見出し画像

雨の日をたのしく 第1137話・3.23

「さて、寝よう」と一寝入りした時に、もう一度明日の天気を確認した。ここでため息をつく。「雨かぁ」明日は朝から一日中出かける予定がある。だけど一日雨と知るとより気持ちが萎えた。萎えたからといって予定を変えるわけにはいかない。

「やっぱり雨か」朝起きると、外は曇っている。雨音が聞こえた。それだけで気持ちが萎える。だけど起きるしかない。起き上がって淡々と準備を済ませると、傘をさして家を出た。

 この日の雨は小雨のときと、本格的に降っているときとがあるが、基本的に降っている。よりによってこの日は数か所外回りのアポを取っていた。傘を差しながら淡々とその予定をこなしていく。

 長靴を履いていなかったので、いつのまにか靴に雨水がしみこみ始めた。「ああ嫌だ」と、ますます不快になる。だけどある時から「楽しめないか」と思考を変えてみた。雨だからこその何か楽しみがないかなと。

 この日アポを取って、いろんな人と合っているいるとはいえ、ひとつの予定が終わってから次の予定までは結構な時間があった。ということで空いた時間を使って何かできないかなと考えてみる。といっても何をするでもない。結局カフェで一休みをしようということにした。

 カフェはカフェでも「テラス席があるカフェ」に行けば、雨の雰囲気が楽しめる。そう思ってテラスがありそうかカフェを探してみた。だが今日は一日雨が降っているから、テラスがあるカフェの多くは、そもそもテラス席を開放しない。「なんということだ」戸惑いながらもまた探す。
 結局30分くらい探したが、全然見つからなかったのであきらめた。普通のカフェに入る。入口に入って「はっ」とした。このカフェは奥が窓の席が多くあって、そのほとんどが開いている。そのうえテラスこそないが、窓際の席の窓が開いていた。これだけで雨の雰囲気が感じられそうだ。

 窓際の席に座り、窓が開いた先から雨がしとしと降っている様子を眺める。眺めながらドリンクを注文した。雨脚はちょうど強くなっていく。これはしめたもの。カフェを出るときに雨脚が弱まってくれればこれ幸いである。こうして強い雨脚を見ながらドリンクを飲む。ただ延々と降る雨、だけどぼんやり眺めているといろいろな想像が働く。そんなことをしていると、次のアポの時間が迫っている。時計を見て時刻を確認。

「そろそろ出よう」と思ったが、この時ふと予定表を書いた紙を床に落とした。それを拾い上げてみると驚く。「あ、もう今日の予定終わっていた」ことに気づく。思っていたアポの先は次の日の間違いだった。だったら後は変えるだけ。「ならもう少しいようかな。雨の日を楽しもう」そう思うと、ますます雨脚が強くなっている空を眺めながら、ドリンクをおかわりするのだった。


https://www.amazon.co.jp/s?i=digital-text&rh=p_27%3A旅野そよかぜ

https://www.amazon.co.jp/s?i=digital-text&rh=p_27%3A%E6%97%85%E9%87%8E%E3%81%9D%E3%82%88%E3%81%8B%E3%81%9C

------------------
シリーズ 日々掌編短編小説 1137/1000
#小説
#掌編
#短編
#短編小説
#掌編小説
#ショートショート
#スキしてみて
#雨の日をたのしく

この記事が参加している募集

スキしてみて

雨の日をたのしく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?