『◎◎1111』

「なぁ、聞いて、俺すごいことに気がついちゃった」

「ポッキーとプリッツの日なのに、ポッキーゲームする恋人がいないってことですか?」

「そうなんだよなぁ、そんな恋人ほし……いや、違うよ?」

「えっ! 違うんですか?」

「違うよ!? そうじゃなくて。今日さぁ、何の日だと思う?」

「だからポッキーとプリッツの日でしょ」

「うん、そうなんだけど、ポッキーとプリッツの話じゃなくて」

「……トッポ派ってことですか? それとも小枝? フラン? ……いいですか、その話題は危険ですよ、また戦争が勃発します。せっかく、『きのこ・たけのこ第一次世界大戦停戦の日』なのに」

「え、そんな記念日だっけ……?」

「知らなかったんですか。もっと学を積んでください」

「はい」

「よろしい。じゃあ、教えてあげたんで、コンビニでじゃがりこ買ってきて下さい」

「はい……。ん? 待って待って、一度お菓子から離れて!」

「おやつ断ちしろと……? 酷いお人だ」

「そういう意味じゃねぇ! 話聞けよ!」

「どうせくだらない話だと思って」

「酷くない? そうじゃなくてさぁ〜! 11月11日ってなんか特別な感じするじゃん?」

「まぁ、記念日は多いですよね」

「それでだよ? 今年は2020年だよ? 2020年11月11日だよ! なんか特別感ない?」

「いや、別に……」

「えっ、なんで! あるだろ特別感! なんか同じ数字が並んでるしさぁ」

「それなら1111年11月11日の方がすごいでしょ」

「その時代にそんな概念ないんだよ!」

「じゃあ2020年20月20日の方がスペシャル感あるでしょ」

「この人は異世界の人か何かなのかな?」

「それで結局何が言いたいんです? 絶対その話だけじゃないでしょ」

「そう! せっかくの2020年11月11日だよ? 歴史に残ることをしたい、いやするべきなんだ!」

「ちょっとよく分からないです」

「え? わかんないの? ほら、『794(なくよ)うぐいす 平安京』とか、『1192(いいくに)つくろう 鎌倉幕府』とかあるじゃん! 今日に何か起こせばそれが後生に語り継がれたときに覚えやすい! 未来の学生の暗記の助けになるのだ!」

「鎌倉幕府はもう1192年じゃなくて、1185年みたいですけどね」

「うっそだろお前……ああ、もうまた! そこはいいんだよ! 何か歴史に残る事をしたいってこと!」

「はぁ、そうですか」

「そこでまず語呂を考える」

「2020年11月11日は覚えやすいから語呂合わせはいらないって話だったじゃないですか……あと先に語呂を合わせてから事を起こすのもおかしな気が……」

「いいんだよ! “後生が覚えやすい”、がコンセプトなんだから!」

「はいはい……仕方ない、馬鹿な話に付き合ってやるか」

「思ったことなんでも口に出すのやめろ」

(仕方ない、馬鹿な話に付き合ってやるか)

「もう遅いからな」

「におにおいいいい」

「え?! なに急に?! 何かの呪文?」

「いや、あんたが語呂を考えろとかいうから。とりあえずそのままの読み方で言ったんですけど?」

「なんだ、びっくりした。呪い殺されるかと思った」

「僕を何だと思っているんですか……」

「2020……20……0120」

「フリーダイヤル0120-201-111」

「ポキッ! あ〜ポッキーの音〜!」

「今なら特別にプリッツもつけちゃいます」

「え! いいんですかぁ〜?」

「更にトッポも小枝もじゃがりこも付けちゃいます!」

「……でもお高いんでしょう?」

「ふふふ。今ならなんと1111フラン!」

「あ〜円じゃない、高いのか安いのか分からない〜」

「お電話は今すぐ! チャラチャララ〜」

「ランラランララ〜、テレフォンショ……じゃねーよ!」

「ダメですか」

「おかしいだろ!」

「お菓子だけに?」

「うっさい! 全然関係ない話になってる!」

「仕方ないですねぇ。うーん……とりあえず11月11日から考えてみます?」

「いいいい」

「いちいちいちいち」

「ワンワンワンワン」

「ふっ、やっと自分は畜生だという自覚が芽生えましたか……」

「人間ですけど?!」

「いやいや、犬がお似合いで……あっ! ワンダフォー!」

「何?! 何か辛辣なセリフ言いかけなかった? 今更褒めてもダメだからね」

「違いますよ、ワンが4つでワンダフォーですよ。あと僕が先輩を褒めるわけないでしょ」

「ああ、そういうことか…………ええ?」

「あとは2020の方ですか……」

「進めちゃうかー」

「20が重なっているから二重……『二重にワンダフォー』とかどうですか?」

「あ! いいなそれ! ちょっとダサイ気がしなくもないけど……よし、『二重にワンダフォー』にしようー!」

「で?」

「え?」

「『え?』じゃないですよ、何か起こすんでしょ? 歴史に残るような何かを」

「ああ、そうか……」

「忘れてませんでした?」

「わ、わすれてない……」

「本当は?」

「忘れてた」

「よろしい」

「でもなぁ、ワンダフォーな事か……」

「それでひとつ思いついたんですけど、空からポッキーとプリッツをばら撒くっていうのどうですか?」

「『どうですか?』じゃねーよ! どこがワンダフォーな事?! なんでその発想に至ったの?!」

「いや、世の中のポッキーゲームしているようなバカップルに制裁でも加えようかと……」

「お前も気にしてんじゃねーか!」

「とりあえずポッキー20本とプリッツ20本ほど用意して……」

「その本数で効果あるかなぁ?!」

「2人で“一矢”報いてやるんですよ!! 行きますよ! さあ!」

「話の芯が変わってるじゃねーか……」

おしまい。


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