見出し画像

noteの書き方 第1175話・6.10

「怖いのは最初だけだって」僕は友達に誘われてきたのは遊園地、僕は怖いのがとにかく苦手だ。
 遊園地の乗り物は優しいものもあればそうでないものもある。特に絶叫系のものは絶対にダメ。あとお化け屋敷的なものもとにかく苦手なのだ。だけど「たまにはいいじゃないか」と友達に言われた。いつも断っているしたまにはいいかと思い、しぶしぶ遊園地の門をくぐる。

ーーーーーー

「ここまでは書いた。書いたんだが...…」作家の茂は、筆が止まってしまった。「書けるときにはすぐに書けるかけるというのに」今回茂は3日間も筆が止まったままなのだ。原稿用紙に愛用の万年筆をつける。だがそこから動かない。ただ万年筆のインクがゆっくりと紙ににじみ出てしまう。
 それからというもの、何もない時間が過ぎる。さすがに万年筆を紙につけたままにしておくとインクがにじみ出続けるだけだからそれは止めていた。

 万年筆を横に置いた茂は腕を組む。腕を組んで目を閉じた。視界が暗いところで無心になる。無心になれば何かヒントが浮かぶかもしれないと考えた。だが今回は無理である。本当に何も思い浮かばないのだ。

「こんなことは、これがスランプだというのか!」茂はいら立ちのあまりついに万年筆を思いっきり投げた。そのときだ。急に前かがみになったのか下に落下したような引力に引き込まれた気がした。
 だがそれは一瞬のことで、下の床に頭からダイブしただけ。
「ふ、すごい風が。お、なんだ、地震か」どうやら地震が襲ったようである。体が激しく揺れているではないか。まあ揺れはしたが、しょせん本などが落ちるレベルではない。強くて震度3、弱くて震度2とかそんなレベルだろう。

「よし、気晴らしにだ」茂は席を立ち、冷蔵庫に向かった。「何か食えば気分が変わるかもしれない」と思ったが、この3日間の間、毎食そんなことを言ってなかったかと茂は思い出す。
 茂は今までスランプなるものを体験したことがなかった。だからひたすら焦っているのに違いない。
「冷蔵庫に何か入って言っていないかな」茂は冷蔵庫を開ける。その時全身に鳥肌のようなものを感じた。変な絶叫の声が聞こえたような気がする。さらに冷蔵を開けたときに突如感じた不思議な恐怖のようなもの。
 よくわからないが冷や汗のようなものをかく。「な、なに?」茂はゆっくりと冷蔵庫の中を舐めるように見つめる。だが冷蔵庫には何も入っていない。
「そうか、昨日全部食っちまったんだ。恐怖どころか食べるものがないよ」
「うん?」茂はひらめいた。それは書く事ではない。書ける状況になるヒントのようなもの。

「そうか、断食しよう。空腹という絶対条件下において極限状態になれば、いつか頭の中が活動して何らかのアイデアが浮かぶはず。よしそうしよう」茂はそう思うと冷蔵庫を閉じて、そのまま机に戻った。戻っても頭の中には何も浮かばないが、とりあえずずっとその場にいることにした。

 どのくらいの時間がたったのだろう。茂は茫然とその場にいたが、やがて空腹が彼を襲いはじめる。おなかのあたりから音がした。そういえばどのくらい食べていないだろうか?
「腹が減った。ウーこれで何か浮かばないか、うん、あれ、そっか、遊園地に入ったところまで書いたんだっけ」
 茂はやっとヒントをつかんだ。まずは遊園地の食堂に行く、これにしよう」茂は万年筆を手に持った。

ーーーーーー

「おい、何喰うんだ?」
「え?あ、う、うん」僕は我に返る。遊園地で怖いもの体験が嫌だからずっと頭の中で考えていたのだ。僕の夢は作家になること。だから僕の将来像、作家になったらどんな作家生活をどう送るのか?そんなことを頭に思い浮かべてイメージしていた。
ただし僕の名前は茂ではない。
「ごめん、考え事してた」「あ、そ、いつものことだ。いいよ、てか、お前本当に嘘つきだな」「え?」
 僕は友達が何を言っているのかわからない。「え、じゃないよ。怖いものが苦手だといって、ほんと嘘つきだ。絶叫マシーンにも普通に乗っているし、お化け屋敷も普通に入っていたじゃないか」
「...…」僕は記憶がない。僕の特技は。頭の中で別の世界に入っても体がそつなくこなせることがある。多分そのモードに入ったので、僕の頭が自分の世界に入っている間、僕の体が勝手に友達に合わせてくれたようだ。
「そ、そうか」

 ここまで考えて僕はふと思った。そういえば「書く事がない作家」という頭でイメージをしながら突然風が吹いて落下したとか、意味もなく変な声が聞こえた気がして急に鳥肌が立ったこと。その理由がわかった気がする。

https://www.amazon.co.jp/s?i=digital-text&rh=p_27%3A旅野そよかぜ

https://www.amazon.co.jp/s?i=digital-text&rh=p_27%3A%E6%97%85%E9%87%8E%E3%81%9D%E3%82%88%E3%81%8B%E3%81%9C
------------------
シリーズ 日々掌編短編小説 1175/1000
#小説
#掌編
#短編
#短編小説
#掌編小説
#ショートショート
#スキしてみて
#noteの書き方


この記事が参加している募集

スキしてみて

noteの書き方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?