日本を代表するキュレーターが贈る名著!『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』
本日は長谷川祐子著『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』を読了いたしましたのでレビューしていこうと思います!
著者の長谷川祐子さんは現在東京藝術大学の教授で、過去には金沢21世紀美術館の芸術監督や東京都現代美術館のチーフキュレーターを勤められた方です
今まで数多くの展覧会やビエンナーレの企画に携わっており、アートに興味がある方なら名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
実際、私は長谷川祐子さんを知ってからキュレーターという職業を知ったくらいで、もう私のなかでは半分神格化されてます笑
そういうわけで、神がどのようなことを考えながらキュレーションされているのかを知ろうと思ったのがきっかけで本書を手にしました
本書の感想をひとことで表すなら
キュレーターすごい!!!
です!(語彙力笑)
言及したい箇所はもう無数にあるのですが、そのうちいくつかをピックアップして感想を述べようと思います
キュレーターは得体の知れない含意と奥行きを秘めた芸術作品(マスターピース)と、表象批判の先鋭のような実験的作品(カッティングエッジ)をともに扱いながらそれが存在することの意味を、展覧会として問いかける。 (中略) 人びとの意識を変えるという確信犯的目的に基づき、視覚を通した集合意識、集合記憶をすくいとり、《文化》としてフォーマット化し、次代に接続しようとする善意の歴史家。それがキュレーターだ。
1章「キュレーターとは何か」より
正直1章を読んだ時点では、「歴史家」という単語にあまりピンときていませんでした
しかし本書を読み進めていくうちに、美術というものが今までのコンテクストの上に成り立っていること、時代とともに展覧会、キュレーションも変化し《文化》になってきたことを実感して、歴史家という言葉がスッと納得できました
文化にするのがキュレーターとはなかなか大変な職業ですね…
この十年、世界の主なビエンナーレでは、ポストコロニアルやグローバル・カルチャーといった大鉈の議論を雄弁に語るテーマ設定が流行り、似たような作家が連なる傾向がある。私はそれを「空中戦の展覧会」と呼んでいるが、空中戦では地上の観客の顔は見えない
6章「アートと社会をつなぐ」より
ここは「空中戦の展覧会」という語彙のセレクトが個人的にツボだったのでピックアップしました
実際の観客の顔が見えにくいようなテーマの展覧会を「空中戦」と比喩するのは的確な気がします
やはりキュレーターは図録や解説など文章を書くのも仕事なので、達者というか言葉選びが巧みだなと思いました
こういうスキル身に付けたいです
キュレーター、この罪深き職業の《罪の極北》は、美術館、美術品の終焉のヴィジョンを覚悟しつつ、最も誘惑的な声で美術館、芸術品の存続の意味を語り続ける二面性にあるのだ
12章「experience/experiment/expert/testimony」より
この文章は本書の結びの一文です
確かに美術館、美術品の価値は時代の展開により価値がなくなってしまう可能性はあります
ですが、キュレーターは1章で語られた「次代に接続しようとする善意の歴史家」として、活動していくわけです
このような視点で美術を捉えることはキュレーター独特かなと思います
歴史を継ぐ、といってしまうと大げさに聞こえるかもしれませんが、個人的にはスゴく魅力的な響きです
私がキュレーター志望なのは以前のブログで書きましたが、よりなりたい欲が強まりました
本書にはキュレーターという仕事の苦労、喜びがつまっています
読めば美術鑑賞をする際に新しい視点を追加してくれるような一冊です
美術鑑賞をされる方なんかは特にご一読の価値ありです!!
それでは!
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