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『青鬼 元始編』原稿15

第4話 にげみち(5)

▼2階廊下

 ひとつひとつドアを調べていくひろし。その後ろを怯えた様子でついていくたけし。

ひろし「このドアもロックされていますね」

たけし「チクショー、卓郎め。オレ一人を置いてどこへ逃げやがったんだよ」(卓郎がいないときは呼び捨てで)

ひろし(ドアノブを握り)「おや。どうやら、ここは開いているようですね」

たけし「おい、大丈夫か? またあの化け物が出てくるんじゃないだろうな?」

▼2階客間

 そっとドアを開け、中の様子をうかがうひろし。ベッドがふたつと大きめのクローゼット(のちに、たけしが隠れる場所)。それ以外はなにもないシンプルな部屋。ベッドは手前の壁沿いにひとつ、奥の壁沿いにひとつ、それぞれ離した状態で置いてある。

たけし(ひろしの背中に隠れたまま)「おい、どうだ?」

ひろし「中には誰もいませんね」

 急に強気になり、ひろしより先に室内へ入るたけし。

たけし「まったく……卓郎の奴、どこへ行ったんだ? 早く見つけ出して、別の出口を探してもらわないと」

 奥のベッドに腰かけるたけし。ベッド手前の床は、ベッドのサイズ分だけ色がほかとは違っている。

ひろし「たけし君。そのまま動かないで」

たけし「ひっ! なんだよ?」

 床を調べるひろし。

ひろし「ここだけ床の感じが違いますね。ほかの部分と違って、色褪せていません」

たけし「脅かすなよ。だから、どうしたっていうんだ?」

ひろし「ベッドのサイズと同じ大きさです。もしかして……。たけし君、手伝ってください」

 ベッドを移動させるひろし。ベッドで隠れていた床には、一メートル四方の大きさの穴が開いている。

たけし「……なんだよ、これ?」

 ひざまずき、穴を覗き込むひろし。中央にグランドピアノの置かれた洋間が見える。

ひろし「どうやら、真下の部屋と繋がっているようですね。行ってみましょう」

 ひろし、ためらうことなく階下へと飛び降りる。

たけし「お、おい、ひろし」

 不安そうに穴を覗き込むたけし。

▼1階洋間

 グランドピアノに近づくひろし。鍵盤の一部にべっとりと赤いものがこびりついている(原作と同じような感じで)。

ひろし(鍵盤に赤いものがこびりついていますね。……血痕でしょうか?)

 ドアの外で物音。ドアに近づくひろし。

ひろし(ドアノブをひねり)「卓郎君ですか?」

 ドアを開けると、そこには直樹とほのかが立っている。

ほのか「ひろし……君」

 突然ひろしが現われたことで、動揺を隠しきれていない直樹。右手に握っていたアイスピックを背中に隠す。直樹の腕にしがみつくほのか。2人の間に緊張の空気が流れる。

第4話終わり
第5話につづく。

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