短編 「夕焼けは葡萄酒色に」
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鼓動する情熱のネオン
煌々と赤い風車は輝いて
人びとの夢を乗せて回りだす
かつての友と今はこうして
キャバレーで酒を酌み交わせることに
感慨深く__
花の都パリで絶世の美女たちが踊りだす
豪華絢爛なショーの始まりだ
夢の舞台は葡萄酒色
シャンパンゴールドの泡が弾け
ブランデーグラスの深い琥珀の海に
身も心も酩酊する__
フレンチ・カンカンが始まる
美女たちはドレスの裾をひらりと翻し
トリコロールの花は咲き乱れ
華やかなフィナーレを迎える…
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数年前のこと__
「なぁ相棒よ大丈夫か?」
俺は戦場の真っ只中で味方の負傷兵に肩を貸す。
「なぁしっかりしろってば!こんなところで
くたばっちまうなんてまっぴらごめんだぜ!」
俺は自分の運命を恨めしく思う。
(こんなF××kin'な戦争に駆り出されるとはな)
「お偉いさん方はよぉ…
イデオロギーだの国防だの言ってるが
そもそも軍需産業のマネーゲームに
この世界は踊らされているんだよ!」
負傷兵は虫の息をしながらも
俺の言うことに相槌をうってくれている。
「あんたはイイ奴だよ。だが…
俺たちのお役目もどうやら潮時らしいな。」
と負傷兵は云った
祖国のためにと最前線で一進一退の攻防を
繰り広げているにも関わらず
この不毛な戦争の勝敗を決めるのは政治家だ。
どうやらこの戦争もそろそろ終止符が打たれると風の噂で聞いている。
「なあ…戦争が終わったらどうすんの?」
負傷兵に声を掛ける。
負傷兵は口元に微笑みを浮かべて
「とりあえずキャバレーにでも行くよ。」
意外にも頼もしい返事に安堵する。
「アハハ!たしかに。
人生に意味なんてないよな。
良くも悪くも俺たちは今ここに生きている。」
そう言って、俺たちは目をみあわせて
大声で笑い合った。
夕焼けは葡萄酒のように赤く__
人生の風車はゆっくりと回りだす。
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※この物語はフィクションです。
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