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鳥インフルエンザで1羽発症すると未発症の1万羽を殺処分する理由

 卵が高い。

 これまで10個入り1パック200〜円だったものが今や260〜円に値上がりしている。
 JAの発表によると、2023年今シーズンの鳥インフルエンザによる殺処分数は1502万羽にものぼり、日本全国の飼養羽数の約1割に達しているという。
 それは卵も値上がりするだろう。


人為的に食糧危機を起こすのやめろ

 という怒りのツイートを見た。
 
 鳥インフルエンザ発症が1羽見つかると、それがたとえ一棟で発生したものであっても、全棟の鶏が殺処分される。
 1羽鳥インフルエンザが確認されると、無差別に残り全ての鶏が殺処分される訳だ。それがたとえ1万羽であろうと、100万羽であろうとだ。

 消費者の憤りも理解できる。

 
 さて、ではどうして、「鳥インフルエンザが見つかると、全ての鶏は殺処分される」のだろうか?

 消費者は価格高騰や卵不足で卵が買えなくなる。
 養鶏家にとっては明日の食い扶持を全て失う事を意味する。

「たかが1羽のインフルエンザで」

 そう思うだろうか。


□6000万〜5億人

 
 もし、鳥インフルエンザが大流行すると、最悪5億人が死亡すると言われている。

『新型コロナウイルス』による世界の死亡者数は現在687万人とされており、感染者数は7.6億人だ。

 コロナによる生活様式の変化や、生き辛さは、現代人全てが多かれ少なかれ理解していると思うが、実は鳥インフルエンザはその比ではない。(とされている)

 死亡者は少なく見積もって6000万人。
 感染者数は30億人。
 人類の38%、「3人に1人は確実に感染する」とされている訳だ。

 WHOからも鳥インフルエンザに関する勧告・ガイドラインが発行されているほど、『ウイルス性感染症』として鳥インフルエンザは警戒されている。

 理由は大きく2つ

①鳥→ヒト ヒト⇔ヒト への感染

②未知のインフルエンザへの進化

 である。


①鳥→ヒト ヒト⇔ヒト への感染

 これまでにも、鳥インフルエンザによる被害は確認されており、

・1997年香港においてH5鳥インフルエンザに18名が感染、6名が死亡(ヒトからヒトへの感染はなし)
・2003年2月、香港においてH5鳥インフルエンザウイルス感染が2名で確認され、うち1名は死亡(その後拡大はなし)
・2003年3-4月オランダではH7鳥インフルエンザウイルス流行の際に、防疫に従事したヒトを中心に数十人のヒトが結膜炎を、十数人インフルエンザ様症状を呈しました。死亡した獣医師1名の肺から鳥インフルエンザウイルスH7N7が分離されており、家族内でのヒトからヒトへの感染が疑われている

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/44/12/44_12_808/_pdf

 世界的に見ると鳥インフルエンザによる死亡者は既に確認されており、ヒト⇔ヒトの感染も疑われている。

 さらに✅鳥インフルエンザの致死率は53%と極めて高い。
 発症から平均9-10日(範囲6~30日)目に進行性の呼吸不全により死亡することが多い。
 
 日本国内ではヒトへの感染例は一度もない。
 しかし、鳥インフルエンザそのものは過去も流行しており、

・H5N1亜型ウイルスによる高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)が、2004年、2007年、2010-2011年に発生
・2004年の発生では3県4農場27.5万羽
・2007年の発生では2県4農場17万羽
・2010-2011年の発生では9県24農場の185万羽の鶏が殺処分
・2023年25道県76件1502万羽殺処分 ←NEW!

 現在起きている鳥インフルエンザが、国内では過去最大規模であることが解る。


②未知のインフルエンザウイルスへの進化

 
『鳥インフルエンザ』と一言に言っても、実は大きく2種類存在する。
『鳥インフルエンザ(低病原性鳥インフルエンザ)』と『高病原性鳥インフルエンザ』である。

『鳥インフルエンザ(低病原性鳥インフルエンザ)』はカモやハクチョウなど多くの野鳥が保有しているウイルスであり、鳥での発症もなく、ヒトへの感染も認められない。

 一方、『高病原性鳥インフルエンザ』は人間が作った“養鶏場”という高密度で家畜を飼育する状態で、急速に感染を繰り返すうち変異して凶暴化した特別なウイルスである。
 アヒルや鶏が発症するケースが多く、アヒルに関してはウイルスを保有していても発症しない(抵抗力が強いため)ことにより、知らないうちにアヒル→ヒトへと感染するケースがある(韓国・中国での症例は食肉用のアヒルによるものが確認されている)。

 そして『高病原性鳥インフルエンザ』発症した鶏とその他すべての鶏が殺処分される理由が「パンデミックによるウイルスの進化」である。

『新型コロナウイルス』の進化速度が著しく速いのは記憶に新しい。

【懸念すべき変異株(VOC/Variant of Concern)】
・β株(ベータ株)…南アフリカで最初に検出された変異株
・γ株(ガンマ株)…ブラジルで最初に検出された変異株
・δ株(デルタ株)…インドで最初に検出された変異株
・ο株(オミクロン株)…南アフリカなどで検出された変異株

【監視下の変異株(VUM/Variants Under Monitoring)】
 ・α株(アルファ株)…イギリスで最初に検出された変異株
・旧κ株(カッパ株)…インドで最初に検出された変異株
・λ株(ラムダ株)…ペルーで最初に検出された変異株
・μ株(ミュー株)…コロンビアで最初に検出された変異株
・AY.4.2…デルタ株から派生。アメリカではデルタプラスとも呼ばれる変異株

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が 2019年12月初旬に, 中国の武漢市で第1例目の感染者が報告されてから約4年。
 たった4年の間に多くの変異種が新たに生まれており、未だに特効薬が無いことは誰もが知る事実だ。

 鳥インフルエンザウイルスは、ヒトへの感染によりウイルス遺伝子の再集合がおこり、新型インフルエンザが発生する可能性がある。
 
 これと同様のことが、『高病原性鳥インフルエンザ』でも起こると考えられている。
 と言うよりも、「鳥インフルエンザがパンデミックを起こすと、変異種があっという間に増殖し、多くの死亡者が出るであろう」と予測されていた事が、実際に新型コロナウイルスで起きた。
 と言うのが正しい。
 
 そして前述した事をもう一度繰り返すが、

✅鳥インフルエンザの致死率は53%と極めて高い

『高病原性鳥インフルエンザ』がパンデミックを起こすと、世界中で30億人が感染し、少なくとも6000万人が死ぬ。

 恐怖心を煽るようで申し訳ないが、事実、コロナウイルスでは687万人が亡くなっている。

 その新型コロナウイルスよりも、致死率が高いのが、鳥インフルエンザという訳だ。


 養鶏場で1羽『高病原性鳥インフルエンザ』が発症したら、1502万羽を殺処分しなくてはいけない理由が解っていただけたと思う。

 養鶏場の方も、農林水産省やJAのお偉いさん方も、国立感染症研究所の研究員らも、好き好んで1502万羽の殺処分を眺めて来た訳じゃない。

 人の命を守るためだ。
 未知のウイルスの発生を未然に防ぐためだ。

 確かにそれは人のエゴだろう。
 いずれは人の胃袋に収まる予定だった何の罪もない鶏たちを、ただ虚しく殺処分し焼却処分するのだから。

 それでも誰かが私たちの安全ために殺処分という虚しく苦しい事をしてくれている。
 というのを忘れてはいけないとおもう。
 批判などなおさらだと思う。


□鳥インフルエンザ(インフルエンザウイルス)の研究は進められている

 
□日本野鳥の会による予防策

□その他予防に関して

Q:ヒトではどのような予防方法がありますか?

A:鳥インフルエンザに対する有効なワクチンは、現在のところありません(研究、開発が行われています)。
本人の万が一の感染を避けるために、また付着したウイルスを他の地域のニワトリに拡げないために、鳥インフルエンザの流行が見られている鶏舎などへの出入りは、用事のない限り避けて下さい。
用事があって鶏舎に出入りするときは、手袋、医療用マスク、ガウン、ゴーグルなどの着用、手洗いの励行などの、基本的な感染予防対策が必要です。
通常の生活の中で、現段階では鳥インフルエンザウイルスに関する特別な予防を行う必要はありません。

□ペットで鳥類を飼育している場合

Q:ペットでニワトリや小鳥を飼っていますが大丈夫ですか?

A:これまでの科学的知見によれば、鳥インフルエンザが鶏やアヒルの他にも、色々な種類のトリに感染することが知られていますが、国内で鳥インフルエンザが発生したために、これまでペットとして家庭などで飼育していたトリが直ちに危険になるということはありません。

トリや動物は、ヒトへの感染の有無は別として、ヒトとは異なるウイルスも、ヒトと共通のウイルスも保有することが知られています。
トリに限らず、動物を飼う場合は、動物に触った後は手を洗うこと、糞尿は速やかに処理して動物のまわりを清潔にすることなどを心がけることが重要です。
また、動物の健康状態に異常があった場合は獣医さんに、飼い主が身体に不調を感じた場合は早めに医療機関で受診することも大切です。


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