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新興国株など不要! 〜新NISAの投資銘柄を考える〜

新NISAも始まり、やや遅ればせながらS&P500にすべきか、全世界株にすべきか考えていたら、意外な事実を発見してしまった。

こちら、S&P500と中国、インドの主要な指数をそれぞれ並べてみた。
引用元は、いずれもGoogle Financeである。

S&P500
上海総合指数
S&P BSE SENSEX(インド株式)

2000年初から2024/1/5までの値動きを比較してみると、

  • S&P500:1465→4697(320%)

  • 上海総合指数:1535→2929(190%)

  • S&P BSE SENSEX:5423→72026(1328%)

と、中国よりも米国の方が騰落率が高いことが分かる。
インドに関しては米国よりも遥かに高いが、2000年と言えばまだまだ新興国としても未成熟であったことから考えて、2010年くらいからで見てみると、
・17540→72026(399%)と、米国とそこまで変わらない。
なお同期間のS&P500を見ていると、
・1144→4697(419%)と、むしろ米国の方が高騰している。

ここから分かることは、新興国への投資が、米国と比較して特段に有利という訳ではない、ということだ。

中国は2000年頃からこれまで、インドといえば今後の高成長が期待できる銘柄の代表格と思われている。これら、過去に発展途上国だった国が、G7並みの経済規模になると予測すれば、株価に関しても、もっともっと、米国など遥かに凌ぐ高騰が期待できそうなものであるが、実際はそうはなっていない。

そこにはいくつかの思い違いがある。
ひとつは、「規模」と「利益率」の混同である。

中国やインド、またほかの国が経済成長するとき、企業や働く人の数が増えていくので経済の全体規模は大きくなる。その国のGDPは何倍、何十倍にもなる可能性がある。が、それとは別に、1企業ごとの利益の増大は、そこまでいかない。

一般に「中進国の罠」と呼ばれるが、国民1人当たりのGDPが1万ドルに達したあたりで、経済成長に陰りが見えてくる。今の中国の1人当たりGDPが1万2千ドル程度だから、そろそろ打ち止めになる可能性が高い。いや、すでにその兆候が見えている。

もちろん、1万ドルまで急成長してその後にピタッと止まる訳ではなく、徐々に成長は鈍化してくる。

「1人あたりGDP」と「1企業当たりの利益」を単純に相似形と捉えるのも早計かもしれないが、人口増加とともに企業の数も増加するから、そうそう相反する推移にもならないだろう。「1企業当たりの利益」が頭打ちになれば、その企業の株価も頭打ちになる。株価のキャピタルゲインは市場総額ではなく、自分が購入した株価の値上がりによるものだから、市場の総額ほど、株式による利益は上がらない。

つまり、新興国といってもその成長の限界点は意外と低い。

さらに歴史を俯瞰すれば、新興国から正真正銘の先進国となった例は、過去にほとんどない。

ほぼ唯一の例外が日本で、明治維新後と第二次世界大戦後の2度、貧困国から経済大国に上り詰めている。

韓国や台湾を含めることもできるが、いずれも日本統治時代の投下資本によるところが大きい。日本からの莫大な投資によって現在の発展がある。なお韓国も台湾も、eMaxis Slim 全世界株式(オール・カントリー)の分類では、いずれも新興国・地域である。

さらにいえば、今の新興国、例えば東南アジアなどは1980年代からずっと「新興国」のままである。もう40年ほど「新興」しているままなのだ。
一体いつになったら先進国になるのか。

ブラジルもそう。こちらも40年ほど「未来の大国」と言われている。
現在に至るも、少なくとも経済規模で大国とは言えない。

明治維新によって近代化を始めた日本は、40年後には日露戦争でロシアを打ち負かしている。その後の国際連盟では常任理事国となり、世界の一流国と認めらえた。

第二次世界大戦で最貧国とまでなった日本は、その敗戦から19年後には東京オリンピックを開催し、さらに4年後には当時の西ドイツを追い抜き、アメリカに次ぐ世界第2位のGDPとなった。

20年余りで、押しも押されもせぬ経済大国となったのである。

中国やインド、その他の新興国を考えるとき、つい日本の辿った経済成長と同じことがこれらの国も起こると想像しがちだ。

もちろん、絶対にないとは言わないが、その可能性は極めて低い。
何せ、日本の倍以上の年月をかけて、いまだに「新興国」のままなのだ。
日本の方が例外なのである。

それでいて先進国と比べて経済環境の安定性には不安が残る。現に中国など、もはや投資できる環境にはない。先進国に投資する旨味はほとんどないと言っていい。

というわけで、新NISAの投資銘柄も新興国など考慮する必要はなく、S&P500のインデックスファンド1本でよいと考えるが、如何だろうか。

遠い将来、例えば自分ではなく子や孫の代つまり50年や100年先まで「放っておいて資産を増やす」ということを考えれば、オールカントリーは選択肢になるだろう。そんな先まで米国の覇権が続くかどうかは、誰にも分からない。しかしオールカントリーも、その構成比率を見てみれば、60%程度は米国で、ざっくり80%くらいは先進国である。

いずれにしろ、途上国のことなど考える必要はないだろう。

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