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単行本未収録の原稿たち

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#マンガ

『青鬼 元始編』ボツ原稿05

『青鬼 元始編』ボツ原稿05

第5話 せんけつ (5)直樹「……ねえ、ひろし君」

ひろし「はい?」

直樹「昨日の夜、公園にいたんだよね?」

ひろし〈金庫のほうを見つめたまま〉「はい。あそこは虫の宝庫ですから」

直樹「虫以外になにか見かけたものはなかった?」

ひろし「いいえ。とくになにも」

直樹「本当に?」

ひろし「そういえば、地面に魔法陣のようなものが描かれていましたっけ」

 振り返るひろし。

ひろし「どうし

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『青鬼 元始編』ボツ原稿04

『青鬼 元始編』ボツ原稿04

第5話 せんけつ (4)▼1階廊下

直樹「どこにトイレがあるかわかっているのかい?」

ほのか〈立ち止まり、直樹のほうを振り返って〉「あれは嘘です。お兄さまと2人でお話がしたくて」

直樹「え?」

ほのか「どうして、メガネのお兄さまを傷つけようとしたのですか?」

直樹「それは……」

ほのか「なにがあったのか教えてください」

 しばらく無言のまま見つめあう2人。ため息を吐き、直樹が沈黙を破

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『青鬼 元始編』ボツ原稿03

『青鬼 元始編』ボツ原稿03

第5話 せんけつ (3)ひろし〈天井を指差し〉「直樹君。あそこを見てください」

 天井の一部にぽっかりと穴が空いている。

直樹「……穴?」

ひろし「上の部屋と繋がっています。ベッドを動かしたら見つかりました。まるで忍者屋敷みたいですよね。なぜ、こんな造りになっているのか、ひじょうに興味があります」

直樹「…………」

ひろし「この部屋にしてもそうです。中央に置いてあるこのピアノですが……」

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『青鬼 元始編』ボツ原稿02

『青鬼 元始編』ボツ原稿02

第5話 せんけつ (2)たけし「直樹。おまえのせいだぞ。おまえが急に現れたりするから。……いてえ。いてえよ。鼻の骨にヒビが入っちまったかも」

 たけしの言葉に、イラつく直樹。

直樹(……たかが転んだくらいで大げさな。僕は卓郎にもっとひどい仕打ちを受けているんだぞ。それをおまえはただ笑って見ているだけだろう?)

 小刻みに体を震わす直樹を、心配そうに見上げるほのか。

ほのか「お兄さま……大丈

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『青鬼 元始編』原稿20

『青鬼 元始編』原稿20

第5話 せんけつ(5)直樹「だけど、腕を振り上げたどうかまではわからないはずだ」

ひろし「左足を後方に動かした痕が、床に残っていました。このことから、君が右腕を大きく前方に動かしたのではないかと推測したまで。野球のボールや、あるいはダーツを投げるときのことを想像してみればわかると思いますが、人は片方の腕を前方に動かしたとき、逆方向の脚が反射的に後方へと動くものなのです。これは連合反応と呼ばれる誰

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『青鬼 元始編』原稿19

『青鬼 元始編』原稿19

第5話 せんけつ(4)直樹(血……)

 回想。校舎裏。卓郎に腹を殴られ、その場に倒れこむ直樹。すりむいた膝から流れ落ちる血。

直樹(血……血……血……)

 回想。青鬼に襲われるほのかの姉。あたりに飛び散る鮮血。

ひろし「ダメです。このドアは鍵がかかっていますね」

 振り返るひろし。直樹は慌てて右手を引っ込める。

ひろし「…………」

 直樹の上着と彼の左足を見つめるひろし。直樹の左足の

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『青鬼 元始編』原稿18

『青鬼 元始編』原稿18

第5話 せんけつ(3)たけし「チクショー。なんでオレがこんな目に……」

 たけしの鼻血はなかなか止まらず、ぽたぽたと床に血がこぼれ落ちる。

直樹(血……イヤだ。これ以上、血なんて見たくない。誰も犠牲にしたくないよ。だから……僕にかかった呪いを解くために、ひろし君を殺さなくては)

心の声(そうだ。殺せ!)

 ひろしの背中を睨みつける直樹。

直樹(今はダメだ。たけしがいる)

ほのか「お兄さ

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『青鬼 元始編』原稿17

『青鬼 元始編』原稿17

第5話 せんけつ(2)▼1階物置

 薄暗い物置のような空間。使われなくなった椅子や家具が部屋の隅に置いてある。床には大量の埃。天井には蜘蛛の巣。奥にはもうひとつドアがある。

ひろし〈部屋の中を覗き込みながら〉「物置でしょうか? ほかの部屋と違って、ここはずいぶんと埃っぽいですね」

ほのか〈鼻を押さえ〉「……なんだか変なにおいがします」

ひろし「この部屋の奥からにおっているようですね。調べて

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『青鬼 元始編』原稿16

『青鬼 元始編』原稿16

第5話 せんけつ(1)▼直樹回想

 職員室。教師と向かい合う直樹。

教師「その腕の傷はどうした? 誰かにいじめられているんじゃないのか?」

直樹「……いいえ。ちょっと転んだだけです」

教師「そうか。それならいいんだが」

直樹「話はそれだけですか? では、失礼します」

 立ち上がり、職員室を出る。

直樹〈独白〉[本当のことを話したところで、どうせ先生はなにもしてくれない]

 教室に戻

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『青鬼 元始編』原稿15

『青鬼 元始編』原稿15

第4話 にげみち(5)▼2階廊下

 ひとつひとつドアを調べていくひろし。その後ろを怯えた様子でついていくたけし。

ひろし「このドアもロックされていますね」

たけし「チクショー、卓郎め。オレ一人を置いてどこへ逃げやがったんだよ」(卓郎がいないときは呼び捨てで)

ひろし(ドアノブを握り)「おや。どうやら、ここは開いているようですね」

たけし「おい、大丈夫か? またあの化け物が出てくるんじゃな

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『青鬼 元始編』原稿14

『青鬼 元始編』原稿14

第4話 にげみち(4)直樹(印刷がかすれていてはっきりとはわからないけど、僕が読んだ黒魔術の本に載っていた魔法陣とよく似ている)

ほのか「ここには、メサイア様に似せた人形を使って願いを叶える方法が記されています。ただし、それは本物のメサイア様ではありませんから、よくないものを招き寄せてしまうこともあるそうです。……あ、もしかしたらこの人形って……」

 不安そうに直樹を見上げるほのか。

直樹「

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『青鬼 元始編』原稿13

『青鬼 元始編』原稿13

第4話 にげみち(3) 開きっ放しだったドアが突然閉じる。その音に怯え、直樹にしがみつくほのか。

直樹「大丈夫だよ。風でドアが閉まっただけだ。……でも、またいつあの怪物が襲ってくるかもわからない。ほのかちゃんは今のうちに外へ逃げるんだ」

ほのか「……外?」

直樹「屋敷の外。大丈夫。玄関の扉の鍵なら僕が持っているから」

 ポケットを探る直樹。鍵を取り出そうとしたとき、一緒にポケットに入れてい

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『青鬼 元始編』原稿12

『青鬼 元始編』原稿12

第4話 にげみち(2)▼書庫

 たくさんの書棚が整然と並んでいる(原作の図書室をイメージ)。書棚の横を通り過ぎ、部屋の奥へと移動。乱暴にドアの開く音が背後から聞こえる。

ほのか「書棚の影に隠れて!」

 青鬼が室内へ入ってくる。

ほのか(小声で)「この部屋には隠れる場所がたくさんありますから、相手の動きに合わせて移動すれば、絶対に見つからないと思います」

 息をひそめ、書棚に背中を押しつけ

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『青鬼 元始編』原稿11

『青鬼 元始編』原稿11

第4話 にげみち(1)▼子供部屋

 首のない死体が床に横たわる。勢いよく噴き出す血しぶき。

直樹「あ……ああ……」

 尻餅をついたまま、後ずさりする直樹。

直樹「僕のせいだ……死ななくちゃいけないのは、本当は僕だったのに……」

 青鬼は口の中のものを一気に呑み込むと、直樹のほうに顔を向け、ゆっくりと近づいてくる。ただ震えるばかりで、動くことのできない直樹。

直樹(卓郎を呪い殺そうなんて

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