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短編「夜明けのLukta-Gvendur」


〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜


カチンと
Zippoの金属音が響く。

暗がりのガレージでライターを灯し
すっかりと乗らなくなったオンボロ車のエンジンをかけてみる。

ようやくキー穴を探し
セルを何度か回してみたが
エンジンはかからない。

(ダメかな?)

諦めかけた時
ふいにカーステレオから懐かしいジャズが聴こえてきた。

(バッテリーは残っていたんだな。)

すっかり銀髪になっている彼は遠い日を想い出していた。






なんとなく気恥ずかしくもあったけど
初めて君の手を握って
二人で踊ってみたあの夜

君は伏目がちにたゞ俯いて
僕の服の裾をつまんでいた

覚束ないながらも
足取りを確かめて
スウィングに身を委ねてみる

若かったあの頃
暗闇でダンスを踊る
二人の間だけに感じた
胸に灯火を点すような
君への温かな想いが
脈打つ蔦のように絡まっていったあの夜

今ではすっかり銀髪となった
久しぶりのLukta-Gvendur

青春時代の想い出に光を灯すようだ。

「ブルルル. . . . 。」

いつの間にかオンボロ車のエンジンが動き出した。

(こいつ. . . まだくばってないぞ?)

ガレージの扉を開けると
すっかりと朝焼けの空が白み始めている。

彼は愛車をゆっくりと転がしていく。
今日というかけがえのない
新しい一日の始まりに向かって。

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

池田誠司 on Instagram: "Bjork "Lukta-Gvendur"(1990) カチンと ジッポーの金属音が響く。   暗がりのガレージでライターを灯し すっかりと乗らなくなったオンボロ車のエンジンをかけてみる。   ようやく見つけたキーを探して回してみる。   (ダメかな?) セルを何度も回してみてもエンジンはかからない。   諦めかけた時 ふいにカーステレオから懐かしいジャズが聴こえてきた。    (バッテリーは残っていたんだな。) すっかり銀髪になっている彼は遠い日を想い出していた。   ・ ・ ・ ・ なんとなく気恥ずかしくもあったけど 初めて君の手を握って 二人で踊ってみたあの夜 君は伏目がちにたゞ俯いて 僕の服の裾をつまんでいた   覚束ないながらも 足取りを確かめて スウィングに身を委ねてみる   若かったあの頃 暗闇でダンスを踊る 二人だけの時の 胸に灯火を点けるような 君への温かな想いが 脈打つ蔦のように絡まっていったあの夜   もう今ではすっかり銀髪となり 久しぶりのLukta-Gvendur 青春時代の想い出に光を灯したようだ。   「ブルルル. . . . 。」 いつの間にかオンボロ車はエンジンがかかっていた。   (こいつ. . . まだくばってないぞ?)   ガレージの扉を開けるとすっかりと朝焼けの空は白み始めている。 彼は愛車をゆっくりと進めていく。 今日というかけがえのない 新しい一日の始まりに向かって。   〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜   英語でもなく、フランス語でもない。 ビョークはメジャーデビュー前に母国語のアイスランド語で歌う"Lukta-Gvendur"は「灯りを点ける(老人の名前)」だそうです。 #詩がすきな人と繋がりたい #bjork" 3 likes, 0 comments - seiji.lakefield on September 20, 2023: www.instagram.com

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