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たとえそこにいなくなっても、花は咲いていてくれる。

先日、お天気の良かった日に、かつての事務所があった雲南市大東町の「はたひよどり」を訪ねました。

毎年春になると、地区内にある「畑展望公園」で早咲きの桜が咲いたり、オオイヌノフグリなどの野の花が咲き誇ったりして、「桃源郷」のような風景が広がります。

移転してからは、季節のうつろいを知る機会も減ってしまったのですが、どうやら今年は春が早く来そうだ、ということで、いつもよりも少し早めに出かけてみたのでした。

桜は見ごろをやや過ぎた感じではありましたが、まだまだきれいな濃いピンク色の花を咲かせていました。誰もおられなかったので、貸し切り状態です。

この「畑展望公園」は、地元自治会の皆さんが自ら開拓し、眺望を楽しむ東屋や展望台を作り、手作りで整備された公園です。

魅力は、何と言っても展望台からの眺望。

雲南の山並み、出雲空港を離発着する飛行機、宍道湖、そして、条件が良ければ日本海の向こうの隠岐の島まで見える、ということで、ひらけた景色がとっても気持ち良く、またお子さまが遊べるように人工芝のそり滑りが楽しめる場所も用意してあるので、ご家族で楽しめるスポットです。

以前noteで少し触れたのですが、この公園の眺望がテレビで放映されたそうで、Googleマップの検索数もぐっと伸びました。

注目を浴びたんだなあ、ということが分かって嬉しかったのですが、先日行ってみると、雲南市内のグルメマップとか、飛行機の離発着時間とか、ドライブマップとか、とにかくたくさんのマップがていねいにラミネート加工して置いてありました。

自治会の方がテレビ放映をきっかけに、公園に来られた方に喜んでもらおう、というサービス精神で、一生懸命考えられたんだろうな、と思うとほほ笑ましいです。

私たちくらしアトリエも、雲南市にいた頃からことあるごとにこの「畑展望公園」の魅力を発信してきたのですが、そういった長年の発信の積み重ねよりも、一度テレビで放映されるということのほうが、圧倒的にインパクトがあるんだな、ということもよく分かりました。
(そもそも、皆さんほぼネットを利用されていないので、くらしアトリエが何を発信しているのか、ご存じない方がほとんどだったのですが…。)

地方にとって、テレビと新聞というメディアの影響力、いまだにとても大きいものがあるのだと実感します。

私たちがこの地に事務所を開いた当時は、まだ皆さんお元気で、筍を収穫して加工されたり、

年に1度の「畑展望公園まつり」ではしいたけご飯をふるまわれたりと、比較的精力的に活動をされていたのですが、他の地域同様、高齢化が進み、お祭りも回を重ねるごとに続けるのが難しくなりました。

「万国旗の旗を飾ることができない」
「カラオケ大会や銭太鼓などの舞台を設営することができない」

といった、「主に体力的な問題」で祭りが存続できないということが分かったので、何とかそういった苦労をしなくてもお祭りが続けられる道はないか、と、2014年、2015年の2回は私たちが主導で開催をさせていただきました。

自治会の皆さんは、来られた方にどうにかして喜んでいただきたい、という思いが強く、やや過剰におもてなしをされていて、それが「祭りがしんどい」と思われる理由になっているのでは、と思っていました。

そこで、企画を工夫して、でも「くらしアトリエ色」だけにならないよう、いつもの展望公園まつりらしさも色濃く残して、と「持続可能な祭り」の実現を考えたのですが、やはり「住民主体のお祭り」という形にはならず、2015年でお祭りは終了となりました。
そしてそこから加速度的に高齢化が進み、年に数回の草刈りや整備などもおぼつかなくなった、とうかがっていました。


それが今回、「テレビ」というメディアが自治会の方々の心を動かし、行動に移された、ということになります。やる気スイッチが入ったんですね〜!
やはり、外からの評価というのが大切なんだな、というのを強く感じるとともに、取りあげてくださったことをありがたく思いました。

地方の、小さな集落にとって、まちをそのまま持続していくことは、思った以上に大変です。

そんな中、自分たちの地域への誇りを「公園」という開放されたものとして形にされたはたひよどりの皆さんはすごいなあ、とあらためて感じました。

今回、きれいな花を咲かせていた桜の木も、公園を整備されたときに皆さんで小さな苗木を植えられたもの。

それが、およそ20年を経て、とても立派な木に育ち、美しい花を咲かせるまでに成長しました。
「祭りをして賑やかにやろう!」というような当時のモチベーションは今はもうないのかもしれませんが、こうして木が大きく育ったことが、何より皆さんの思いの積み重ねを体現している、と思います。

最近、活動を振り返ったときに強く感じることがあります。
それは、「種まき」ということ。

先日のまちづくりセミナーの質疑応答の際に、イベントでの集客を目指すには、その前段階として「日々の発信を積み重ねていくことが大切だと思います」という話をした際、参加者の方が「種まきが大切っていうことなんですね」とおっしゃってくださり、まさに!と思ったのでした。

くらしアトリエの活動自体も、その時には明確な収穫がなかったとしても、数年後に思わぬ形で実りを感じることが、よくあります。

あの時には気づかなかったけれど、ちゃんと種まきがしてあったってことなんだな、と思う。

そのときには必死過ぎて分からなかったけれど、年月が経てば、そこにちゃんと芽が出て花が咲く、そんなこともあるのだと、15年の活動を振り返って感じることがとても多いのです。

畑展望公園の木々に咲く花も、植えられた時にはこうして多くの方の目に触れることは予想されていなかったかもしれません。

自分たちの身体が思うようにいかなくなっても、年に1度こうしてきれいな風景を作ってくれるというのは、素敵なことですね。

地域の誰かが、いつか花が咲くことを信じて夢を見て、種をまく。
誰かの真似ではなく、その地域にとって良いものをとことん考え、未来を想像して、種まきをする。
その行動が、もしかしたら10年後、20年後に大きな花を咲かせることになるかもしれません。

咲いた花を見ている人はきっと、夢を見た最初の1人のことは知らないのだけど、でも、その思いが未来にちゃんと伝わっている。

自分たちの活動もそうありたいな、と、とても勇気づけられたのでした。

これから、展望公園には本格的な春がやってきます。
山の緑も萌黄色からどんどん濃くなっていって、田植えが始まり、5月にはなんじゃもんじゃ(ヒトツバタゴ)の花が咲き、夏には雲海が広がって…と、美しい風景を楽しむことができます。

もちろん、展望台からの眺望も。

自治会の皆さんが種まきをしたこの公園。

たくさんの方が訪れることが、何よりの喜びになると思います。ぜひ、お弁当を持って、コーヒーを片手に、遊びにいらしてください。

そして、この公園だけでなく、お住まいの地域にもきっと、地域の方が何年も前から種まきをして育ててきた「地域の誇り」となる風景やスポットが、きっとあるんじゃないかと思います。

例えば邑南町・川角地区の花桃の花。

あるいは、出雲市佐田町のあじさい。

そんな、地域でていねいに「種まきをされた風景を楽しむ」ことも、シビックプライドにつながるんじゃないか、と思っています。

これから暖かくなってきますので、お出かけの際にはそんなことも、心にとめていただけたら嬉しいです。

最後に、今までこちらのnoteで「畑展望公園」について綴ったものを紹介しておきますね。

公園の魅力について綴ったnote。

こちらは昨年の春のnote。テーブルやいすを持って行って、移住・定住促進のポスターの撮影がてら、ランチをいただきました。

こちらは、紅葉を見に行った時のもの。


コーヒーの会をした時の記事も。

いろんな楽しみ方ができる展望公園も、ぜひよろしくお願いいたします!

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