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『完璧なる対策』

 感染症の脅威から逃れるため、人類は遂に、バリアーの技術を得ることに成功した。
 作動させる装置は、自分以外の人間が近づくと発動し、自身の周囲直径1Mを覆うものだった。小型化、大量生産され、人々に配布された。装着は義務化され、装置しない者は『殺人未遂』とし、重い罰を下されることとなった。それほど人々は、この感染症を恐れていたのである。
 かくして、人類は完璧なるソーシャルディスタンス体制をつくりあげることに成功したのであった。

「そんな技術があったのに、なぜ地球人は滅ぶ寸前なのですか?」

 地球外からやってきた生命体が、指で数えられるほどにまで減少した地球人に聞いた。
「感染症以外の病死ですか」
「いえ、その死因数は変化していませんでした」
「ではなぜ」
「……私は話が出来るだけで良い方でしたがね」
 その地球人は言った。

「触れ合いを求める人達は耐えられなかった。自ら命を絶つ程に」

おしまい。


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