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私のコレクション 第1149話・4.16

「そもそもこんなことして何の意味があったのか?」私は目の前にあるコレクションを見て悩んでしまった。それには理由がある。1週間後に引っ越しが迫っていたからだ。

 目の前のコレクションを眺める。コレクションを始めたのはもう10年位前だろうか?旅先で何気なく見つけたあるものを持って帰ったのが、そもそものきっかけであった。
「これって、簡単に集められそう」そのものは手に入れるのは、比較的容易なものである。だからあの日以来、そのものを見つけるたびに収集した。これは恐ろしいもので一度収集癖が付くと、躍起になるらしい。
 最初は集めながらそのコレクションのことをあれこれ考えていたのだが、いつの間にか集める行為そのものがメインとなり、肝心のコレクションに対する想いが随分と減少していた。
 
 いずれにしても10年かけて集めたコレクションは半端ない量である。
「困ったなあ」目の前の数多くのコレクションを見ながら頭を悩ませた。今回引っ越しすることが決まったのは、ちょうど1か月前のこと。
 その日から今まで不要と思われるものをどんどんと捨ててきた。いわゆる断捨離である。引っ越し先の部屋は、今の部屋よりも狭いからそうしたのであるが、「もったいない」と思いつつも捨てるなり、代わりにほしい人にあげるなりして、ほとんどそういうものは処分することができた。

 こうして残ったものが、目の前のコレクションだったのだ。「意味ないわよね」私はこのコレクションに価値はないだろうという判断をした。だから捨てようとごみ袋を用意している。だがいざそのコレクションを手にすると手がその先から進まない。
「で、でも...…」不思議なものだ。最初のころはともかく、収集そのものが楽しみになった時には、もうどういう過程で収集したのかすっかり忘れていた。ところがである。いざひとつひとつのコレクションを見てごみ袋に入れようとしたとき、そのコレクションを見ると手に入れたときの思い出がよみがえるのだ。
「うーん、これを手に入れたときは確か...…」こうしてひとつひとつのコレクションを見るたびにその時の思い出がよみがえる。こうなると手が先に進まず時間だけが経過した。

「だめだ、でもだめだ」私は葛藤する。やはり思い出が詰まったコレクションの数々、骨とう品とか資産としての価値はどう考えてもないが、それ以上に私にとっては思い出が詰まっていた。と言ってもこれだけのコレクションを、引っ越し先の部屋に持ち込んで保管するのはどうしても難しい気がするのだ。

「ダメだ、どうしよう」結局私はこの日何もできずに1日が終わってしまう。

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「へえ、そのコレクション気になるよ」翌日の朝友達からメッセージが来た。私は無意識に友達にコレクションのことを愚痴っていたらしい。友達の中には私がこのコレクションを収集していることを知っている子もいたが、メッセージが来たのはそれを知らない子のほうだ。

「そしたら一度来てみてみる。私引っ越しするからもう置いとけなくて」とメッセージの返信したら、3日後に見たいといってきた。
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「お、すごい、これ捨てるのもったいないよ」3日後に私の家に来た友達は私のコレクションを見て歓喜している。「へえ、私と同じコレクションを趣味としてたんだ」知り合って半年ほどだったこともあり、私はこの友達のことをあまり知らなかったようだ。

「ふと思ったんだけどさ、私もこんなにはないけどコレクションがあるの。もしよかったらくれとは言わない。共同で管理しようか?」と言ってきた。 
 私は「え、どういうこと?」と聞き返すと、要は私と友達のコレクションをひとつにまとめて共同管理しようという。友達は今住んでいる部屋のスペースが開いているから私のコレクションを引き取ってもいいというのだ。

「それでいいの?」私が聞き返すと友達はうなづき「いい、わかるもん。このコレクション収集すると私もその時の思い出がよみがえるの。だから私がもらってもいいけど、それじゃあねえ、せっかくのあなたの思い出が台無しになる気がするから...…」
「なんと優しい友達なのだろう」私は感動した。こうして友達の家に一時的に保管してもらい共同で管理することが決まると、友達は乗ってきた車に私のコレクションをすべて入れて帰って行く。

「すっきりしたわ」私はコレクションが完全になくなり一瞬寂しさを感じた。けどごみに捨ててしまったのなら公開するかもしれないが、あくまで友達の家に保管して共同管理ということになっている。
「またいつか持ち帰得られたらそれでもいいし、引っ越し後に落ち着いたら」と、またコレクションの収集を再開しそうな予感を感じるのだった。

 

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