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時節で変わる宿場の表情:中山道 奈良井宿

こんにちは

日本の伝統的な地域や建築は、
季節や行事でまちの風景を変容させます。

今ではなかなか身近で見られないかもしれませんが、ずっと昔から習慣として続いている地域が現存しています。

ということで、
今回は時節で通りの表情が変化する地域の一つ、宿場町「奈良井宿」のお話をしていこうと思います。

少しだけ耳を傾けてもらえたら嬉しいです。

それでは


|中山道 奈良井宿

まずは、中山道の宿場町「奈良井宿」についてザっと触れていきます。
奈良井宿は長野県塩尻市にあり、約1kmにわたって町並みを形成する日本最長の宿場町として知られています。

奈良井宿
中山道六十九次の中で、東海道と共有する草津・大津宿を抜いた純粋な中山道六十七宿中(板橋から守山まで)、奈良井宿は江戸側の板橋宿から数えても京側の守山宿から数えても34番目に位置する、中山道の丁度真ん中の宿場町です。木曽11宿の中では最も標高が高く、難所の鳥居峠を控え、多くの旅人で栄えた宿場町は「奈良井千軒」と謳われました。
町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、往時の面影を色濃く残しています。

奈良井宿観光協会HPより引用


中山道の宿場町の一つ「奈良井宿」
格子・軒の猿頭(意匠垂木)・そで壁が印象的
夏には簾が掛かる

「宿場」は現在で言う「駅」と言えばわかり易いと思います。
現在のように車や電車はなく、移動手段は人の足(馬や駕籠も)でした。
街道の始点と終点の間にある各駅(宿場)に宿泊施設、食事処など町家が立ち並び「まち」(商店街)機能が形成されたのが「宿場町」とされています。

そう考えると宿場のアップデート版が現在の「道の駅」という風にも捉えられるし、どこか歴史的な繋がりが感じられますね。

奈良井宿 鎮守「鎮神社」

ボクは何度か奈良井宿を訪ねています。
そこでお話した人や宿場町の雰囲気、気候などまた来てみたいと感じさせてくれるお気に入りの場所の一つです。

奈良井宿は夏になると並ぶ家々に簾(すだれ)が掛かります。
普段の風景を知っている自分からすると目に映る風景の変化に驚きを与えてくれます。

|季節の装いがまちに彩りを与えている

ボクが訪ねたのは8月のお盆時期。

家々の簾の前に家紋の入った提灯が掛かり、家の前を通ると中から子どもたちの楽しそうな声や家族の話声が聞こえてきました。
きっと夏期休暇の帰省中だったんだと思います。

夏の装い
屋号入りの簾とお盆提灯
湧き水の恵み

まちの表情の変化と住む人たちがつくり出す情景に、時節をより強く感じさせてくれます。
そこにプラスして蝉の鳴き声、歩くと聞こえてくる水の音、遠くに見える山々の緑、そうした一つ一つが夏の奈良井宿の風景を構成しているんだと思います。

日本の夏だなぁ、っていう。 

祭事の装い
提灯の枠やしめ縄、祭り提灯が通りを飾る
2022年5月撮影

見学できる町屋に入ってみても、伝統的な建築の夏を感じさせてくれます。
通りに面した簾を今度は内から見てみると、外が良く見えます。

外部からの視線や日差しを遮りつつも、内部からは繋がりを保っています。
これは簾という道具の特徴ではありますが、日本らしい空間の境界にある「曖昧さ」がよくわかります。

中村屋 外観
夏には簾が掛かる
外からは中が見えない
中村屋 内部
表通りのシトミ戸が外れて
風通しを良くしている。

完全に遮断はさせずに、光や気配が程よく家の中に漂っています。

宿場町の通りと家の中、両方を体験してみるとその時々の季節、また住まわれている人たちの暮らしぶりを感じるので地域を味わう一つの楽しみ方なんじゃないかなぁと思います。

奈良井宿の特徴の一つ
蔀(シトミ)戸
脱着可能な造りをしている

奈良井宿は、ここへ訪れる人を迎え入れてくれるようであり、住んでいる人たちは地域に根差した文化を保ち続けているステキな「場」です。

日本的な文化、建築が好きな方はぜひ色々な季節に訪ねてみてくださいね。

上問屋資料館 中庭
簾や障子によって柔らかな光が部屋に差込む

その時はお話を聞かせてほしいです。

ということで、
この辺りので失礼します。

ここまでお付き合いくださりありがとうございました。

ではまた



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