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『対岸の彼女』 角田光代

外国のフェミニストな本を続けて読んでいたせいか、図書館でこの本の背表紙に目が留まった。『対岸の彼女』。独身女性と既婚子有女性の話ではなかったか。直木賞受賞だし、ドラマ化もされて、確か有名だったけど、まだ読んでいなかった。彼女たちがいがみ合うような話だったら、しんどいと思っていたのだ。

読んでいてアルファベットの「Y」を思い浮かべる。独身女性で会社を営む葵の過去と、既婚子有女性の小夜子の現在が交互に語られ、最後に組み合わさっていく。「先端が別々でも、根本に同じものがある」、「違うものが共に歩む」そういった要素を感じた。女子高生時代の葵と、ママ友たちに入っていけない小夜子が重なる。そこに女子のグループに自然になじめない自分も重なる。未婚なのでママ友のことはわからないが、女子グループのめんどくささや、中高生の学校以外の世界がない絶望感や閉塞感はよく知っているので、そういう箇所を読むと心がミシミシした。

女子グループのエピソード、働きに出ようとする妻に投げかけられる夫や姑の言葉、痛いところを突かれると意地悪になったりするところ、人生における決意及び転機、といった各所が、とても丁寧でリアルで、読んでいると気持ちが動く。そうこうしているうちに、交互に語られた葵と小夜子のエピソードが出会う。そして根底に流れるテーマ、言い換えると角田さんのメッセージが浮き出てくる。その頃には彼女の世界にすっかり包囲されている。

調べていたら、『対岸の彼女』のスピンオフがWebで読めるという情報が見つかった。第一話はダ・ヴィンチのサイトで読める。ある名前に出会った時、再会の喜びにゾクゾクした。(わたしも気づいていないだけで、あの人の大事な人に会っているのかもしれない。)第二話からはJTのサイトに登録しなきゃならなくて面倒だけど(成人の確認が必要らしい)、ぜひどうぞ。

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スピンオフ 私の灯台【第一話】
https://ddnavi.com/news/349322/a/
※続きはJTのサイト登録が必要

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