見出し画像

『無銭優雅』 山田詠美

新宿から15分中央線に乗ると、西荻窪、吉祥寺、三鷹。私が好きで、そして住んでいるエリアだ。この小説は三鷹在住、西荻の花屋さん慈雨ちゃんと西荻在住、吉祥寺の予備校講師 栄くんカップルのお話。

『ラビット病』でロバートとゆりちゃんがしていたように、肌を寄せ合いラブラブで脳みそとろけてIQの低い会話(栄くんは国語教師なので、時折難しい四文字熟語や引用が入る)を交わす二人は42歳。栄くんの家である古民家の庭を通いながら少しずつ手入れをしていく慈雨ちゃん。ひどい乗り物酔いで自転車で行ける行動範囲より外には出られない栄くん。そんなにお金もないから外食はたまに。でも栄くんの作る年寄りっぽいごはんはおいしそうだし、たまの外食は美味しいところへ行って堪能する。そしてお互いの愛情表現の言葉はチャーミングで美しい。タイトル通り無銭優雅。港区のアラフォーカップルではこうはいくまい。

「いい年して何ふらふらしてるの」「そんなんじゃ、この後どうするの」と世間はいうであろう二人。慈雨ちゃんは両親と共に兄夫婦と二世帯住宅で、ちょっと肩身が狭くもある。だけどこんなカップルが楽しそうに日々を暮らしているって素敵だ。世の中って豊かで捨てたもんじゃないと思う。

表紙も美しい。正直わたしはたっぷりお金があるのが好きだけど(笑)、彼らのように優雅に過ごしたい。西荻窪のジャズバーに行こうかな・・・

86 無銭優雅


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?