『青鬼 元始編』原稿18
第5話 せんけつ(3)
たけし「チクショー。なんでオレがこんな目に……」
たけしの鼻血はなかなか止まらず、ぽたぽたと床に血がこぼれ落ちる。
直樹(血……イヤだ。これ以上、血なんて見たくない。誰も犠牲にしたくないよ。だから……僕にかかった呪いを解くために、ひろし君を殺さなくては)
心の声(そうだ。殺せ!)
ひろしの背中を睨みつける直樹。
直樹(今はダメだ。たけしがいる)
ほのか「お兄さま……大丈夫ですか?」
真っ青な顔色の直樹を、心配そうに見上げるほのか。
たけし「直樹、おまえのせいだぞ。おまえが急に現れたりするから。……いてえ。いてえよ。鼻の骨にヒビが入っちまったかも」
たけしの言葉に、イラつく直樹。
直樹(……たかが転んだくらいで大げさな。僕は卓郎にもっとひどい仕打ちを受けているんだぞ。それをおまえはただ笑って見ていただけだろう?)
直樹の顔つきが変化する。
直樹(おまえも一緒に殺してやろうか?)
たけし「う、うわあああああっ!」
立ち上がるたけし。怯えた視線は直樹に注がれている〈実際にたけしが見ていたのは×××。人一倍臆病者のたけしは、悪しき者の雰囲気を嗅ぎ取ることに敏感。そのため、×××の正体にうっすら勘づいてしまった〉。
たけし「……おまえ、誰だ?」
直樹「……え?」
たけし「オレたちをどうするつもりだよ?」
ひろし「たけし君、どうしました?」
たけし「た、助けてくれえええっ!」
立ち上がり、部屋から逃げ出すたけし。あっという間に、直樹たちの前から姿を消してしまう。
ひろし「一体、どうしたというのでしょう?」
直樹(……僕を見て怯えた? どうして? 僕の殺意が伝わったから? それとも、僕が呪われた存在だから?)
ひろし「それにしても、このにおい。たまりませんね。どうやら、このドアの向こうから漂ってきているように思えますが」
奥のドアを調べるひろし。ノブをひねり、ドアを開けようとする。
心の声(殺せ! 邪魔者もいなくなった。今がチャンスだ!)
直樹、ポケットからアイスピックを取り出す。
心の声(そうだ、それでいい。ためらうな。一気に突き刺せ!)
右手を振り上げる直樹。ひろしの背中に振り下ろそうとするが、床に滴り落ちたたけしの鼻血を見て、心が揺れる。
直樹(……真っ赤な鮮血)
たけし〈回想〉「いてえ。いてえよお」
ひろしの背中に突き刺さる寸前のところで手を止める直樹。
つづく
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