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ロング・キャトル・ドライヴ  第六部 連載1/4 「狙撃」

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これまでのあらすじ

元保安官の老人トーマスの証言から
引き上げた遺体はヒューゴと断定した。
少年二人はヒューゴを弔うべく
アレクサンドラが埋葬されているという
故郷ガットリンバーグへと向かう。


第六部




俺とユーレクがナッシュビルの街を離れてから
一週間が経つ。

双子姉妹を巡る不思議な縁に導かれて
俺たちはヒューゴの遺骨を
ガットリンバーグの地下に眠っている
双子姉妹の下へと届けようとしている。

目的地ツーソンと逆方向に進路を取りながら
俺たちはそれぞれの運命を噛み締めるように
東へと歩みを進める。

思えば
ユーレクと共に旅を始めて以来、
予測不能の出来事によく遭遇するし、
思いもよらぬトラブルに巻き込まれたりする。

俺からしてみれば
ユーレクの選択する行動がこのような
因果関係を生じてさせているように思える。

そのユーレクはテンガロンハットを目深に被り
馬上で夕焼けを背にして、
穏やかな眼差しを讃えている。

ユーレクの持つ何か__
それはとてつもなく澄んだレンズ越し﹅ ﹅ ﹅ ﹅ ﹅ ﹅ ﹅ ﹅ ﹅ ﹅ ﹅
独特の視点で現実世界を見ている。

ゆえにこの旅を通して目に映るもの全て
この年端も行かない17歳の俺にとっては
研ぎ澄まされた一瞬いっしゅん
時の流れが
眩しく輝いているように思えた。




ナッシュビルから東へ180マイルほど行くと
アパラチア山脈の西麓にある
ノックスビル《Knoxville》の街に着いた。

Knoxville,TN

この街のダウンタウンは開拓史より
アパラチア山脈から西へと目指す旅人たちの
宿場街として賑わいを見せている。

「なぁ、ユーレク?
ずいぶんと野宿続きだったから、ここいらで
泊まるところ探そうぜ。」

「あゝそうだな。フェルニー。
ノックスビルのダウンタウンで
いったん旅塵を落とそうか。」

俺たちは目抜き通りを進みながら
今晩泊まる馬宿を探していた。

その時である__。
パン﹅ ﹅ と銃声音が街に響き渡った。
人々が蜘蛛の子を散らすようにして逃げ惑う。

それから数発の銃声音が響き渡る。

ユーレクは下馬して
「フェルニー!逃げろ!」と叫んだ。

俺は一瞬何が起こったのか理解出来なかった。

ともかく幌馬車を停めて馭者台から飛び降り
銃声の聴こえた方角の反対側へと
幌馬車の陰に身を潜めた。

ほどなくユーレクが逃げ惑う群衆を掻き分けて
血相を変えて走ってくるのが見える。

「ユーレク!早く隠れるんだ!」

ユーレクが倒れ込むようにして
同じく幌馬車の陰に身を潜める俺の居る所に
駆け込んできた。

「痛っ . . . つつ。」

ユーレクは脇腹を押さえ
「どうやら流れ弾を喰らっちまったぜ。」
と打たれたばかりの銃創を見せた。

血が滲み出している。
俺は気が動転しそうになるのを
ユーレクは微笑みながら
「大したことない。かすり傷さ。」

「なら、良いけどさ?
万が一ってこともあるから。
バーボンの原酒で消毒しておこう。」
と俺が立ち上がった瞬間に
またもや銃声が鳴った。

目の前の幌に弾丸が貫通した。

「伏せろ!フェルニー!」
とユーレクが叫ぶ。 
 
それから数発の銃声が鳴り、幌に次々と
穴が開いてゆく。
あきらかに宣戦布告である。

「おい?ユーレク?
これって俺たちが狙われているのか?」

ユーレクはゆっくりと首を縦に頷いて
「あぁ . . . どうやらそのようだな?」

「どうするんだよ?俺たち!」
幌馬車を盾にして、この現状を打破しようと
俺たちはお互いの気色ばむ顔を
見合わせていた__。




           《つづく》

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