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404美術館 第1143話・4.7

「不思議な夢を見た」気が付けば体中が汗だらけになっている。悪い夢ではない不思議な夢だ。「しかし、どう表現してよいのだろう」まだ残っているかすかな記憶、見たこともない不思議な光景だ。

「いったい、あそこは...…」 どこかの建物の中で宮殿にも見えるし、広い座敷のようにも見えるが、とても現実世界とは思えない。遠くから光が差し込んでいるようにも感じた。いったい何がどうなっているか頭が混乱していたときだから、夢だと知ったときようやく全身の力が抜けていく。

「ま、いいか」ベッドから起きるかどうか悩んだ。もう少し寝ていた行きもしたが、寝たらまた先ほどの不思議な夢の世界に戻るような気がする。悪い夢ではない。けど不気味ではあったからもう二度と見たくはなかった。
「起きるか。ふぁああああ」
ひとつ大あくびをしてから起きあがる。窓を見ると今日は天気がよさそうだから出かけようと思った。不思議な夢の余韻を消すのにもちょうど良いようだ。こうして身支度を済ませると、起きてから1時間後に家を出た。

「あれ?」その時全身から鳥肌が立つ。見るといつもの外ではない。不思議な世界が見えている。「こ、これって!」すぐに思い出した。この世界こそ先ほど夢で見た不思議世界そのものなのだ。「ば、ばかな」慌てて家に戻ろうと振り返ったが、そこにはもう家がない。
「え、ええええええ!」怖さのあまり声に出して驚く。だけどその声がエコーのように響き渡るだけでしばらくすると消えてしまう。

「な、なんで、なんでだよ!」次は大声を出した恐怖を和らげようと必死だ。だが夢の時と同じ宮殿のような部屋になっているところで大声を出したから、先ほどと同じようにエコーのような反響音がしばらく聞こえると、やがて消滅する。

「...…」どうしてよいのかわからない。夢を見ないように起きてわざわざ外に出た。にもかかわらず夢と同じ世界が広がっているのだから。
「窓を見たときには、普通の外なのに...…」次に試してみた。これは夢を見ているのではと。だから顔を叩いたが痛い。それに意識がこんだけはっきりしているから夢とは思えなかった。
「こんなことなら、もう一寝入りすればよかった」途方に暮れる。
 どうせ見るなら夢で見たほうが良かったと思った。夢なら覚めたら元に戻れる。だけどこれは夢ではない。覚めている世界だから元に戻れるかどうかわからないのだ。

「歩くしかないか」不思議な建物内を歩く。立った場所から冷静に見ると左手は暗闇になっているが、右手は明るくなっている。「ならば右手かな」と思い、明るいほうを歩いていく。
「確か夢の世界でも歩いているうちに目が覚めて...…」ここでかすかな可能性にかけてみることにした。このまま歩いていけば目が覚めて部屋に戻れるのかと。

 だけどそんな気配はない。ただ歩くとどんどん明るいところが近づいているだけ。それに従って歩くしかなかった。ただ歩いていると不思議な宮殿のような建物、回廊かもしれないがその様子が冷静になって見れるようになってきた。「不思議な色彩だ」床、横の壁、天井、それらは独自の色彩でおおわれている。どう表現してよいかわからないが、夢で見たときは今この世界に紛れ込んだ直後では怖かったのに、今は怖くない。むしろ美しいと終えるようになっていた。

「まるで美術館のようだ。この世界を絵を書いたら面白いなあ」絵を描くのが趣味なものにとって、この不思議な美術館のような光景を記憶にとどめようと思いだす。夢として見たときは忘れたくて仕方がなかったのに不思議なものだ。
「あ、あそこにドアがある」ちょっと期待した。なんとなくこのドアを開けると元の世界に戻れるのではと。
ドアの前に到着した。「そんなにムシがよくはないかもしれないな」という気持ちも芽生えてくる。ドアを開けても同じ世界ならまだしも、もっと不思議な世界になったらどうしようかと。

「その時はその時だ」そう思ってドアを開けた。

「おお、こうきたか」ドアを開けた瞬間、目の前の光景を見て思わず苦笑いをする。そこは家の玄関を出た瞬間の風景だからだ。
 振り返ると家がある。よくはわからないが一時的に異空間に紛れ込んだのだろうか?わからないがとにかく元に戻れたようだ。
「まさかとは思うが」いったん家に戻ることとして、ドアを開けると全身から電気が流れた。何も変わっていない。

「そうだ、あの世界を」このとき夢で見て、それから現実?で見たあの不思議な世界、はっきりと記憶に覚えているあの美術館のような世界を描いてみようと思った。予定を変更して絵を描くことにする。

 こうして不思議な世界の絵が描きあがった。ふと上を見ると404という数字が視線に入る。だけどすぐにそれは目の錯覚だとわかった。「だったらこれ、『404美術館』とでも名付けようか?」とすぐに思いついた名前をタイトルにする。さて描いた絵「404美術館」は実際に夢や異世界で見たものかどうかはわからない。けどなんとなく描くための何かの力が働いたような気がした。


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