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『海の見える理髪店』荻原浩

そういうところ弱いの。せっかく強がってるのにそんなに優しくしないで、みたいな感じで読んだ。いやー職場で連休明けから大変居心地が悪くなっていたんだけど、ポジションが変わりました。席替えして数時間で肩のこわばりが解けていくのがわかって灯りっぱなしだった心身のアラートがひとまず消えた。普通に働けるってなんてありがたいことなんだろう。というわけでサバイブするためにビジネス本を読んだりして左脳モードにになっていたところに、この短編集が入ってきた。

タイトルにもなっている『海の見える理髪店』。バスの停留所からちょっと上がったところにある海の見える理髪店。備え付けの大きな鏡に海が映る。客はその海を眺めながら散髪される。そんな店を営む理容師が語りだす話とは。夫と喧嘩して、赤ちゃんを連れて実家に帰る主人公。携帯電話に旧字体のメールが届く。素直に謝れない夫からのメールだと思いきや・・・、といったサクサク読めるけれど、読んだ後には心が温まったり、しっとりするような話の集まり。

心も体も頭もガチガチで警戒モードの私に、ちょっとずつ、鎧の隙間を突くように染み入るお話たち。読み終えた後は、ちょっと人間らしくなった。ちなみに何でこの本を読んだのかというと、図書館で流し読みした『ダ・ヴィンチ』に掲載されていた集英社文庫の広告がきっかけ。Yes/Noを選んでいくとおすすめ本にたどり着くもので「心が乾いている人はこの本」みたいな感じで提案された。その時「ハァ?宝箱に何も入ってなくたっていいじゃねーか!生首が入ってるとかよりはよ!うっせバーカ」と軽い憤りを覚えたが、よい処方箋だった。今振り返ると大変荒んでいたんですね。

128 海の見える理髪店


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