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書評「誰もが嘘をついている −ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性−」

作業療法の認知度を調査したい。どうやって?

Google Trendsというツールがある。これは、ある語句がGoogleでどれだけ検索されているのかがわかるものだ。これで「作業療法」を調べてみてはどうだろう。

「作業療法」の検索頻度は、月によって変動はあるものの2004年からほぼ横ばいである。毎年2月には高くなっているが、これは国家試験の影響だろうか。

有資格者数は右肩上がりに増加しているものの、検索頻度には反映されていない。

都道府県別に検索頻度みると、鹿児島県・大分県・宮崎県がトップ3だ。しかし、日本作業療法士協会の都道府県別会員数とも回復期リハビリテーション病棟の都道府県別病床数とも関連していない。

何が検索頻度を左右しているのか?そもそも認知度を検索頻度で調査することが妥当なのか?

・・・少々的外れだったかもしれないが、興味深い結果ではある。Google検索には、インタビューやアンケートなどの調査からは知ることができない情報が豊富に含まれている可能性がある。

例えばテレビ番組でよくやるように、街頭インタビューで「作業療法士という職種を知っていますか?」と100人に尋ねるとする。しかし、人は他者から良く見られたいのが常である。「(知らないのに)知っている」「(名前だけは)知っている」と答えるかもしれない。

これはどのようなインタビューやアンケートでも同じである。誰もが嘘をつく。

しかし、Googleの検索窓には本音を吐いてしまう。検索にはそのようなインセンティブがある。嘘だと思うなら自分の検索歴を見てみよう。筆者はGoogle検索を「デジタル自白剤」とまで言っている。

さらに、100人程度のデータでは偏りが生じてしまう。年齢別や地域別の絞り込みをするにはデータが少なすぎる。しかし、Google検索のビッグデータはそれを可能にする。それによって、さまざまな比較ができる。

本書は、ビッグデータだけが持つ4つの力を、人間の意外な本性をさらけ出しながら解説している。しかもそれは、いつも私たちの手元にあるGoogleというなじみのツールから生み出されている。

ビッグデータは私たちの身近に溢れている。GAFAと呼ばれる巨大IT企業はすべてビッグデータを活用している。自分の本性が暴かれるようだが、ぜひ素直に心を開いて本書を手にとることをお勧めしたい。

セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 著(2018年)

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