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手紙 〜拝啓 私の元上司さんへ〜

今日、久しぶりに外食をしました。
そのお店でアンジェラ・アキさんの「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」という曲がかかっていました。
この曲を聴いて、先日最終勤務を終えたお世話になった元上司へ、本人には読まれることはないであろう手紙を書きます。

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拝啓 元上司さん。

四年前の私は結婚したばかりで将来に漠然とした不安を持っていました。

結婚したのはいいけれど、同年代の友人達が着実にキャリアを築く中、自分だけが置いていかれているようで。
自分で選択した道だけれど、これからどうしていけばいいのか、不安しかなかった。

「このまま誰でもできるような簡単なルーチンワークしかしないのか」
「せっかく四大卒なのにアルバイトの経験だけでいいのか」
そんな思いのまま仕事探しをする日々。

そんなある日、貴方のアシスタントを募集する求人を見つけました。

アルバイトではあるけれど、今まで全く縁の無かった職種に未経験でも応募が可能という文字を見て、なんだか面白そうという気持ちだけで応募ボタンを押しました。


面接当日。現れた貴方は、「面接予定の部屋が空かないから」という理由で、受付スペースで面接を初めましたね。
周りの人に見られて緊張しました。

それでも気さくな雰囲気で、面接と言うよりかは面談のようで、自分でも本当に選考されているのだろうか?という気持ちになりました。

そしてその場で「是非うちで働いて欲しいです」と採用宣言をしてくれましたね。
まだ他の会社の面接も入れていて、今すぐには決められないと伝え帰路についたことを覚えています。

その後他の会社の面接も受けました。
どの会社も条件面は同じ程度だったので、あとは会社の雰囲気でどこにするかといったところでした。

私は真っ先に貴方の顔が浮かび、「この人と一緒に働いたらなんだか楽しそうだな」と思い、入社承諾の連絡をしました。
あとから他の社員の方から聞いた話しですが、この会社は入社前にアルバイトでも適性検査をするようですね。
それを全くせず、当日に採用を貰うのは非常に珍しいと言われました。


入社したら、貴方は私の知らない仕事の世界を見せてくれました。
知識もそうですが、誰もが知っているような企業の担当者との打ち合わせやセミナー、カンファレンスに同行させてもらって、自分がどれだけちっぽけで、狭い世界にいたか思い知りました。
そして仕事の世界はこんなにも広く、日々もの凄いスピードで進んでいくことを目の当たりにしました。

そして貴方と仕事をするうちに、アルバイトではなくて正社員として評価されたい。正社員として仕事を任せて欲しい。と思うようになりました。

でも入社した時に「現状、正社員になるつもりはありません」と堂々と宣言したいた為、正面から正社員になりたいという思いを伝えられませんでした。


社内イベントの1つとしてあった"日頃お世話になっている人に感謝のメッセージを送ろう"という企画で、私は貴方にメッセージを書きました。
そこには日頃の感謝の思いを連ねつつ、最後に小さい字で「P.S 正社員って楽しいですか?笑」と書きました。
貴方はその言葉を見逃さず、翌日すぐに「正社員に興味ある?なる?」と聞いてくれましたね。

そこから正社員登用に向けて、とても忙しい中、多くのサポートをしてくれましたね。
あの部署は基本的に経験者やキャリアがある人しか採用しないから、アルバイトだとしてもそもそも何の知識も無い私が入社できたこと自体奇跡だったのに、そこから更に正社員になりたいだなんて前代未聞だったでしょう。

前例が無いから少し時間はかかりましたが、貴方のお陰で私は令和の始まりと共に人生で初めての正社員となりました。

そこからの日々は更にあっという間でした。
改めて責任を持って仕事に取り組む事。アルバイトの時には無かった数字の圧。意外と細かくて面倒だなと思ってしまった評価制度。
どれも初めての経験でほとんどの場面で貴方に甘え、頼ってばかりでしたがいつも見捨てずサポートしてくれましたね。


もっと貴方と一緒に仕事がしたいと思って望んだ正社員。
念願叶って正社員として働き始めたと同時に、いつかこの人もどこか別のところへ行ってしまう日がくるんだろうな、と漠然と考えていました。

そしてそれはきっと私にも言えることだと感じていました。
だから私はいつまでかはわからないけれど、貴方と一緒に働ける日々を意識しながら生きようと思っていました。


コロナが流行り始めた2020年。
早々と完全在宅勤務に切り替わり、貴方と直接お会いしたのは去年の3月が最後ですね。
まさかそこから一度も会える事なく、退職されてしまうなんて、あの頃は想像もしていませんでした。

WEB会議は直接顔を合わせて会議する時とは違う緊張感や難しさがありましたが、貴方はいつも笑顔で、良い意味で軽いノリでしてくれました。
仕事に関わるミーティングなのに、貴方とのミーティング時間は私にとってリフレッシュできる時間でもありました。

外出自粛が要請される中、体調面や精神面も気遣ってくれましたね。
夫が転職の為、コロナ禍で会社を辞めたことをポロッとこぼしたら、その後定期的に「最近旦那さんどう?順調?」と気遣ってくれましたね。

夫がこのタイミングで転職活動をしている事。
当初なかなか上手くいかず不安だった気持ちを言える相手がいなかったので、貴方のその気遣いがとても嬉しかったです。


聞いた話によると、貴方は明日から新しい職場で、新しい生活を始めるようですね。

貴方にとって私は大勢の部下のうちの一人でしかなかったと思います。
だからきっと明日から始まる忙しない日々の中で、すぐに私の存在は忘れられてしまうでしょう。

そしてそれはきっと私にも言えることなのではと感じています。

今はまだ在職中ですが、恐らく私もあと数ヶ月でこの会社を去らなければならなくなるでしょう。
そして新しい生活が始まれば、きっと貴方のことを思い出すことはほとんど無くなるでしょう。

それでも私は貴方の存在を忘れることはきっと無いと信じています。
忘れたくないと思っています。

時が経ち、貴方と一緒に過ごした具体的な思い出はもしかしたら忘れてしまうかもしれません。
でも貴方から教えてもらった事や、貴方にお世話になった事実は忘れないでしょう。


プライベートで連絡を取る必要はないな、と感じ、貴方の個人連絡先やSNSは知らないままとなりました。
もしかしたらもう一生お会いすることはないかもしれません。

それでももしいつかどこかでお会いする日があったら、その時は直接お世話になりましたと伝えたいです。


もう少しで日付が変わります。
貴方は明日から新しい会社の一員となり、そこで忙しい毎日を送ることと思います。

私は自分が今後どうなるか、正直まだわかりません。
でも貴方から影響を受けたポジティブ&チャレンジ精神を大切にしていきたいと思います。

貴方と過ごした約四年は私にとってかけがえのない思い出であり、貴方が私の上司だったことは私の誇りでもあります。
新天地での益々のご活躍をお祈り申し上げます。

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