見出し画像

#009 お客様を「怒らせない」ということ

お客様にとっては同じ結果でも、言葉の選び方や対応の方法ひとつで反応が全然変わってくるんですよね

長年の経験で様々なお客様と接していると自然と身に付いているスキルがあるんですが、それがお客様にとっては同じ結果の対応でも「お客様を怒らせない」ということ。

今回の短期の仕事でもそういった点が何度も役に立ったのですが、業務の内容上具体的な内容に触れられないので、前回の投稿と同様に架空の「秋のキノコの選別場」の仕事で例えてみたいと思います。
(前回の投稿は下のリンクからご覧ください)

(その1)お客様の理解度のレベルに沿ってご案内や説明を変える

たとえば選別場に収穫したキノコを持ち込んでくるお客様を考えてみたいと思います。
何人もの方が次から次に来られたとしても、全てのお客様が一律同じ状況ではないですよね?

毎年シーズンになるとキノコ採りに専念して毎日のように大量に持ち込まれる人もいれば、山登りのついでに採ったキノコを少しだけ小遣い稼ぎに持ち込まれる方もいるでしょうし、山で採れたキノコが売れると聞いて今年初めて持ち込んでみたという方もいるでしょう。

そういう認識や理解度の違う相手に、持ち込みの方法とか買い取りのシステムとかを説明する場合、対応を一律のマニュアル化するのは困難だとか普通はわかりそうですよね?
でも実際の業務では起きちゃうんですよ…これが。(^^;

たとえばファストフードのお客みたいに簡単で同じ対応ではないお客様なのに、マニュアル通りに一律の対応を求めたせいで、毎日のように来られる方にわかりきったことを事細かに説明するから時間がかかったり、逆に初めてで全くわからない方なのに形だけの説明になって相手が理解できないまま進んでいて、後からまた確認とか作業のやり直しが必要になったりで二度手間になることとか、普通に起きるんですね。

こういう時は相手の理解度を探りながら説明して、良くわかっている方なら要点だけに絞ったり逆にわからない点だけを相手から質問していただく。
もし相手が理解できてなさそうなら、その点を確認して詳しくわかりやすくご説明すればお互いに無駄な手間や時間を割くこともなく効率的に対応できるんです。

(その2)耳から入る言葉や単語はわかりやすい言葉に置き換える

たとえばキノコの選別場では受付に「菌糸類鑑別依頼書兼売買票(※)」っていう書類と、本人確認のために身分証明書を提出する必要があるとします。
ただしそこにいるのはキノコを買ってもらうために持ち込んでる人なので、基本的にこの書類は全員が持っているはずなのです。
※説明のための架空の様式です

すると受け付ける側のスタッフは自分達が普段使っているから、口頭でも「“キンシルイカンベツイライショケンバイバイヒョウ”を出してください!」とか、お役所とかだと「“ヨウシキ(様式)”はありますか?」なんて平気で言っちゃうんです。

でもこの質問を受ける相手にとっては書類の正式名称とか知らなかったり、知っていたとしてもそれが目ではなく耳から言葉で入ってくると全然結びつかなかったりするんですね。

なので、ここを相手の立場から「買い取りの書類はありますか?」なんて言い換えてあげるだけで圧倒的に伝わりやすくなるんです。
両手の指でA4サイズくらいの四角を作ってジェスチャーを添えてあげれば、離れてたり騒音とかご年配の方で聴こえにくい場合も大声で言わなくても伝わります。

身分証明書も「お名前を確認できるもの」って言い換えればソフトに伝わるので、後でクレームの火種になっちゃったりするお客様の苛立ちとかも先に消しておけるんです。(^_^)

こういう事が大切な“気くばり”だし、結局は自分の手間が減って楽したりクレームとかで嫌な思いをせずに済むんですよね。

(その3)否定詞のような“カドのある単語”は使わない

たとえば何が必要かわからなかったから書類と免許証に、預金通帳とかマイナンバーカードまで片っ端から持ってこられていたとします。
そこで良く言ってしまうのが「それは必要ありません」とか「不要です」みたいな説明。

これも「免許証をお持ちですので結構ですよ」とか「出されなくても大丈夫です」みたいに言い換えてあげれば、圧倒的にソフトで当たりも柔らかいですよね。

そこに「大事なものだから今のうちにお財布に戻しましょうね」なんて伝えておけば、自分で落としたのに後から「あそこで見せて以来返してもらってない」なんて言われたりしないための予防策にもなります。

これはお客様相手なのに、テプラや貼り紙とかで「○○禁止」とか「○○お断り」なんて否定詞やカドのある単語をつかってベタベタ注意文を貼っちゃって、すぐに“注文の多い落ち着かない場所”を作っちゃうようなお店とかにも考えて欲しい事です…。(^^;

あるホテルの駐車場のゲート。コレも「⛔️進入禁止」ではなく「⛔️出口専用」ならカドのある否定詞を使わなくても同じ意図が伝わりますよね?
こちらは別のホテルの駐車場で見つけて感心した、否定詞を一切使っていないのに「宿泊者駐車禁止」がちゃんとわかる案内板

(その4)挨拶とお礼の言葉をかけること

私は自分が担当するお客様をお呼びした際に、名前までは言いませんが「よろしくお願いいたします」と一言挨拶をしていました。
長時間待っていただいていたような場合は「お待たせいたしました」のお詫びも添えて。

ちなみにコレは、生身の人間でなくても銀行の窓口とかにある番号呼出機だって気を遣うようになってるんですよ。(発券後の時間が一定時間を越えると、アナウンスが「お待たせしました」から「大変お待たせいたしました」に変わります。)

ただ…当たり前の事のようなんですが、この挨拶がちゃんとできない人って多いんですよね。
そしてそういうスタッフに限って何度もクレームを受けることに。(^^;
でもこれって運が悪いとかじゃなくって、結局はその人の対応がお客様の感情とかの引き金を引いちゃってるだけなんです。

あとさっきの「菌糸類鑑別依頼書」みたいな書類も、事前に記入して持ってきていただいた場合は「ご記入ありがとうございます」みたいなお礼を添えればいいんです。

時々未記入の書類を持ってきた人に、空欄をわざわざ指差して「ココの記入がないので書いて下さい!」なんて言っちゃうスタッフもいたりしたんですが、相手は事前に書いてくることを知らなくて当然だし、書いて持って行かないといけないのを知っていても記入方法を間違えたら困るから、窓口で確認して書くつもりでそのまま持ってきてる事もあるんです。
もしここで事前に書いてこなかったのを責められているように感じて気分を害されてしまったら、後々クレームとかの火種になったりして結局は自分が嫌な目にあう事になるんですけどね…。

(その5)向かいあって押し問答するとケンカになるが、同じ向きで同情しあえば仲間になれる

コレは実は自分が一番大事にしていたお客様との立ち位置です。
以前の職場でとある“お断り”をする際に、他のスタッフは何度も長時間のクレームとか怒鳴られたりもしているのに、実は自分は一度も経験した事がないんですね。(^_^)

たとえばお客様が持ち込まれたキノコが選別の基準を満たしていなくて買い取りできなかったとします。
タダでいいと言われても引き取る事はできませんし、ゴミにしてくれと言われてもこちらの負担で捨てる訳にはいきません…。

ここで普通だとやりがちなのが、「買い取って欲しい」と言われたお客様に「買い取れません!」と押し返し、「タダでもいいから!」と言われると「タダでも引き取れません!」と返すパターン。

お互いが向き合った立場で押しては押し返す…をひたすら交互に繰り返しちゃうんですね。

当然1回目の押しが通用しなかった相手なので、お客様も2回目はさらに強く押してきます。
こちらも拒否するためにもっと強く押し返す事になるので、押し合いを繰り返すうちにエスカレートして最後はケンカ(クレーム)になっちゃうんですね。(^^;

そこを自分の場合は「本当は買い取りさせていただきたいんですが…」という雰囲気を漂わせつつお断りして、理由とかにも触れながら「困惑した立場」に身を置くんです。
この時のお客様は「買い取ってもらえず困っている人」なのですが、こちらも「買い取ってあげられず困っている人」に徹してみる。

そうするといつの間にか二人とも「困っている人」の立場になってて、気持ちのベクトルも横並びで同じ方向を向いている。
なので向かいあって押し合う事ができずに、結局は“お互い大変ですね”って同情しあうような形で終わることが多いんです。(^_^)

多分この姿勢が身に付いたのは、学生時代のスーパーでのアルバイト経験じゃないかなと。
特売の卵が「お一人様1パック限り」なのに、何パックも持ってきたり何度も並ぶお客様がいるんですよ。

そこを「1パックしか売りません!」とか「売ってはいけない事になってます!」みたいな姿勢で対応すると、「いつも沢山買ってやってるのに!」とか、車の中にいるというお年寄りとか家にいる家族やお腹の子供の頭数まで持ち出される事も。(笑)

ここを「(私としては)売ってあげたいところなんですが…」みたいな雰囲気を出しつつ、「すいません2パック目から(レジの機械が)普通の値段になっちゃうんですが…どうされますか?」って伝えると素直に応じてもらえてました。(笑)

物は言いようというか心理戦。
こういう事ってお客様という人間相手だからこそ大切なんだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?