夢か現実か 第953話・9.4
「起きろ、もう朝だぞ!」そう声が聞こえて、急に起こされた。起こされ目を覚ましたが、起こした人がいない。代わりに頭が痛かった。
「イテテテ!」と言いながら頭を押さえる。
「どうせまた飲んできて、二日酔いなのだろう」
「え、あ、はあ」と言って適当にごまかしてベッドから出た。
「あれ? 昨日は酒なんて飲んでないはずだけど」ベットに起きて服を着ている間、昨日の記憶をたどる。しかし昨日は一日家にいてたし誰にも会っていない。酒なんて飲んだ記憶がない。
「そもそも、酒なんて飲んでないはずなんだけど、ていうか、さっきから誰なんだいったい」とつぶやく。酒も飲んでなければ、そもそもひとり暮らしだし、わざわざ起こしに来るような人などいない。なのに突然起こされ、「飲んできて二日酔い」と聞こえた。
「寝ぼけて無意識に答えたけど、誰いったい?」と考えている間も頭にジワリとくる痛み。この痛みはまれに参加する飲み会の次の日の二日酔いのものと同じだから、昨日飲んだ気がした。でも記憶がないのだ。
「ま、いいか」どうにか服に着替えると外に出た。
「あ、あれれ?」ここで異変に気付く。部屋を出るとそこは何もない荒野になっている。「なんで、あれ?」振り返ると、さっきまであった部屋も建物もない。
「ど、どうなっているの」
何が起こっているのか全くわからない。そこは何もない世界。ただ上を見ると星空だけが見える。
「これはいったい?」
とりあえず歩いてみる。歩いたら何かあるかもしれないからと歩くが、一向に何も見えない。同じような光景が続く。
「ええ、マジで、なんで、これ、いや、ちょっと」頭の中で混乱と不安に襲われながら歩くが、何も変わらないから立ち止まる。そのままうずくまった。
おそらく1分ほどうずくまったがここであることを思い出す。
「そうだ、起こした人だ。誰か知らないが、2日酔いとか言っていた人。そいつを探せば、何が起こっているのかわかるはずだ」
そう思うと、ここで大声を上げる。「おい、誰だ、起こしてくれたのは!」大声を出したが、コダマのように響くだけで誰も反応がない。
「あの時だけ聞こえたのかな。ええ、でも、どうしようもないし」と、もういちど大声を出す。「起こしてくれた人!返事してくださーい」
その直後、突然後頭部に激痛が走る。「いた、誰だ。叩いたのは」と後ろを見たが何も見えない。
今度は、お腹に激痛が走る。「イテテ、なにこれ」そのあとも横からの激痛が、数回続く。
「た、助けて!」もう一度しゃがみ込む。しゃがみ込みながら何か落ちていない探す。すると、小さな石を見つけた。「これは」その時また前方からの痛みが走った。
「クソッ!」急激な怒りがこみ上げる。小石を手に拾う。そのまま目をつぶる。「目をつぶれば、相手の動きが読めるかもしれない」無になった。そうすれば何かの気配を感じる。
「無になろう、動きの足とを計算して、そうそう、いけるぞ、よし、いまだ」と思ったときに、ある方向に石を思いっきり投げた。
「ぎゃー」と悲鳴が聞こえた。「やった!」どうやら激痛を与えた存在に命中した模様。見るとそこには黒い塊がうごめいていた。大きさは人の半分くらいだが、黒いという以外見たこともない存在。
影のようで目や鼻口などは分からない。石の一撃が急所に当たったのか、それからは全く動かなくなった。
「こ、こいつなのか......だが、あんな声を出すのだろうか?」
しばらく様子を見ていたが一向に動かない。とはいえ触る勇気などはなかった。「とりあえず、どこかに向かっていくしかないな」と、その存在から離れて歩いていく。
5分くらい何事もなく歩いたが、そのころからだろうか?後ろから何か足音が聞こえる。「まさか」後ろを見た。すると、「あああああ!」圧倒的な速度で、黒い物体がこっちに来た。
「に、逃げろ!」慌てて走る。走るが恐らくどこかで捕まること間違いない。ただその存在は、まだ本調子ではないのか、先ほどのように目に見えない速度では無かった。苦しそうにも見えるが、それでも身体能力が違いすぎるのか、一気に差を縮めてくる。
「あ、あそこに!」今まで何の特徴もなかった空間に、割れ目を発見。深い割れ目で底がどうなっているかわからない。このままでは割れ目から下に落ちてしまう。
「いちかばちかだな」ここで、後ろを向き、迎え撃つ体制になった。存在は一気に向かってくる。運のよいことに小石があった。それを手にして相手に投げる。「うりゃあ」すると存在に当たり、「ぎゃあああ」と叫び声。だが、速度が衰えることなく後10メートルまで接近。その場で慌てて左によける。
「ぎゃああああああ」存在は、曲がり切れず、そのまま大地の割れ目の中に入り、断末魔の声を上げた。
「あ、あれ」気づいたときには部屋の中。ベッドの上で寝ている。「夢、か」悪夢にうなされていたのだろう。でも嫌な夢だった。
こうしていつものように服を着替え、出かける準備を終える。もちろん夢の時のような激痛はない。そのままいつものようにドアを開けた。
「あれ?」即座に鳥肌が立つ。ドアを開けると夢で見たのと同じ何もない荒野の風景が広がっている。「まさか!」さすがに、怖くてすぐに後ろを向けなかった。
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