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#501 テート美術館展@国立新美術館、いろいろ比較してみた!

国立新美術館で行われているテート美術館展に行ってきました。よく確認せず出かけたのでちょっと期待とずれてましたが、他の美術館の作品といろいろ比較することができたので、メモ。

1、どんな企画展?

国立新美術館で10月2日まで行われている、イギリスの国立美術館テートから「光」をテーマにした名品約120点が展示されている、というものです。
副題として「ターナー、印象派から現代へ」とあります。
10月26日から24年の1月14日まで大阪中之島美術館でも行われるようです。


2、イギリス?光?ターナー?=風景画だ!という勘違い。

私は雑食でなんでも見るのですが、風景画が好きでして、中でも、18世紀〜19世紀前半のイギリスの風景画、特にウィリアム・ターナーやジョン・コンスタブル、そして両者に比べると評価は低いのですがアルフレッド・シスレーの風景画が好きです。
で、本展覧会の広告を見て、テート美術館といえばイギリス、光といえば印象派(シスレーは生涯印象派の人でした)、そしてターナーといえば、風景画だ!という連想で、てっきり18、19世紀イギリスの風景画がメインの内容と勝手に勘違いしておりまして、かねてより行きたいと思っておりましたが、急に時間が空いた17日によく調べもせず突撃したのでした…

でもね、きちんと以下の通り書いてありました…

英国を代表する国立美術館テートから「光」をテーマにした名品約120点が一堂に!
ターナー、コンスタブル、草間彌生、リヒター、ジェームズ・タレル、オラファー・エリアソン……。
時代や地域、ジャンルを超えた「光の作品」の競演にご期待ください。

草間彌生とかリヒターとかって、入ってますし…

3、ターナーとモネの「夕日」。

でも、良かったです。ちょっと(だいぶ)思っていたのと違いましたが…

特に、最近行った他の美術展と比較できるような作品が多かったので、例によって独断と偏見でご紹介します。

まず、テート美術館展のターナーの「夕日」。

ウィリアム・ターナー「湖に沈む夕日」(1840年頃)


次に、アーティゾン美術館のモネの「黄昏」。

クロード・モネ「黄昏 ヴェネツィア」(1908年頃)

(この時のメモは以下です)


いかがでしょう?
印象派といえば1874年に旧態依然のサロンの審査制度に限界を感じた画家たちが開いた第一回グループ展でのモネの「印象、日の出」がスタートとされています。
ターナーの「夕日」はそこから遡ること30年前に描かれているのです。

私がこの頃のイギリス風景画が好きなのは、印象派に先がけ、大気の揺らぎや光のきらめきといった効果に着目した作風を持っていることです。実際、屋外で描くようになっていますし。
しかも、それが、技巧すぎず、ありのままの自然を忠実に描こうとした結果、である点が好きです。

そう考えると、今回のターナーの作品は私がこれまで見た中でもかなり印象派に近く、題名があるからモチーフが分かるというほどです。ちょっと驚いたのでモネと比べてしまいました。


4、同じモチーフを描くモネ

次に、モネのポプラ並木です。

まず、テート美術館展から。

クロード・モネ「エプト川のポプラ並木」(1891年)


次に国立西洋美術館の常設展から(今やってます)。

クロード・モネ「陽を浴びるポプラ並木」(1891年)


いかがでしょう?
モネは気に入ったモチーフを光の変化のもとで繰り返し描くことで知られています。有名な積みわらはこのポプラ並木が描かれた前年からのものです。晩年には睡蓮が有名ですね。

国立西洋美術館も、3連休中の12日に別件で上野近くまで出かけて用事が早く終わったので突然訪れたのですが、テート美術展で同じモチーフに出会って、そのトーンのあまりの違いに驚きました。

確かに時間帯や天候による光の違い、なのでしょうが、全く違う印象ではないでしょうか?

構図もS字に並んでいるところは同じですが、手前のポプラの見える範囲がだいぶ異なります。

ということで、こちらも並べてご紹介してみたくなった作品です。


5、一押し、シスレー。

他にもいろいろあったのですが、長くなるのでこちらで最後に。思い切り個人の趣味ですが、私の一押しシスレーの作品を。

今回はまず、国立西洋美術館から。

アルフレッド・シスレー「ルーヴシエンヌの風景」(1873年)


次に、テート美術館展から。

アルフレッド・シスレー「春の小さな草地」(1880年)


最後にアーティゾン美術館から。

アルフレッド・シスレー「サン=マメス六月の朝」(1884年)


いかがでしょうか?
え?こんなの好きなのかって?
まぁ、そうですね。でもですね、写真と実際とでは結構違います。

元々は、アーティゾン美術館で見たのが最初でとても気になって調べてみると、評論家からは「特徴のない印象派の教科書的な作品」と言われたり、人生的にも、イギリスの裕福な家庭に育ち、フランスに渡り、印象派では絵が売れない時期も経済的に困ることなく過ごしていたら、親が破産して、貧乏暮らしになって、生きている間は大して絵も売れず、と割と悲惨な画家なのです…

でも、実物は印象派?とお感じになるとおり、空気感や光の表現が過剰ではなく自然に感じられ、写真以上に奥行きと空気を含めた立体感を(私は)感じるのです。

あまり光が当たることはないのですが、何かのついでに見ることがあれば、注目していただけると嬉しいです。


6、まとめ

いかがでしたでしょうか?

テート美術館展と他の美術展で見たものを個人的趣味で比較してみました、というメモでした。

展覧会で写真撮影が限定的とはいえOKとなったのは、こうした振り返りをするときにとってもいいなぁ、と今回改めて思いました。

パシャパシャ撮っても、後で見るんかい!とちょっと思っていましたが、とんでもない。これからは気になったら恥ずかしがらずに撮っておこうと思いました。

でもやっぱり、実物が1番、なので、あくまで記録ですが。


最後まで思い切り個人的な趣味全開のメモにお付き合いいただきありがとうございました。
どこかへぇ、と思ってもらえるところがあれば嬉しいです。

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