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クリスマスの相手? 第1047話・12.10

「さて、どうなるかな。一緒にいたら凄く落ち着く気がしたし、まあ肩ひじ張らずに楽しめたらいいと思う」
 今日は週末だからと親友とふたりでバーに来て飲んでいた。そのときにクリスマスを過ごす話になって親友が言った一言がこれだ。
「え、ついに相手ができたの!?」私は、親友から突然そんなことを言われて、驚きのあまりワイングラスを落としかけてしまう。
「これはおめでとうと言うべきか」私は考えたが、なんとなく言わずに黙ったまま。

「うーん」親友は少し首をかしげると「そうなるのかなあ。うん」親友はあいまいな言い方をしつつワイングラスを口に運んだ。
 私は少し複雑であった。何しろ親友も私もパートナーには縁がない。中学の時からの親友だが、ずっとそういう相手に縁がないというか、そんな感じで過ごしてきた。お互いそういう状態だったから無理に相手を見つけなくてもよいと油断をしていたが、どうやらそれが間違いだったのかもしれない。

「そっか、まあ、よかったわね」私はできるだけ明るく振舞おうとしたが、そういう芸達者ではない不器用もの。ついつい思っていることが態度に出てしまった。私は大きくため息をつくとやや伏し目がちに視線を遠くに向ける。

「どうしたの?急に」親友が不思議そうな表情をしていた。「え、いや、なんでもない。気のせいよ」私は慌てて否定すると、その場でワインを一気飲み。「お代わりするわ」と、なんとなく飲んまないと気が済まなくなった。
「そう、良かった。じゃあ私もっと」

 こうしてふたりはワインをどんどん飲む。少し酔いが回ったかもしれない。「うん、じゃあ当日しっかり頑張ってね」酔ったことで、少し気分が楽になったのかもしれない。私は親友を応援する方に回る決意をした。

「え?」親友は不思議そうな表情で私を見る。だが私はもう開き直れたようだ。その現実を受け止められていた。「だったら、当日はいつもと違って服装から頑張らないと、それから、えっと」
 別に誰かと交際したこともないのに、想像だけでクリスマスのデートで相手の男性に嫌われないようにするにはどうしたら良いのか、親友に伝授しようとした。完全に想像だから正しいかどうかわからないが、少なくとも親友には私が陰ながら応援していることが伝わればよいと思ったのだ。

 しばらく不思議そうに見つめていた親友であったが、突然ワインを口から吹き出しかけるのを抑えたかと思うと、大声で笑った。
「あ、ハハハハッハハッハ!、ちょっと、ねえ、絶対変、勘違いしているって」「え?」私は我に返るように親友を見る。
「あの、私そういう相手いないから」とひとこと。
「で、さっきのクリスマスの話って」私はしゃべりすぎたのか、喉が渇いたから、ここでワインを飲む。

「そりゃ、あなたと一緒に楽しもって話よ、だって一番落ち着くもん」「あ、ああああ、そ、そういうこと」私は今にも穴があったら入りたい気持ちになった。なんという勘違い。恥ずかしさのあまりボトルのワインをまた注いだ。
「だよね、私たちはずっと同じ。クリスマスを女同士で楽しんで何が悪い!」私は酔った勢いで大声を出すと、親友も「そうだそうだ、キリスト教の祭なんだぞ、クリスマスは」と親友も大声を出す。

 そのまままたワインを飲み続ける。気が付いたらふたりでボトル2本も空けてしまった。
「楽しかったわ。やっぱりふたりで飲むのって最高ね!」親友は酔っている。少し体がふらつきかけていた。「そう、私もよ。いいわ。ずっと親友でいようね」そういう私もふらついている。お互いまともに歩けないから肩を組みながら歩いた。
 
 ワインバーから駅までの間、メインの通りはイルミネーションで輝いている。ふたりはややふらつきながらもしっかりした足取りで駅に向かう。
「ちょっと、そこで休憩しない」通りから中に入ったところに小さな児童公園があった。ずいぶん飲んだが、終電までには十分な時間がある。「そうね、休憩しよう」
 
 こうして児童公園のベンチに座るふたり。ちょっと飲みすぎたので、私はいつも持ち歩いているペットボトルの水を飲む。「飲みすぎちゃったね」私がつぶやくと横にいた親友が「でも楽しい、一緒にいると落ち着く」という。その直後、私の手を握ってきた。「え?」それもふつう握っているというより、何か愛情のようなものを感じる。そのまま親友は私に体をあづけてきたのだ。「え、これって、まさか!」 

 私は、親友が私のことを愛しているのではと直感した。親友は私の方にもたれながら両手で私の手をやさしく握る。「う、あ、で、でも」私は複雑だが、親友にそうされても全く嫌な気がしない。むしろ親友にそうしてもらった方が私も心が落ち着く気がしている。
「もしかして私たちって...…」私はなんとなくわかった。実は私と親友のふたりは愛し合っているのではないかと。

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