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小説「中二病の風間くん」

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明日を諦め日々落ち込むアナタに復活の風を巻き起こす……!? 地に落ちた夢に翼を授ける中二病再生コメディ
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【小説】中二病の風間くん第16話 追憶

【小説】中二病の風間くん第16話 追憶

 風間の過去を聞いてからも、内海たちは絶やすことなく何度も病院に足を運んだ。数回にわけられる手術がいつ終わるのか知る由もないが、姿が見られなくても、担当日を決めて何かしらのメッセージや見舞い品を残していった。
 年を越しても音沙汰はなく、風間の席は空いたままだった。対して、内海の机は大量の写真で埋め尽くされていて、加護が物申す。
「……寂しいからって犯罪に手ぇ出すなよ?」
「誰がストーカーだ!」

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【小説】中二病の風間くん第15話 風向き

【小説】中二病の風間くん第15話 風向き

 冬休み初日ーー。
 内海たちは成上に連れられ、各々見舞い品を手に風間の元へ向かう。成上が足を止めたのは大学病院だった。
「彼は本当に戦っていたのだよ。自分を狙うものと常にね」
 躊躇なく中へ入っていく成上に、一同は続く。
「彼はここを魔界と呼び、病室をケルベロスと称した。彼の使っていた中二病特有の単語……そのほとんどは何かしらの隠語だ」
「あんた、いつから気づいて……」
「彼がハヤブサと名乗った

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【小説】中二病の風間くん第14話 失踪

【小説】中二病の風間くん第14話 失踪

 文化祭から数日が経過した。担任は戻り、加護もしっかり授業を受け、礼央の下僕として威張っていた二人組が大人しくなったことで、宮下の顔も晴れやかになった。だが、内海には物足りない気分が拭えなかった。
 風間が風邪で欠席しているのだ。元々虚弱体質ではあるが、演劇とバスケによる疲労が祟ったのだという。
 あのやかましい中二病が不在なだけで、こんなにも寂しくなるのかと、内海は実感していた。自席で弁当を取り

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【小説】中二病の風間くん第13話 和解の儀

【小説】中二病の風間くん第13話 和解の儀

 幕が上がり、宮下のナレーションが体育館に響く。
『ブルータス。それはあまりにも知られた名だが、これからあなたが目にするのは高校生の彼。原作とは異なる世界線で描かれるこの物語は、果たして悲劇か。喜劇かーー』
 賑やかな教室で礼央ブルータスと風間シーザーが語らう。
「ポーシャって男装してるのになんであんなに可愛いのかな。罪深いね」
「そ、そうかァ?」
「そうだよ! 最近ますます体つきがエロくなってき

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【小説】中二病の風間くん第12話 この瞬間だけは

【小説】中二病の風間くん第12話 この瞬間だけは

 登校前、宮下は墓地に立ち寄っていた。曇天の下、姉の名が刻まれた墓前で手を合わせ、目を閉じる。管をつけられ、弱々しく横たわる姿は、十年経った今でも脳裏に焼きついている。
 細い腕を伸ばし、頭を撫でてくれた過去の温もりに浸っていると、物音がした。視線を向けると、風間が別の墓前で花を生けている。声をかけようとしたが、憂いに染まった瞳に思わず言葉を飲み込んだ。
 宮下はそのまま登校し、礼央の姿を見つけて

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【小説】中二病の風間くん第11話 仕合せ

【小説】中二病の風間くん第11話 仕合せ

 文化祭に備え、朝礼前にクラスの垣根を越えた演劇メンバーが集結した。成上が宮下脚本のストーリーに目を通す。
「ふむ。物語の本筋は学生の恋愛模様といったところだが、シェイクスピアの『ジュリアスシーザー』から名を借りているのか。敵対するシーザーとブルータスが幼馴染み……それもヒロインは男装少女ときた。なかなか興味深いね」
 成上は稽古中の演者たちに視線を向ける。
「どうして男装してるの? 可愛いのにも

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【小説】中二病の風間くん第10話 もしもこの手を引いてくれるなら

【小説】中二病の風間くん第10話 もしもこの手を引いてくれるなら

 服装に困る季節がやってきた。空と人の攻防戦が繰り広げられる中、風間は浮き足立っていた。
「三組と合同というだけあって、なかなか豪華なシナリオだ。腕の見せ所だね。漆黒のマーメイド」
「なんでよりによってヒロイン役なの……」
「僕という主人公にふさわしいじゃないか」
「人前で演技できないの知ってるでしょ? 鬼かあんたは」
「いいや悪魔だ」
 文化祭が迫っている。ポスターがあちこちに貼られ、各教室で実

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【小説】中二病の風間くん第9話 ペネトレイト

【小説】中二病の風間くん第9話 ペネトレイト

 体育祭当日ーー。
 夏が慌てて引き返してきた。太陽がじりじりと照りつける。赤いハチマキを巻いたばかりの風間は、ラジオ体操で息を切らしていた。
「開始前にバテてるじゃん」内海がつっこむ。
「食パン三枚の威力はこんなものではない……所詮これは準備運動……本気を出すまでもない」
 一転、競技になると急に元気を取り戻した。
 成上率いる白組一騎を、風間の騎馬が迎え撃つ。しばらく取っ組み合いを繰り広げ、風

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【小説】中二病の風間くん第8話 半生

【小説】中二病の風間くん第8話 半生

 それから一週間、加護はみっちり丁寧にコーチングした。風間は徐々に走れる距離を伸ばしている。加護はその必死な姿に、世間の圧に抗っていた頃の自分を重ねた。
 頑張った先に何があるというのか。抗った先に望んだものがあるとは限らない。待ち受けているのが理不尽な結果だったとしても、お前は納得できるのか。
 時折、広場のコートでボールを放る風間を見かけるようになった。放ってはゴールに阻まれて拾いにいく。初心

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【小説】中二病の風間くん第7話 夢

【小説】中二病の風間くん第7話 夢

 今でも鮮明に覚えている。四歳の時に聞いたあの大歓声を。国を背負った父が、大きな会場で得点を決めた瞬間を。現役を引退した父がかけてくれた金メダルは、年々重みを増していく。
『お父さんのプレーを彷彿とさせる活躍でしたね!』
『オリンピックで金メダルを手にする加護くん、見たいですね!』
 オレは気づいてしまった。誰もが二世の活躍を望んでいると。オレの積み上げてきた努力は、父の名と天才という二文字にかき

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【小説】中二病の風間くん第6話 相棒

【小説】中二病の風間くん第6話 相棒

 あれから風間は、加護を探しては話しかけるタイミングを見計らい、後をつけた。やらかさないように内海も同行し、観察する。不良らしく、売られたケンカは全て買っていた。その反面、赤信号をノロノロと渡る老人を担いだり、商店街の強盗を制圧する部分も見られた。
 近づきすぎると気配を悟られケンカ腰になるため、一定の距離を保ちながら虎視眈々とチャンスを待った。
 加護はコンビニの駐車場で、足早に去ろうとする少年

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【小説】中二病の風間くん第5話 虚

【小説】中二病の風間くん第5話 虚

 セミが鳴かなくなった頃、内海は一人で登校していた。風間が朝練のため先に行くと連絡してきたからである。
『あんた部活入ってたっけ?』
 そう送ったメッセージに反応はない。たどり着いた教室には鞄だけが鎮座している。探し回っていると、聞き覚えのある声がして演劇部と書かれた扉を開けた。そこには、眼帯の代わりに眼鏡をかけ、涙目で赤面している風間が椅子から転げ落ちていた。
 お前は誰だ。内海は内心叫ぶ。
 

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【小説】中二病の風間くん第4話 落伍者の集会

【小説】中二病の風間くん第4話 落伍者の集会

 転入から一週間が経ち、風間は内海と登校するのが日常になっていた。たわいもない話をしていると、生徒会員が門の前に並び、挨拶を交わしているのが見えた。
「おはよう諸君、くだらないことで盛り上がるのは結構だが、前を見て歩きたまえ。また骨折したくなければね」
 プライベートに土足で踏み込む会長が視界に入り、内海は風間の腕を引く。次は何を暴露されるかわからない。見つかる前に通り抜けようと足を早める。
「何

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【小説】中二病の風間くん第3話 雷鳴、轟く

【小説】中二病の風間くん第3話 雷鳴、轟く

「六十四ページから風間くん、音読をお願いします」
 担任の指名に風間は席を立ち、クラスメイトに照明を消してくれと頼んだ。先生の注意が飛ぶ前に口を開く。
「ワルプルギスの夜、サタンが降臨した。吹き荒れる暴風はサタンの怒りを代弁するかのようにーー」
 風間の手元が光りだす。風間が読んでいたのは教科書ではなく、魔法陣の書かれた本だった。
「風間くん、教科書を読んでください」
「これは僕専用に作った人生の

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