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【読書メモ】外国語学習の科学: 第二言語習得論とは何か(白井 恭弘)【#99】

TOEICの勉強しているのですが、リスニングが全く向上しません。どんなに勉強していても少しも上達している実感がわきません。実感と同様に、点数もほとんど変わりません。

新型コロナでリモートワークになって、前半はひたすら哲学について勉強しようと、入門書や哲学書を読んでいました。後半になって、リモートで学会などへの参加が増えて、海外の学会も割と簡単に参加できるようになったのですが、やっぱり英語が分からない。スライドに書いてくれてあれば読めるのですが、何を言っているのかさっぱり分からない。聞き取れた単語を繋ぎ合わせてなんとなく想像するしかできない。というような状況が、大学を卒業した時からずっと続いていたので、もう一度一生懸命取り組んでみるか・・・という経緯で始めました。

最初の頃はTOEICって科学論文と全然違うし、とにかく僕は全然聞き取れないので、中学生くらいのところから始めるか。という風にスタートして、途中から、やっぱTOEICも受けてみるかとなり、2023年はひたすらTOEICに特化して勉強していました。

特化してと言っても、出社も始まっているし、新型コロナも5類になるし、仕事の合間に勉強する程度なので進歩が遅いのも仕方ないな・・・となっていたのですが、もう半年も点数が停滞していて動かない。落ちもしないのですが、上がりもしない。テストを受けても、最初のころと変わらず、何言ってるかいまいち分らん・・・という状態で、なんか止まってしまっています。教材を変えたり、勉強の仕方を変えたり、色々しているのに点数どころか、自分の実感も変化しない。

ということで、この本を紹介されたので読んでみました。

まず、外国語習得には適性があるということです。4つの適性を測定して判断するそうなのですが
1. 音に対する敏感さ
2. 文法に対する敏感さ
3. 意味と言語形式との関連パターンを見つけ出す能力
4. 丸暗記する能力
ということで、アメリカでは外国語学習障害に認められると大学での第二外国語の単位が免除されるそうです。

この1が僕に当てはまってそうです。よく似た音は聞き取れないし、リンキングやリダクションとか、そういうところを聞くトレーニングを散々しているのに、その部分が全く聞き取れるようになりません。なんというか、聞き取れないというより、音の認識できる機能が欠落しているように思います。これもASDの影響なのかしら。

外国語学習に成功するためには上記の4つの適性を整理して、3つの要因にまとめられています。当たり前のことですが
1. 音声認識能力
2. 言語分析能力
3. 記憶
だそうです。当たり前です。

この中で、例外的成功者と呼ばれる、短期間で高度な外国語を習得する人や年を取ってから(成人してから)ネイティブのような言語力を身に付ける人に共通しているのは高い記憶力だそうです。つまり、片っ端から単語や例文や文法を記憶することが出来れば、ネイティブ並みの言語力に持って行けるということです。だからといって、何でもかんでも覚えようとしてもダメです。なぜなら、僕らは例外的に成功するほどの記憶力が無いからです。ごくごく一般的な記憶力では追いつきませんので、全部覚える系の勉強はほどほどにしてください。

第5章外国語を身に付けるためにというところで、「オーディオリンガル教授法」というのが紹介されています。第二次世界大戦の頃に作られた方法だそうです。日本では「オーラル・アプローチ」という名前で「パターン・プラクティス」という肯定文を疑問文に変えさせるなどの文の変換を次々にさせて、例文やダイアローグを暗記させるというテクニックを使った方法です。まさに「英語のハノン」の方法です。一時期にネットで、この本は良いという話をよく聞いたのですが、すごい古い教授法を掘り起こした感じだったのですね。当時は、結局オーディオリンガル教授法で教えても必ずしも外国語が使えるようにはならないということが分かってきて廃れていったそうです。確かに、最近は「英語のハノン」はすごいという話を聞かなくなったので、一定数の人が試して、ブームが去ったのかなと思います。こういう栄枯盛衰というか、周期的なブームはあるんだろうと思います。

もう一つ興味深い点は、アウトプットの重要性を説く人たちが一定数います。TOEIC界隈にも、リスニングとリーディングの試験だけどアウトプットの勉強もするべきだという人がいます。しかし、多くの研究が行われていますが、アウトプットそのものが言語能力の向上につながるという結果はほとんど出ていないようです。アウトプットそのものは、自分の既に知っている知識を使って何かをするということにすぎず、新しい言語材料、言語知識の習得には役に立たないという当たり前の事実が見落とされていると書かれていました。

ただ、インプットだけというのも効率は良くありません。アウトプットの必要性が無ければインプットの習得が起こらないという仮説もあるからです。アウトプットすることがアウトプットの必要性を高めます。アウトプットには、既に持っている知識の自動化を進める効果があるようです。十分なインプットなしにアウトプットばかりに重点を置いても言語習得は進みませんが、知識が十分な場合にアウトプットの効果が最大化されるので、インプット優位で両方が必要ということです。個人的には、社会人で勉強時間があまりとれないような場合は、限られたリソース(時間、体力、集中力など)をまずは最大限インプットに回した方が良いように思います。

この本で、僕のような外国語学習者に重要なのは第6章だけです。科学的なバックグラウンドに基づいて、効果的な外国語学習法がまとめられています。

まず、分野をしぼってインプットすることが重要です。自分が興味がある、必要な分野(医学やビジネス、スポーツ、音楽など)について徹底的に読んだり聞いたりすることです。動機付けも高まるので、勉強が長続きしやすくなります。僕のようにTOEICを受けるなら、英検の勉強をするのではなくて、TOEICの勉強をしましょうということです。

リスニングは80パーセント以上分かる教材を聞く方が効果があります。インプットを理解することがカギなので、分からないものを聞いても効果が低くなります。同じものを何度も聞くのも言語習得を促進します。これは、1回では聞き取れないのですが、スクリプトを見て何度か聞けば少しずつは聞き取れるようになるので、続けてみたいと思います。僕はこの音声認識能力が人よりかなり劣っているように思うので、ここにどれだけのリソースを割くかというのは悩ましいです。

外国語「を」勉強するのではなく、外国語「で」勉強するレベルまでなるべく早く到達することも重要です。例えば、まずニュースなどを日本語で聞いてから、外国語で聞くという方法も有効です。英語力という点では重要だと思いますが、社会人だと時間が限られているので、まずはTOEICの勉強だけで良いかなと思いました。まだニュースを英語で見るだけのレベルに達していません。

例文暗記に関しては、第二言語のデータベースを増やして、自然な表現を身に付けるために、よく使う表現や例文、ダイアローグなどを暗記することは効果的です。単文よりも、ダイアローグの方が効率がよさそうです。これは問題集を解きながらちょこちょこ覚えているので、続けていきたいと思います。次々に忘れていくので、あまり神経質にならないのも重要かと感じています。

アウトプットは、それ自体には自動化を進める効果しかなく、外国語習得効果が少ないのですが、インプットの効果を高めるという最高の効果があります。なので、毎日少しずつでもやるべきだと書かれています。例えば、日記をつける、独り言を言う、仲間と話す、学校に通う、英会話喫茶などに通う、チャットをする、インプットした後にその内容について外国語でコメントする、などです。そうすることでインプットの処理レベルが高まります。ただし、正確さと流暢さのバランスをとるようにしないと、ブロークンな外国語が定着してしまう危険性があります。

発音に関しては、大人の学習者の場合、完璧な発音を身に付けるのはほぼ無理だということを認識しておくべきですが、だからといって通じれば良いというように目標を下げると、それさえ達成できなくなるので目標は高く努力するべきです。模倣練習により未知の音をまねる能力が高まる可能性があるので、リピーティングやシャドウイングは効果があると考えられます。聞き取りは一向に向上しませんが、オーバーラッピングをしています。シャドウイングは負荷が高すぎて嫌になっちゃうので。発音は向上しているのだろうか・・・

一番重要なのは動機付けを高めることです。相関関係か因果関係か分かっていませんが、動機付けが高い人ほど外国語の習得レベルも高くなります。動機付けが高いから目的の外国語を習得できるのか、習得できる過程でその言語(文化などの背景)に興味が出るのかは、ハッキリしていません。ですが、動機付けが低い人でその言語が習得できた人がいないのであれば、高めるに越したことはありません。少なくとも動機付けが低い人が習得に失敗するということは、その言語自体に興味が無いということなので確実です。

最後に、色々まとめて来ましたが、優れた学習者の特質は「学習ストラテジーを必要に応じて柔軟に使う」ことができるということです。それぞれの人の適性があるので、それにマッチングした学習方法が重要です。無理に変えても効果は少ないし、長続きしません。つまり、その都度その都度、自分のレベルを見ながら勉強法を見直し続けることが重要そうです。

結局、僕のリスニング不得意を解決する方法は見つかりませんでしたが、変にリスニングにこだわるよりも、TOEIC分野の単語をたくさんインプットしながら、文章を読むことに力を入れて行こうかなと思えました。アウトプットも苦手なのですが、半分アウトプットのようなオーバーラッピングやシャドウイングを続けていきたいと思います。とりあえずLは置いておいて、Rの495満点を目指したいです。

おわり


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