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師走が始まる 第1038話・12.1

「よし今度は、おいしい料理を食べている絵でも描いてみようかしら」
今日は仕事が休みの私は、ワッフルの上にのっている市田柿とそれにかけている白いヨーグルトを見ながら写真を撮る。
「うーんやっぱりヨーグルトは明治ヨーグルトR-1だったけ、これ市販品だしね。今度は手作りに挑戦ね」などと反省もしながらも、撮影のあと私の口に食べるとおいしことは確か。
 ここで着信メロディが鳴った。「あ、彼からだ」私はすぐに出る。
「あ、うん、わかったもう少ししたら出るから」
 私は手帳を確認した。今夜は映画を見る約束をしている。私は慌ただしく目の前のスィーツを食べ終えると身支度を整えた。リフトアップケアも忘れない。

「あ、待ってた?」すでに待ち合わせ場所に彼が待っていた。「うん、今日は定時で仕事終えたから。ちょっと待ったよ」ちなみに彼は東京水道関係の仕事をしていて、私はデーターセンターで働いている。
「あ、ごめん!寒かった」彼が震えているように見えた。今日から12月に入っている。寒いのは当たり前だ。
「いや、これがあるから」と、彼はポケットから使い捨てカイロを見せる。「それに俺は、水道に関する装置を作っているだろう。の溶接をしているからそんなに寒くないよ。多分夏の方がつらいよ」

 私では想像できないところで働いている彼、手をつなぐとわかるがごつごつしている男の手だ。
「今日映画観終わってからカレー南蛮を食べよう」「それって、ああ、あの店ね」彼は大きくうなづく。
「あそこは下仁田葱を使っているからな」
 彼は下仁田出身なので、郷土の野菜を使っているそのお店によく行った。「食べ物はともかく今日は何の映画見るの」私は映画のタイトルを知らない。これに関しては彼に一任。

「あれだよ」彼が映画館に到着すると指さしたもの。だが私はそれを見てちょっと固まり、大きく目を見開く。瞳の黄金比率が少し乱れたかも。
世界エイズの映画?」「そう、知っているだろう、こういういのちに関する重い映画が好きなこと」
 確かに彼はあまりエンターテイメント系ものよりも社会的な重い作品が好きである。それにしてももっとデートにふさわしいのってと思うが、ホラーじゃないだけましと思わなければならない。

 こうして映画館に入り作品を見た。

「うん、そうか、考えさせられるな」席を立つと彼は静かに低い声でつぶやいた。私は心の中で「そんな難しい映画見るからだ」と言いたくなるところを抑える。ロビーに出ると防災点検に関するポスターが見えた。作品内容が重いものだったから、こういう何気ないポスターを見ると、少し気持ちが落ち着く。

「さて、気分を変えて食事しようか」彼の声が少し高くなる。こうして映画館を出た。「12月か、今年もあと1か月ね」私がさりげなく話しかけると、「うん、年末か、ふう」彼はあまり元気がない。まだ映画を引きつっているのだろうか?
「年末仕事納めに大掃除するだろう。仕事終わりは鉄くずとか細かいのを掃除しないといけないし、何かと面倒なんだよな」

「それくらいいいじゃないの。私の会社なんてもっと大変、先輩の中に、掃除達人の美来さんていう人がいて、掃除になるとやけに張り切るの。ああ想像しただけで疲れるわ」気が付いたら私のテンションも下がり気味だ。

「もうやめよう!」と彼の声。
「気晴らしに美味しいものを食べような」「うん」私も先のことを考えずにすぐ横にいる彼の横に体を寄せながら、師走が始まり、イルミネーションが光り輝く夜のデートを楽しみむことにした。


※こちらの12月1日の記念日を使ってみ書いてみました。

世界エイズデー 映画の日 瞳の黄金比率の日
着信メロディの日 いのちの日
カイロの日 下仁田葱の日 カレー南蛮の日 手帳の日
防災点検の日 ワッフルの日 市田柿の日
データセンターの日 リフトアップケアの日
明治ヨーグルトR-1の日 そうじの達人美来の日
鉄の記念日 東京水道の日

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シリーズ 日々掌編短編小説 1038//1000

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