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クラウドストライク:2024年度Q4決算:無事通過して安堵 - 窓あけて最高値更新


 日本時間2024年3月6日(水)の早朝、米国株式市場のクローズ後、クラウドストライク(CRWD)は2024年度第4四半期の決算発表を行いました。 ここでは、第4四半期決算の主要なハイライトと決算説明の内容についての要点をまとめて紹介します。尚、決算としてはQ4、通期ともに無事通貨し、来期ガイダンスもアナリスト予想を超えてアフターマーケットで最大28%超の暴騰がありました。 
 しっかりと成績を出し続けている素晴らしい会社ですが、CEOのジョージ・カーツさんも やはり熱血漢なんでしょうかね。俺たち、Palo Alto NetworksもSplunkもAzure Sentinelもやっつけたんだぜ!と躊躇もなく、競合他社の名前をあげて自社の実績ネタにするなど、流石です。とりあえず、ドンヨリしていた他のサイバーセキュリティ銘柄も少しは戻り感が出て良かったです。

現地5日、マーケットクローズ後のCRWD株価推移(最大28.47%上昇)





1. クラウドストライクについて

 クラウドストライクは、クラウドネイティブなサイバーセキュリティソリューションをする企業です。同社のフラッグシップ製品であるFalconプラットフォームは、PCやモバイル、サーバーなどのエンドポイントデバイスにインストールされる小さなエージェントを通じて得られる大量のシステム状態や振る舞い情報からAI・機械学習を利用してセキュリティの脅威や脆弱性を様々なメトリックスや脅威インテリジェンスと組み合わせて自動検出し、脅威防止のための情報をユーザーに提供するソリューションです。このクラウドベースのエンドポイントセキュリティ技術で業界をリードしてきたクラウドストライクは、そのソリューションポートフォリオをクラウドセキュリティやITオペレーションのセキュリティなどに拡大し、企業がサイバー攻撃から受ける侵害を迅速かつ効果的に解決できるソリューションを提供しています。

クラウドストライクの企業概要


更に詳しくは、Q4決算前に投稿したこちらの記事もご覧ください。


2. 2024年度Q4決算:主要指標

(1)予測値との乖離について

 Q4決算の実績とアナリスト予測の星取表です。2024年度の実績、来期ガイダンス共にアナリスト予想をクリアしました。

2024年度 Q4&通期 結果
2025年度 Q1&通期 ガイダンス


(参考)現在の株価チャート:現在のクラウドストライクの株価チャートはこちら(↓)をクリック。(Powered by TradingView)


(2)主要指標について


売上と利益の推移(クリックして拡大)

全体として順調に成長しており、健全化が進んで2024年度に入って黒字化し、4四半期を経るごとに収益率も高まっていることが伺えます。

[売上]
 
前年同期比での成長率が緩やかとなっているが30%を超える高い成長率を維持。

[売上総利益率]
 
コンスタントに72%から75%近辺をマークしながら推移

[EBITDA]
 
2024年度Q1よりプラスに転じ、しっかり成長を持続している

[純利益]
 
2024年度より大幅改善。今回決算で最も高い利益&利益率をマーク


(3)決算説明でのトピックス

① ハイライト

  • ARR(年間継続収益)が前年比34%増の34.4億ドルに達した

  • 新規ARRは前年同期比27%増で、過去最高の2.82億ドルになった

  • 4四半期連続で過去最高益を記録(GAAPベース、非GAAPベース共に)


② 2024年度 通期

  • 総売上は30.6億ドルで前年度比36%増加

  • ARR(年間継続収益)は前年同期比34%増の34.4億ドル

  • サブスクリプション収入は28.7億ドルで前年度比36%増加

  • GAAPベースのサブスクリプション売上総利益率は78%、

  • 非GAAPベースのサブスクリプション売上総利益率は80%

  • GAAP基準の営業損失は200万ドル、2023年度は1.9億ドルの損失

  • 非GAAP基準の営業利益は6.6億ドルで前年比86%増(売上高の22%)

  • GAAPベースの当期利益は8,930万ドル、前年度は1.83億ドルの損失

  • 非GAAPベースの純利益は7.51億ドルで前年度の2倍以上

  • GAAPベースの1株当たり利益は0.37ドル(希薄化後)

  • 非GAAPベースの1株当たり利益は、希薄化後3.09ドルを達成(希薄化後)

  • フリーキャッシュフローは前年比39%増の9.38億ドルで年間目標を上回る(売上高の31%)

  • 2019年度のIPO後の5年間で、過去4四半期および通期でGAAPベースの黒字を達成。最終ARRが10倍以上に成長

  • 過去最高の営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローを達成。フリーキャッシュフローのマージンプロファイルが30%以上に成長


② 2024年度 Q4

  • 総売上は8.45億ドルで、前年同期比33%増加

  • 新規ARR(年間継続収益)は前年同期比27%増の2.82億ドル

  • サブスクリプション収入は7.95億ドルで、前年同期比33%増加

  • プロフェッショナルサービス収入は4,940万ドルで、前年同期比26%増加

  • 総額100万ドル超の案件数の伸びが30%以上に加速

  • サブスクリプション顧客数は29,000社(MSSPパートナー経由の小規模顧客を除く)

  • 100万ドル以上の取引案件が250件以上、50万ドル以上の案件が490件以上、10万ドル以上の案件が1,900件以上と記録的

  • 地域別売上高構成比:米国68%、EMEA16%、APAC10%、その他6%

  • プラットフォーム導入は、8モジュール以上の案件数が2倍超となった

  • 新規顧客の平均採用モジュールは4.9となる。

  • グロスリテンションレートは98%、ドルベースのネットリテンションレートは119% (既存契約の維持率の1指標であるグロスリテンションレートは、アップセルやクロスセルなどの金額を含まない。一方で、ネットリテンションレートには、既存顧客に対するアップセルやクロスセルの金額が含まれる

  • GAAPベースの売上総利益率は78%で前年同期比282bp増

  • 非GAAPベースの売上総利益率は80%で前年同期比291bp増

  • GAAPベースの営業損益は2,970万ドルの利益

  • 非GAAPベースの営業費用合計は売上高の53%、営業利益は2.13億ドルで前年同期比123%増

  • 営業利益率は過去最高の25%で前年同期比10ポイント増

  • GAAPベースの純利益は5,370万ドル

  • 非GAAPベースの純利益は2.36億ドル

  • GAAPベースの希薄化後1株当たり利益は0.22ドル

  • 非GAAPベースの純利益は2.36億ドル

  • 非GAAPベースの希薄化後1株当たり利益は0.95ドル。それぞれ前年同期比で2倍以上

  • 2024年1月31日現在のキャッシュ、キャッシュ同等物および短期投資は34.70億ドル、フリーキャッシュフローは2.83億ドル

  • 営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローも過去最高を記録


③ 今後の展望

  • 今後5~7年間でARR 100億ドルを達成目標とするビジョンに向けて会社を動かしていく。

  • 事業の勢いは案件の大型化や契約獲得率の向上により支えられているが、マクロ環境の不確実性の中で慎重なアプローチを継続

  • Q4の業績と次期Q1のパイプラインの強さを踏まえ、新規契約ARRに関して前向きな見通し

  • ARR100億ドル達成に向け、イノベーションと市場戦略機能への投資を継続し、2025年度上半期の採用ペースを引き上げる

  • 2025年度は、上半期の採用増やマーケティングプログラムの時期変更により、営業効果は下半期に偏重すると予想

  • 2025年度は、事業規模が拡大し、大型案件とより多くのモジュールの獲得のため、ネットリテンションは120%前後となると予想

  • Q1の総売上は9.22億ドルから9.58億ドルの範囲で、前年同期比30%から31%の成長を見込む

  • 非GAAPベースのQ1の営業利益は1.88億ドルから1.9億ドルの範囲で予想

  • 2025年度通期の総売上は39.24億ドルから39.89億ドルの範囲、成長率は28%から31%を見込む

  •  2025年度通期の非GAAPベースの営業利益は8.63億ドルから9.13億ドルを見込む

  • 2025年度の非GAAPベースの純利益は9.4億ドルから9.89億ドル、1株当たり純利益は3.77ドルから3.97ドルの範囲を予想

  • 2025年度のフリーキャッシュフロー目標を売上高の31%から33%に引き上げ



3. 2024年度Q4決算:主旨要約

 以下は、投資家向けに配布された資料ならびに、決算説明会(カンファレンスコール)の経営陣の発言の主旨を捉えて要約したものです。発言者は、クラウドストライクのCEOであるGeorge Kurtz氏、またはCFOのBurt Podbere氏のいずれかとなります。

(1)クラウドストライクの市場認識

  • 現在のマクロ環境は安定しており、来年も顧客の予算精査が継続すると予想

  • サイバー脅威は高まり、攻撃のスピードが加速。クラウドへの侵入試みが75%増加。生成AIが敵の戦力になっている

  • クラウドストライクは毎日何兆もの脅威シグナルを収集し、サイバー脅威データセットを作成している

  • サイバーセキュリティは多くの企業の取締役会で最優先事項。SECの規制は企業と取締役会へのプレッシャーを増大させている

  • サイバーセキュリティ市場には、被害を応急処置する模倣プロダクトやベンダーロックインの習慣が横行している

  • 統合されていないポイント製品を競合他社が顧客に販売する唯一の方法は、ELA(Enterprise License Agreement)とバンドル中毒である

  • 効果のないサイバーセキュリティツールの使用は生涯コストがかかりすぎると認識されている

(2)自社の評価

  • サイバーセキュリティプラットフォームの成功の秘訣は、1つのプラットフォームに1つのコンソールと1つのエージェントの存在。Falconプラットフォームはオープンで、データ中心で、AIネイティブで、スケーラブルで、既存のOSセキュリティベンダーやレガシーAVベンダー、次世代ベンダーをFalconの単一コンソール、単一エージェント、単一プラットフォームに統合して置き換える

  • 技術、人によるインシデントレスポンス、脅威アナリスト、データサイエンス、エンジニアリングの専門知識が競争優位性として機能

  • クラウドストライクはCSPM、CIEM、ASPM、CWPを含むクラウドセキュリティの総合スイートを提供し、ランタイムプロテクションを含むアクティブなリアルタイムの脅威から保護

  • クラウドストライクはAI企業であり、効果的で正確なAIモデルを訓練して攻撃を防ぐ。Falcon for ITとCharlotte AIの導入で、ITの課題解決と生成AIの生産性向上に貢献

(3)クローズした大型案件

  • 大手クルーズライン企業との数百万ドル規模の契約

  • 大手チップメーカーとの数千万ドル規模の取引記録

  • フォーチュン100の企業に対し、5つの異なる製品の提供を通じ、数千万ドルの複数年契約を獲得

  • 超成長中のAI企業で数千万ドル規模の複数年契約を獲得

  • 大手ハイパースケーラがFalconクラウドセキュリティの利用を拡大し、数千万ドル規模の取引に

  • 世界的な金融サービス大手がPalo Alto製品をクラウドストライク製品でリプレース。これにより管理時間70%削減、年間500万ドル以上の人件費削減を実現

(4)Go-to-Market

  • フリクションレスのGo-to-Market戦略として柔軟なライセンスモデルを提供する「Falcon Flex」を発表。Falcon Flexとは、顧客がクラウドストライクと締結するオプション契約の一つで、企業が自社のニーズに合わせてFalconプラットフォームをカスタマイズ契約でき、コスト効率を追求できる購入オプション

  • 主に中小企業向けとしてのMSSP(Managed Security Service Provider)ビジネスが前年比で3桁成長を達成

Falcon Flex:必要なプロダクトをアラカルトで設定可能
(出典:クラウドストライク)

(5)SIEM

  • LogScale次世代SIEMは市場で急速に成長しているSIEMソリューションの1つ。LogScale次世代SIEMは前年同期比170%以上の成長を達成し、ARRが1.5億ドルを超えた

  • LogScaleは1,000社以上の顧客に選ばれている。また顧客から圧倒的な関心を集めており、次世代SEIMはレガシーSEIMからの脱却を目指す企業にとってSplunkの代替として急速に台頭している

  • 大手モバイルコンピューティング企業がレガシーSIEMをLogScaleをでリプレースし標準化した。

  • ホスピタリティ企業がSplunkとAzure SentinelをLogScaleでリプレースし、クラウドストライクとの関係を拡大

  • Deloitteと提携し、Splunk、Elastics、Azure Sentinelを打ち負かす

「統合された単一プラットフォームであるFalconは、
競合他社のポイント製品を置き換えてTCOを削減する」の図
(出典:クラウドストライク。クリックして拡大)

(6)パートナーシップ

  • デルとのパートナーシップを強化し、5,000万ドルを超える取引を達成。デルがFalconを同社の新サービスとして標準化

  • AWS Marketplaceを経由したビジネスが売上高10億ドルを突破し急速に成長

(7)直近のハイライト

  • 「Flow Security社」の買収に合意、業界初のクラウドデータランタイムセキュリティソリューション(下記参照)

  • 2023年フォーチュン・フューチャー50リストで3位にランクイン



4. Flow Security社の買収について

 Flow Security社は、企業向けのデータセキュリティソリューションを提供するイスラエルのスタートアップ企業で、クラウドストライクは、2025年度Q1中に買収を完了させると発表しています。規模の小さい企業のため、波風も立たず、ほぼ話題にもなっていないのですが、少し調べてみましたので紹介したいと思います。 
 Flow Security社の買収は、CrowdStrike Falcon XDRプラットフォームに対して、データそのものにフォーカスしたデータ セキュリティ ポスチャー管理(DSPM)の機能強化を目的とし、顧客に既存のDLP製品(Data Loss Prevention)を置き換えることがFlow Securityによる機能強化の目論見であるとのべています。このデータ セキュリティ ポスチャー管理(DSPM)とは、セキュリティ対策の継続的な監視・更新・改善を通じて、組織データを不正アクセス、悪用、窃取から保護するための主にインテリジェントなオートメーション技術を利用して提供されるソリューションフレームワークとなります。 
 このシードステージの小さなスタートアップであるFlow Security社は、企業内の様々なデバイスにおいて蓄積・利用されるデータを対象とし、データのカタログ化やアクセス制御を行う他、データをリアルタイムに識別・分類し、機密情報や個人識別情報を特定し、データのライフサイクル全般通じてデータ損失やデータ漏洩などのセキュリティリスクに迅速に対応するソリューションを提供しています。特に、データが静的保存されている状態や転送中の動的状態のいずれの状態であっても、構造化されたデータや非構造化データを問わず、個人情報(PII)や保護医療情報(PHI)、クレジットカード情報(PCI)などの機密性の高い情報を自動的に識別し、リスク特定やデータ漏洩防止、脆弱性対応をリアルタイムで行える点で特徴を持った企業の模様です。詳細は不明ですが、データをリアルタイムで監視し、リスクを把握。その後、生成AIサービスを通じてデータ漏洩を防止するような機能も有しているようです。

(1)提供する主な機能

① データ発見&分類
 アクティブおよびシャドウデータのディスカバリー、リアルタイムでのデータベースカタログ作成、構造化・非構造化データの分類機能

② データ漏洩防止
 連続したデータフロー監視、リアルタイムのポリシー適用、異常検知による漏洩防止策の実行

③ データセキュリティポスチャ―&リスク管理
 
セキュリティや規制のフレームワークに基づくデータリスクの継続監視とリアルタイムでの根本原因分析

④ データアクセス制御
 
機微なデータの可視化、データアクセスポリシーのリアルタイム適用

Flow Securityのランタイム分析 概念イメージ
(出典:Flow Security)

(2)企業概要

  • 社名     : Flow Security

  • URL     : https://www.flowsecurity.com/

  • 本社所在地  : イスラエル、テルアビブ

  • 創立年度   : 2020年

  • 従業員数   : 39名

  • 上場     : 非上場

  • インベスター : Amiti、GFC、Amdocs Ventures、Singtel innov8他

  • 調達金額   : 2022年8月にSeed Round 10百万ドル。その他不明



御礼


 最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 
 

だうじょん


免責事項

 本執筆内容は、執筆者個人の備忘録を情報提供のみを目的として公開するものであり、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。また、本執筆によって提供される情報は、個々の読者の方々にとって適切であるとは限らず、またその真実性、完全性、正確性、いかなる特定の目的への適時性について保証されるものではありません。 投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、読者の皆様ご自身の判断と責任で投資なされるようお願い申し上げます。




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