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真剣に面白いことをやりたい!くらしアトリエのプロダクト作りを「クッキーボックス」から紐解く。

今日の「時々、コラム」は、こちらの商品について。

島根県各地の特産品のミニチュアフィギュアがセットになったオリジナルのクッキーボックス。

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おいしいお菓子をつくってくださる「鹿糠」さんのご協力を得て、まっさらな状態から企画して作りあげた商品です。

こちらの商品、そもそもはスタッフの「クッキーボックスっていいよねえ」という声がきっかけでした。

遡ること1年。

2020年秋に開催したイベントで、お越しくださった皆さんに何かお礼がしたい、と考え、「鹿糠」さんにクッキーを焼いていただき、予約してくださった皆さんにお配りした、ということがありました。

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「大黒天」と「ひょうたん」という、おめでたい形の型でクッキーを焼いていただいたのですが、それがとってもかわいくて、「オリジナルの型を作ってクッキーが作れるっていいねえ」「それが缶や箱に詰めてあったらかわいいよね」という「妄想」が沸きあがりました。それがもともとの出発点。

でも、「オリジナルの型」でクッキーを焼いて箱に詰めて、それが「島根のクッキー」って言うのって、なんかこう…萌えないというか、当たり前すぎるというか、とにかく面白みに欠ける気がしたのです。

それって誰もが考えそうなことだし、わざわざ買っていただくのなら、もっと「えー、何それ、面白い!!」とのけぞってもらうくらいのことがやりたい!と思ってしまったのでした。

※この「普通じゃつまらないじゃん」と考えてしまうことが、くらしアトリエの強みでもあり、企画がなかなか実現しないという弱みでもあります。面白いほう、喜んでもらえるほうに舵を切るがゆえに、実現性に欠けてボツになってしまうこともしばしば。

ともかく、クッキー型を作るだけじゃ満足できなかった私たち。

オリジナリティをどこに置くか、で悩むこと半年(この間、すっかりクッキーボックスのことを忘れていた期間もありました…)。

ひょんなことから企画が前に進み始めます。それが、スタッフがふとつぶやいた、「ミニチュアが入ってたりすると楽しいかも」というひと言でした。

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そう、うちにはめちゃくちゃ有能なミニチュア作家、Rさんがいるではないか!

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ミニチュアとクッキーのセットだったら、他に真似ができない完全なるオリジナルのクッキーボックスになるのでは?と考えたのです。(ここで「なんでミニチュアとクッキーを組み合わせる必要があるのか」と冷静な意見を出すスタッフはいませんでした…。)

そこから話は盛り上がり、出てきたのが「ガチャみたいになってたら面白いんじゃない?」というアイデアです。

巷ではユニークなガチャが流行っていると言うではないか。

ならば、島根の面白いものをクッキーと一緒に箱に入れて、「何が入っているかはお楽しみ」にしたら、選ぶ人も楽しいんじゃない?

その提案に別のスタッフから「ビックリマンチョコみたいな感じ?」という声が上がりましたが(時代が…)、クッキーも「お楽しみ」も、両方を同等に喜んでもらえるものにしよう!というのが共通認識でした。

じゃあどんな「お楽しみ」がいいのか、と考えたとき、「それはやっぱり島根っぽいものじゃんね」ということになり、出てきたのが「野焼き」「源氏巻」「赤天」といった地域の銘菓や特産品です。

ものづくり作家・Rさんに相談したところ、案の定最初はきょとんとしていましたが、「面白いと思わん?」と説明すると少しずつミニチュア職人としての血が騒いできたのか、とりあえず試作をしてみよう、ということになりました。

ここですごいのが、どんなモチーフに対しても「そんなの無理、作れない」とは言わないことです。「作れないよ」がスタートではなく「どうしたら作れるか(しかも本物そっくりに!)」という思考回路なんですよね…さすが!

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試作が出来上がって見せてもらったとき、その再現度に思わず笑ってしまったのですが、同じようにお買い上げいただいた方にも「なんじゃこりゃ」と笑ってもらえたらいいな~、という気持ちがさらに高まりました。

(写真は試作の際、ミニチュアのパッケージデザインを最終的に決めているところ。いかにも特産物、お土産っぽいパッケージを再現しました。くらしアトリエではなかなか提案しないタイプのデザインです。※あくまでも小さく印刷するので、一度に100枚以上作れます…。)

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ちなみに、この時Rさんから「パッケージの中には、ちゃんとミニチュアの商品そのものが入ってた方がいい」という提案がありました。


例えば「野焼き」だったら、商品パッケージと、お皿に盛り付けられた野焼きとで2点セットなので、パッケージの中には本来、何も入れなくてもいい(フェイクでいい)と思うのです。でもRさんいわく、

「興味のある人は絶対、パッケージの中も破ってちゃんと見るよ。それで何も入ってなかったらがっかりするし、にせものじゃん、って思う。」

「えーそうかなあ」と言ったら、「だって私だったら絶対破くもん」とのこと。小さきものを愛する人たちは、そういうところまでちゃんとチェックするんだ!というのが目からウロコでした。
(なので、源氏巻の袋の中にもちゃんと源氏巻のミニチュアが、野焼きの袋にも野焼きのミニチュアが入っております。)

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試作が終わった頃にはRさんも気分が乗ってきて、「ああ、これ作るの楽しいんだな」と言うのが伝わってきました。
企画する私たちだけじゃなくて、作り手もちゃんと楽しくて、お互いに「いいものを作ろう!喜んでもらおう!」という気持ちが高まっているのが分かって、すごく嬉しかった。これこそが、くらしアトリエのものづくりの醍醐味なのです。

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ダメ出しもするし、何度もやり直しをしたりするけれど(松江銘菓「若草」の色や、浜田の特産である「赤天」の色合いにはこちらからチェックを入れてやり直してもらいました)、それも楽しみながら、いいものを作りあげていく。

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それがミニチュアフィギュアであっても、デザインのお仕事であっても、かける思いは同じ。

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「真剣に面白がる」ことが、最終的に良いものを作る近道なんじゃないか、と思うのです。そのためには妥協はしないし、かけられる手間は惜しまない。ここで「まあいいか」という甘えが出てくると、後で絶対後悔することが分かっているし、出来上がったものは魅力に欠けてしまうことも、また経験から知っているのです。

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クッキーを箱に詰めるか、それとも缶にするか、全体のデザインはどんな方向性でいくか、というところもずいぶん悩み、途中ミニチュアに傾倒しすぎて「もうクッキーなしでミニチュアガチャにしたらいいのでは」とか言い出して、ガチャの機械がいくらするのかを調べたりした時期もあったのですが(鹿糠さんごめんなさい)、いやいや待て待て!と初心に返り、箱に詰めて帯を巻く、というデザインにギリギリで落ち着きました。


最終的にできてきた6種類のミニチュアフィギュア。再現度、すごい!

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どうやって作ったのか分からないけどすごい!Rさんに聞くと、「若草のそぼろが我ながらうまくできた」とニコニコしていて、確かに試作とは全然違うクオリティに仕上がっていました。

使う材料も試作と本番では変えているとのこと。また、試作を重ねることで「こっちのやり方の方が再現度が高い」というのが分かってきて、そもそもの製作方法を変えているのだそうです。

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野焼きや源氏巻の「ふっくら感」も、「やっぱりいい粘土を使うと出来が違うわ~」と満足そうでした。いつも依頼している「しまねのミニチュア」よりもさらに小さなミニチュアだったので、作るのも久しぶりだったと思うのですが、相変わらずの実力で、我がスタッフながら素晴らしい!

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日御碕灯台に至っては、試作段階でリクエストもしてないのにウミネコが空を飛んでいて、「…かわいいけど、これどうやって箱に入れるのよ」状態に。

そのまま袋に入れるとウミネコが引っかかって壊れてしまうので、梱包方法でかなり悩みました。しまいにはRさんが「じゃあウミネコやめようか」と言い出しましたが、「いやいやいや!ウミネコが飛んでるのを見せられたら、飛んでないのは物足りなく思うに決まってるじゃん!」と提案を却下し、紙ものが得意なスタッフJさんに相談して、破損しないようにきっちり梱包してもらうことができました。

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仕上がったのはイベント当日の朝。まさにスタッフの総力戦で作られたボックスと言えます!(私は周りでおろおろしているだけでしたけど…。)

こうやってひとつのものを全体で作りあげるというのもずいぶんと久しぶりで、「できた!」という充実感もあって、ただただ楽しかった!と幸せな気持ちに。

ご存じない方も多いかもしれませんが、くらしアトリエはそもそも、フラワーアレンジと手作りの雑貨を組み合わせた商品を企画販売したところからがスタートなのです。15年前の、あの頃を思い出したな~。


同時にクッキーにもオリジナリティを、ということで、型からデザインをおこして製作。こちらは「しまねのエコバッグ」や「しまねマグ」とおそろいの絵柄です。

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ある程度「島根だね」と分かってもらえるモチーフがいいけれど、細かすぎるとうまく絵が出ないので、そのバランスをいろいろと悩み、オリジナルの型を作ってくださる業者さんにお願いをしました。選ばれし精鋭は「出雲そば」「松江城」「一畑電車」「石見神楽」。それぞれ、模様がどう出てくるのかを考えながら製作していただきました(電車の窓など、凹凸をどうつけるのかなかなか理解できなかった…)。

これに、すでにあった「大黒さま」と「ひょうたん」、さらに「ENJOY LOCAL!」の文字が入ったもの・島根の形の、合計8種類。その型を使って鹿糠さんに何度も試作していただきました。

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クッキーもかわいくておいしいのができた!本番では絵もくっきりと浮き出てホッとしました。

が、ここまで心酔してしまうと「スタッフの気持ちが強すぎて、逆に全然売れない」というストーリーも容易に想像でき(過去に経験あり)、最初のおひとりがお買い上げくださるまではやきもきしていました。

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結果的に、用意したものは完売し、反響も大きく、そしてやはり「ミニチュアだけ欲しい」という方も何人かいらっしゃいました。お買い上げくださった皆さま、お声がけ頂いた方々、本当にありがとうございます。

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「何が入ってるかはお楽しみ」というわくわく感はやっぱり大切にしたいので、今後もクッキー+ミニチュアフィギュアという形で販売していきたいと思っています。ミニチュアはRさんの完全手作業による手作りですし、クッキーもこだわりの素材でていねいに焼いていただくので、大量生産はできませんが、また来年以降、どこかでお目にかかることになろうかと思います。

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その時には思いっきり「面白ーい!」と感じていただけたら嬉しいです。

そして、くらしアトリエでしかできない、この「よく分からないけど面白そう」「こんなの誰もやらんやろ」というようなプロダクトを、これからも自主事業として、真剣に楽しみながら続けていけたらいいなあ。それを面白がってくださる方がおられたら、なんて幸せなことだろう。

今回のオリジナル企画で、さらにその気持ちが強くなりました。






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