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とは 第1079話・1.15

「約束はどうなった」あれから10日が経過している。しかしあの時以来、あのような不思議な出来事の再来だ。「なぜ、約束...…とは?」10日前の悪夢を思い出す。

あの時、そう10日前の日、悪夢に見回された。
「あいつは、確か」ある建物内を歩いていると突然現れた謎の存在。青い服を着用しピンクのボディをしたそいつは、頭が涙のような形をしていた。髪は無く、ばんそうこうのようなものをつけている。笑顔を見せていて左手を挙げていたこともあり、友好的な姿勢をしているように思った。

「友好的なのか」と思い口元を緩めて笑顔を作る。だがそれに対して反応が無い。微動だにしないのだ。「もしかして人形か」確かに微動だにしていないどころか生きている風には見えない。単なる人形なら笑顔を使う必要はないだろう。そのまま通り過ぎようとした。だがその時、およそ50センチ未満に接近した時だ。

「約束はどうなった」「え?」一瞬声がした。周りを見ても誰もいない。いるのは生きていると勘違いしている人形だけだ。「空耳か」と思い前に進もうとすると、今度は先ほどよりもはっきりとした声で「約束はどうなった」というではないか?

 声のする方を見る。やはりこいつだ。見たところ生きているように見えないが声を出す。明らかにこちらに対して出したところを見ると、生きていないように見えて実は生きているのだろう。だが、ふたつほどの疑問がわいた。ひとつはなぜこの謎の存在は、理解できる言葉つまり日本語を話しているのか?日本語以外の言葉ではないことへの疑問がある。
「だから空耳だ!」と自分自身に問いかけてみた。

 だがその瞬間、存在と目が合った。見た目は笑顔だが、このとき点のような目を合わせたときの目力に恐怖を感じた。吸い込まれそうになり、鳥肌が立つ。このような状況ではっきりと三度目の「約束はどうなった」という言葉が発せられた。その言葉は今まで以上に重みがあり、耳から入った言葉は力ある言霊のように脳裏に焼き付く。
「間違いない、この存在から発せられた言葉だ」

 この存在が問いかけてきたことはわかる。だが「約束はどうなった」とはどういうことか?そもそも目の前の存在とは初めて会った。これはファーストコンタクトなのだ。にもかかわらず約束とはどういうことか?「約束とは?」いったいこの存在と何の約束を交わしたというのだ。わからない。記憶にないのだ。記憶が消された?そんな筈はない。だとしたら、いったいこの存在とは以前どんな約束を交わし、それに対してどういう行動をとれば、この存在は納得するというのだろうか?」
 とはいえ、特に3度目の目力は半端なくすごい。だからこのまま通り過ぎるととんでもない目に遭いそうな気がした。だとしても約束とは何のことか
が、わからないから答えようがない。

 ここで立ち止まり、もう一度存在を見る。こちらから意図的に存在に対して睨みつけるように見た。目力で対抗することで、こっちが有利に働こうと考えたのだ。するとどうだろう。向こうは対抗するどころか表情が変わらない。最初に見た人形のようになっている。「よし、今だ!」そう心の中に近い大きく深呼吸。そしてこういった。「約束とは?」
 だが、反応しない。しばらく待ったが全く反応しないのだ。しばらく見つめたが、やはり反応しないまま。だからそのまま通り過ぎる。
 すると「約束はどうなった」といった。速攻で「約束とは何だ?」と言い返す。すると何も言わない。そのままついに存在の横にきた「約束は」と言い出したのでそれにわざと声を合わせるように「約束とは何だ?具体的に言って見ろよ!」と大声で怒鳴った。

 やはり何も言わない。そのまま通り過ぎたが以降は、一切何も反応しない。存在の「約束とは」最後までわからなかったが、そもそも約束などと言うのが無いのと、もしあったとしてもこちらが問いただしても反応しないということは、どうでもよい約束なのだろう。

 こうして存在と通り過ぎていく。やがて建物から外に出たが、そのあとでわかったことは、これは夢だったのだ。
「変な夢だ」とそのときは思った。特に謎の存在との「約束はどうなった」とのやり取りは、鮮明過ぎて忘れることは無い。それから10日間は、何事もないし、同じような夢を見ることは無かった。

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 こうして10日後、たまたま用事があって来た建物の中、それは10日前の夢そのものだ。「正夢か?」一瞬全身に鳥肌が立つ。それもそうだ遠くに見えるもの。何かの置物だがその形を見てあの時の夢が記憶からよみがえって来た。青い服を着たピンクのボディ、見た目は笑顔で、左手を挙げている。頭は涙のようにとがっていて、髪は無く、ばんそうこうのようなものをつけているのだ。「あ、あいつだ!」思わず声に出しそうになったところを、慌てて口を押えた。

 ここで大きく深呼吸。そしてゆっくりと存在の前を通り過ぎていく。「夢と同じなら、あの言葉を言ってくる。即座に返答しよう」
 近づくが何も言わない。だが油断禁物である。さらに歩く。そして存在とすれ違う瞬間「約束はどうなった」とはっきりと聞こえた。まったく同じだだから即言い返す。
「なぜ、約束...…とは?なんだ、言ってみろよ!」

 心の中で相手に向かって叫んだ。その後はやはり何事も起こらなかった。


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シリーズ 日々掌編短編小説 1079/1000
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