『青鬼 元始編』ボツ原稿04
第5話 せんけつ (4)
▼1階廊下
直樹「どこにトイレがあるかわかっているのかい?」
ほのか〈立ち止まり、直樹のほうを振り返って〉「あれは嘘です。お兄さまと2人でお話がしたくて」
直樹「え?」
ほのか「どうして、メガネのお兄さまを傷つけようとしたのですか?」
直樹「それは……」
ほのか「なにがあったのか教えてください」
しばらく無言のまま見つめあう2人。ため息を吐き、直樹が沈黙を破る。
直樹「……これだよ」
人形を取り出す直樹。
ほのか「メサイアさま?」
直樹「僕、クラスメイトにいじめられててさ。……このままじゃいつか本当に殺されちゃうと思って、古本屋で見つけた呪術書を読んで、そいつを呪い殺そうとしたんだ。だけど、儀式をひろし君に見られてしまったみたいで、僕に呪い返しが……」
ほのか「ひろし君というのは、先ほどのメガネのお兄さまですか?」
直樹「ああ。儀式を目撃した者を殺せば呪いは解けると本に書いてあったから……」
奥歯を噛みしめる直樹。
直樹「ほのかちゃん、ゴメン。君のお姉さんが死んだのも、僕のせいだ。あの怪物は僕を食い殺そうとしたんだと思う。だけど、とっさに僕がよけたものだから、間違って隣にいたお姉さんを……」
ほのか「いいえ、それは違います」
直樹「え?」
ほのか「メサイアさまは絶対にあやまちを犯したりしませんから」
直樹「でも……」
ほのか「メガネのお兄さまに儀式を見られたことは間違いないのですか? お兄さまに確かめてみました?」
直樹「いや……だけど、昨日の夜、ひろし君が公園にいたのは本当のことだし……」
ほのか「ちゃんと確かめてみるべきだと思います」
直樹「…………」
▼1階洋間
ほのかと一緒に洋間へ戻ってくる直樹。棚の位置が先ほどと変わっており、壁の向こうに金庫が見える。
ひろし「ああ、お帰りなさい」
直樹「ひろし君。それは……」
ひろし「見つけましたよ。隠し金庫です。棚にピアノと同じ赤い染みを見つけたので、もしかしてと思って調べてみたら、やはりそのとおりでした」
金庫の扉には電子パネル。
ひろし「四桁の数字を打ち込めば開くシステムのようですね。ためしに適当な数字を入力してみたのですが、セーフティー装置が働いたのか、一分間操作不能になってしまいました。まぐれ当たりでロックを解除するのは難しそうです」
金庫の前で考え込むひろし。ほのかに促され、ひろしに近づく直樹。
つづく
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