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単発の小説

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単発の短編小説・ショートショートはこちらにまとめています。
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#創作

隙間からあの日の君が見えた気がした《140字小説:2024年7月分①》

X(旧ツイッター)で書いた140字小説をまとめたものです。 庭で育てているベビーリーフを、今…

月町さおり
1か月前
3

それで穴に落ちて死んだとしても《140字小説:2024年5月分》

 X(旧ツイッター)で書いた140字小説をまとめたものです。 月明かりに照らされての家路。今…

月町さおり
2か月前
9

『鴛鴦の憂鬱』

 ある日、鴛鴦の雄が窓から訪ねてきた。 「番を探しております!」 「ここは人間の相談所で…

月町さおり
4か月前
8

『本の虫』

 気がつくと部屋中に雪が降り積もったかのような光景。しかしそんな風情のあるものではない。…

17

『造られる奇跡』

「今年も、この季節がやってきた」  新茶を片手に、妻が嬉しそうに微笑んだ。妻はいそいそと…

21

『父の告白』

 浩太、今日はお前に伝えなくてはいけないことがある。実は父さんは、お前の本当の父さんじゃ…

27

『ことりの集会』

〇月×日 日曜日  ことりの集会は、金曜日にあるんだそうです。  地区の集まりで、神社で花火をしたときに、知らない男の子が言っていました。  その子は、電線に止まっていた鳥にフンをかけられちゃったらしくて、それからずっと、電線の下を歩くときは、上に鳥がいるかどうか見るんだそうです。  そうしていたら、金曜日の夕方は、電線に、いっぱい鳥がとまっている日があることに気がついたそうです。  その子はそれを『ことりの集会』と言っていました。  わたしは男の子に、それってなに?って

『アイドル引退宣言』

 彼女の人気は爆発的に広がった。  それもそのはず。  彼女は今時のニーズに沿った魅力を…

19

『秘密』

 これは、俺がまだ共学の高校の養護教諭をしていた頃の話だ。  その日、俺はわざわざ手書き…

28

『完璧なる対策』

 感染症の脅威から逃れるため、人類は遂に、バリアーの技術を得ることに成功した。  作動さ…

15

『◎◎1111』

「なぁ、聞いて、俺すごいことに気がついちゃった」 「ポッキーとプリッツの日なのに、ポッキ…

16

『GOTOタイムトラベル』

 不景気対策の一環として、政府が『GOTOタイムトラベル』施策を講じたのは皆様もご存知の通り…

31

『天気雨』

 橙色の光が木々の隙間から差し込む。  俺は通勤路である人気(ひとけ)のない山道を歩いて…

14

『だるまさんがころんだ』

 ノスタルジーという感情がある。  『なんだか懐かしい』という感覚のことだ。  よく耳にする事はあったが、ああいった感情はもう少し大人になって、年をとってから湧くものだと思っていた。  しかし俺がそれを感じたのは高校生の段階だった。  俺の家までの通学路には小さな古い神社がある。  古いとは言っても、きちんと神主はいて、初詣や七五三などを行っている地域に親しまれている神社だ。よく地区の『子ども会』がそこで催されたりもしていた。  小学生の頃はよく友達と学校帰りにそこで遊んで