のチップ製造施設に400億ドル以上を配分することを目指し、大きな成果として誇示しました。インテルをはじめとする主要な企業は、CHIPS法の資金援助を受けて米国での製造能力を大幅に拡充することを約束し、政権が掲げた目標と合致した動きを見せています。しかし最近知って驚いたのが、現時点でCHIPS法の資金のうち、実際に企業に支給されたのは、そのわずか0.4%に過ぎないということです。
 

(※2)CHIPS法
CHIPS法(CHIPS and Science Act)は、米国内半導体産業の振興を目的に、半導体製造施設の建設や拡張などを行う企業に対して、390億ドルの助成と25%の投資税額控除を行うほか、研究開発を行う企業に110億ドルの助成などを規定する法律。2022年8月成立。


[ベン・ホロウィッツ]
それでは、ゲルシンガー(インテルの現CEO)は、借金を抱えているんですか?資金が届かないまま拡張を進めてしまっているのですか?
 

[マーク・アンドリーセン]
 インテルの資金計画には、まだ入金されていない1,000万ドルが含まれています。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 それは厳しいですね。かなり大きな穴ですね。
 

[マーク・アンドリーセン]
 これは絶え間ない再交渉の繰り返しが必要となっています。実は、右派の人とは言えないエズラ・クライン氏が18ヶ月前にニューヨーク・タイムズのコラムに、この点についてとても興味深い内容を書いています。タイトルも秀逸で、「エブリシング・ベーグル・リベラリズムの問題」と名付けられていました。商務長官のライモンド氏とのインタビューの中で詳細に述べていましたが、つまり、この重要な国家安全保障産業政策を達成するためには、これらの企業に施設を建設させた後に、資金を提供しなければならないということです。このイニシアチブに他の政治的な条件を付けるべきではないと述べていました。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 文字通り、議会を通過する法案のようなものですね。
 

[マーク・アンドリーセン]
 つまり、結局お金は支払われていないんです。再交渉で新たな政治的要件が追加され続けているために、資金が動いていないというのが実情です。詳細は彼の記事を読んでいただくとして、要するに、彼が記事で警鐘を鳴らしたことが、すべて実際に起こってしまったわけです。その結果、インテルなどの米国企業や米国への投資と工場建設を約束していた海外企業が宙に浮いたままになっています。構想はあるものの、実行には至っていないのです。
 新政権では、これを検討し、本当にやりたいかどうかを決めるチャンスがあります。しかし、もしそうするのであれば、もっと積極的なアプローチを取るかもしれません。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 私が驚いたのは、日本が同じように「CHIPS法」に相当する制度を利用して、それを見事に実現した点です。彼らは工場をすでに建設しています。ご存じの方も多いと思いますが、日本は官僚主義を発明したような国です。彼らはルールや書類、チェック体制や合意形成が大好きですし、多くの面で集団主義の文化があります。それにもかかわらず、彼らは実行できたわけです。現時点で、我々の方がはるかにひどい状況になっています。
 

[マーク・アンドリーセン]
 その通りですね。他の問題ばかりに気を取られて、停滞しているのを放置しているという状況です。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 いつもそうですね。
 

[マーク・アンドリーセン]
 確かにそうです。あと2つ話すべき領域があります。1つはディフェンス・テックです。我々が手掛けているようなテクノロジーが、国防や国家安全保障にどのように活用されていくかについて、少し触れておきます。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 ディフェンス・テックについては非常に複雑な分野です。ディフェンス・テックにはどんな課題があるのか?という点に目を向けると、大きな課題が2つあります。1つ目は調達プロセスにあります。米国では、過去のさまざまな事例が影響して汚職を防ぐための調達ルールが導入されてきましたが、今ではそれが非合理的で過度に厳しいものになっています。
 1つの例が「コストプラス方式」です。このコストプラス方式は、開発にかかる費用に対し、10~20%の追加分を上乗せして支払うという仕組みです。しかし、この方式には問題があって、企業は開発にかける費用が増えれば増えるほど多くの利益を得られるため、意図的にプロジェクトを長引かせたり、従業員に高額の報酬を支払ったりするインセンティブを設ける傾向にあります。結果として、プロジェクトが3年遅れようが、テクノロジーが期待値を下回ろうが、ペナルティが課されられることはありません。むしろ、企業側にとっては、効率化やコスト削減に取り組む方が不利になるという図式があります。
 高い技術力を持つ先進的な企業は、自社で研究開発に投資することで、コストプラスより高い利益率を確保し、より優れた技術をより早く、しかも半分の価格で提供できると考えているのですが、この調達モデルではそれが実現できないという課題があり、このような課題を解決するための取り組みを進めています。
 さらにもう1つの問題についてですが、防衛や情報機関のパートナーを支援するために多くの時間を費やしているのですが、彼らの予算編成プロセスも非常に難しいのです。すでに費やした予算や現在契約している業者の存在から、新しいものを導入するには複雑な手続きが必要となります。これは大きな問題で、今後改善が必要な部分となっています。アプローチとしては、世間の批判を避けるという観点からではなく、勝つためにどうするかという観点から考える方が、より建設的だと思います。ですが、現実的にそれをどう実現するかの課題がまだ残っており、今後も積極的に取り組む必要があります。
 新しい政権でのテクノロジーに関する話題について言えば、政府が対話に前向きであるということが大きな進展であるといえます。我々の意見に必ずしも同意してもらえるとは限りませんし、意見を却下されるかもしれませんが、少なくとも話し合う機会があります。以前の政権では、例えばダン・パトリック(テキサス州の副知事か?)が「お前たちはバイデンに面会を求めるなんて身の程知らずだ」と批判していましたが、実際には我々は誰でもいいから話ができる相手がほしかっただけです。それは我々だけでなく、世界最大のテクノロジー企業や大手製薬企業のCEOたちも同じです。以前はそういった大企業の代表でも政府と話し合う機会がほとんどなく、その結果、政権側も問題を解決するために必要な情報を得ることができなかったのです。
 

[マーク・アンドリーセン]
 そうですね。会えなかった理由も今なら少しは理解できますが。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 ええ、そこには踏み込まないでおきますよ。今日は、テクノロジーの話ですからね。
 

[マーク・アンドリーセン]
 それから防衛の話を締めくくるとしたら、今こそこうした議論が必要だということです。テクノロジーの進化が、防衛や戦争のあり方を非常に速いペースで変えています。ウクライナの現状を見ても分かる通り、ロシアとドローンを使った戦闘が繰り広げられており、その影響が如実に現れています。
 先日、特殊部隊の伝説的な人物と話をしましたが、彼が言うには、攻撃用と防御用のドローン技術が、馬具の「鐙(あぶみ)」以来の重要な軍事技術だというのです。その理由として、鐙はただ馬に乗るためのものではなく、馬上で立ち上がり弓矢を使えるようにした点が重要だったと言っていました。つまり、騎兵が移動しながら攻撃できるようになり、圧倒的な戦力になったのです。例でいえば、チンギス・ハンのようにです。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 チンギス・ハンは全く歩兵を使わず、騎兵だけで支配を広げましたが、馬に乗ることを可能にした鐙のおかげでしょうね。
 

[マーク・アンドリーセン]
 そうですね。どこにでも現れて完全に圧倒的な戦力を誇り、当時はそれに対抗する手段が全くなかったのです。そして彼はこう言うのです。「今では、40人とドローンがいれば、ほとんど何でもできてしまう」と。しかも、それが1機や40機のドローンだけでなく、1000機や1万機、10万機に増えたらどうなるか、想像してみてください。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 ええ、ドローンもどんどん賢くなっていますしね。
 

[マーク・アンドリーセン]
 その通りで、ドローンは群れ(Swarm)での自律行動ができるようになっています。しかも、防御においても重要です。2,000万ドルのミサイルでドローンから防衛することはできません。もちろん、2000万ドルのトマホーク・ミサイルで1機のドローンを破壊することはできますが、1万機のドローンから受ける攻撃を防衛することはできません。ですから、カウンター・ドローンが必要なのです。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 カウンター・ドローンやハッキング技術も含めてですね。
 

[マーク・アンドリーセン]
 まさにそうです。これからは自律性、AI、ドローンが鍵となり、空中だけでなく水中、地上など様々な場所でドローンが活躍する時代になります。米国防総省も中国軍も、この技術が戦争のあり方を完全に再定義するものだと認識しています。ドローン戦やそのテクノロジー競争で勝利する国が、最も強力な軍事力を手にすることになります。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 引き分けに持ち込めたとしたら、それも素晴らしい結果だと思います。むしろ、勝利よりも引き分けの方がいいのかもしれません。
しかし、遅れを取り戻すために早く行動を起こさないといけません。
 

[マーク・アンドリーセン]
 現状、まさに差し迫った問題になっています。よくある話ですが、戦場にいる現場の方々、つまり戦闘員と呼ばれる人たちは、皆が我々に賛成しているのです。もう現場は準備万端です。皮肉なことに、今は米国軍でも、中国製のドローンを作戦のためにリュックに入れて持ち歩いている兵士が多く、中国がドローン市場を大きくリードしてしまったため、結局、中国製のドローンを使わざるを得なくなっているのです。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 何が起きるか、想像がつきますよね?
 

[マーク・アンドリーセン]
 そうです。この状況をよく知らない方に、最悪のケースをお伝えすると、ドローンのグローバル市場を中国が制覇すると、あらゆる米国軍の部隊に中国製のデバイスが配備されることになるかもしれず、さらにはそれらが監視ツールや武器として中国に利用されてしまう可能性もあります。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 例えば、ポケットベルのように持ち歩くことができるようなものもそうですね。
 

[マーク・アンドリーセン]
 まさにその通りで、将来の潜在的な対立相手に技術依存をしてしまうことになるわけです。我々は、これまでこの問題について極めて浅い認識で政策を進めてきました。さらには、連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)も米国のドローン産業の成長を阻むような立場をとり続けてきました。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 更にもう一つ言いたいのは、米国製のドローン企業であるSkydio社(カリフォルニア州サンマテオ)に対し、中国が輸入制限をかけてきたのに、我々米国はそれについての対処を行っていない点です。ここでの本質的な問題は、「勝つことを第1目標に定め、その後に安全や公平性を整えるべきか?」ということです。あるいは、「安全や公平性をまず優先することで、負けてしまうのであれば、それでもいい」とするかです。残念ながら、米国は後者の考えに偏っているように思えます。このことは国家にとって非常に危険な状況であると言えます。 


[マーク・アンドリーセン]
 それではこのあたりで締めくくりたいと思います。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 皆さん、お聞きいただきありがとうございました。
 

[マーク・アンドリーセン]
 本当にありがとうございました。ご参加いただいた皆さまに心から感謝いたします。またこのテーマについて、今後も皆さまに情報をお届けしていきたいと思います。このようにお話しできてとても良かったですし、近い将来が非常に楽しみです。
 

[ベン・ホロウィッツ]
 ええ、そうですね。将来が楽しみです。
 

[マーク・アンドリーセン]
 それでは、皆さんありがとうございました。
 

(以上です)


<オリジナル・コンテンツ>

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご視聴になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

a16zより
(Original Published date : 2024/11/13 EST)



<参考コンテンツ>



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だうじょん


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