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『1ミリの後悔もない、はずがない』椎名林檎、辻村深月も絶賛!R-18文学賞受賞の初恋小説

本屋さんで、本の帯が目に留まることってありませんか。

知らない作家さんの作品でも、帯にあるコメントが素敵だと「読んでみたい!」って思っちゃう、わたしは。

今日ご紹介するのは、一木けいさんの『1ミリの後悔もない、はずがない』。わたしが帯のコメントで興味を惹かれ、まんまとハマった1冊。アーティストの椎名林檎さんや、作家の辻村深月さんが帯コメントをよせた初恋小説です

私が50分の円盤や90分の舞台で描きたかった全てが入っている。
――椎名林檎
”最初の恋”の普遍的な魅力に満ちた名作。
――辻村深月

こんなこと言われたら、読みたくなっちゃう。


うしなった人間に対して一ミリの後悔もないということが、ありうるだろうか

内容は、タイトル通り「後悔」をキーワードにした、初恋にまつわる物語。4作品のオムニバスに、書き下ろし1作を加えた構成になっています。

冒頭に収録されているのは、一木さんが、女による女のためのR-18文学賞を受賞したデビュー作『西国疾走少女(にしこくしっそうしょうじょ)』。中学生の由井と、転校生の桐原の初恋のお話です。

とある出来事をきっかけに、大人になった由井が、初恋の記憶を思い出すところから、物語がスタート。

あのころ、桐原といないときはいつも走っていたように思う。ゆっくり過ぎてほしい時間なんて、桐原といるときだけだった。

転校生との恋なんて、王道中の王道……!という感じですが、そこはR-18文学賞を受賞した作品。少女漫画のようにさわやかな、THE恋愛小説!ではないです。キュンキュンは残しつつ、色っぽい。なんというか、大人のための少女漫画といった感じ。

なぜ桐原に惹かれたのか。どんなに考えをめぐらせても、色気としかいいようがない。色気を感じる相手は人それぞれだろうが、それは感じるものであると同時に、細胞や遺伝子の叫びのような気がする。その男とつがえという自分の核からの命令。でも中二のわたしがそこまで考えたはずはなく、ただ生き物のメスとして、順調に繁殖への準備をしていたということだと思う。

この部分、文章自体も色気にあふれていて、好き。

ちなみに、後悔について話が広がるのは『西国疾走少女』のあとのお話から。

恋愛だけじゃない!誰もが心に残した後悔を描いた作品


さて、R-18文学賞を受賞した作品ということで「官能小説でしょ?」と思った人もいるのでは。いえいえ、そうでもないのです。

この作品は、2人の初恋を起点にした人間ドラマ。取り巻く大人や友達の後悔をすくいあげながら、人間の心を描いた物語です。もちろん、なまめかしい表現は多い。でも、人間の成長と葛藤を表現する、ひとつの要素でしかない。

「官能小説はちょっと……」と思っている人にも、ぜひ手に取っていただきたい。



ちなみに、物語のテーマを象徴する存在として、有島武郎の『小さき者へ』が出てきます。こうして、次に読みたい本が数珠繋ぎに出てくるところも、読書の楽しいところですよね。

では、今日はここまで。


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