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私の仕事・あなたの仕事・誰の仕事でもない仕事

内田樹『邪悪なものの鎮め方』を読んでいます。

キャリア教育については、もし「労働のモチベーション」をほんとうに上げようと望むなら、「自己利益の追求」という動機を強化しても得るところはない、と私は考えている。その話をする。
「仕事」とは、「私の仕事」と「あなたの仕事」のほかに「誰の仕事でもない仕事」というものがある。
そして、「誰の仕事でもない仕事は私の仕事である」という考え方をする人のことを「働くモチベーションがある人」と呼ぶのである。 (P.229)


ビジネスの場においては、「私の仕事」と「あなたの仕事」の隙間に、「誰の仕事でもない仕事」が発生します。
どんなに職種を細かく分けても、どんなにたくさん人がいても、その隙間に何か問題、仕事が生まれるのです。

この「誰の仕事でもない仕事」は、「私の仕事」でもなければ、「同僚や上司の仕事」でもありません。誰も「やれ」と命じられていなくて、誰のジョブ・ディスクリプションにも記載されていない仕事です。


もちろん、「誰の仕事でもない」仕事なのですから、たとえあなたがそれをやらなかったとしても、誰かに責められることはありません。
逆に、あなたが時間や手間をかけてその仕事を片付けたとしても、評価や報酬のアップには繋がらないでしょう。

でも、誰かが片付けなければいけない仕事が、そこにはあるのです。
そしてそんな仕事に限って、放置しておくと膨れ上がって、大きな問題に発展したりするのです。

そういう仕事に気づいたときに、「あ、自分がやってしまおう」とスッと思える人が、働くモチベーションが高い人、ということです。


別に、「よし!今日もガッツリ働くぞ!!」と気合が入っている人や、「お客様のために!!組織のために!!」と闘志を燃やしている人だけが、「モチベーションが高い人」ではありません。

「誰もやらないなら、自分がやってしまおう」と、気負いもせず、嫌がりもせず、スッと手をつけられる人もまた、「働くモチベ―ションが高い人」と言えます。

そこには、自分の評価や報酬に関する損得勘定や、「会社やお客様のために」といった思いはないかもしれません。
それでもそういう人は、「誰の仕事でもないなら、自分がやってしまおう」と思うのです。

おせっかいな人です。
たとえ「やりたい」とも、「やるべき」とも思わなくても、隙間の仕事があったら処理することをルールとして生きている人です。

そこにはモチベーションも何もないように見えますが、もしかしたらこういう人こそ、本当の意味で「働くモチベーションが高い人」と言えるのかもしれません。



「これは自分の仕事ではないから…」、「別にこれをやっても評価は上がらないし…」といったように、自分の利益ばかり考えるのではなく、「誰もやらないなら、自分が片付けてしまおう」と自然に思える、そんな会社員でありたいものです。

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