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巨人の住む星? 第765話・2.27

「こりゃあ、すげえ星に来たようだ」とAは思わずうなった。Aが所属する宇宙調査隊は、遥か10万光年の宇宙域を調査している。そして見つけたひとつの惑星。生命体の有無を確認する任務のため、その星に着陸した。この星はしっかりと大気、さらに海のような水をたたえており、そのうえ酸素の配合量や重力など、宇宙船に積んでいたコンピューターで計算をすれば、人が住むのには最適なこともわかっている。

 ということで、星の中にある陸地に到着して、この星の実際の状況を調査することになった。
「着陸調査船には私とAが搭乗しよう。C副隊長、本船からのサポートを頼む」
 こうして宇宙本船から調査用の小型着陸調査船にB隊長とともに乗り込んだAは着陸調査船を操縦した。
「これだけの条件がそろっている以上、昼間の着陸は危険だ」同乗しているB隊長の指示により、着陸は夜になっている時間帯の場所を狙った。
 案の定、深夜の時間帯は暗闇に包まれており、この星に住む人の姿も見当たらない。「あそこの草の多い茂っているところに止めよう」こうして宇宙船は、B隊長の指示通りの場所に止まった。
「無事に到着完了」「よし、この星の明け方に調査開始だ。すぐ出られるように準備を」

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 やがて日が昇ってきた。幸いなことに雲がなく、天気が良い。「よし、出てみよう」
「隊長、この星のデータを見る限り、計器上では宇宙服無しでも出られそうです」Aの報告にB隊長「ならばやってみよう。ただ不測の事態が起きぬよう、本船との通信回路は開いたままだ」

 AとB隊長は宇宙船を着ないまま船外に出た。そして計器が示す通り全く体へのダメージがない。むしろ朝の澄んだ空気が、心地よく思わず深呼吸をするほどだ。
「よし、ここからが調査開始だ。まだこの星の生命体の文明の進化度などがわからないからな。下手に文明が進んでいるのであれば、我々の命が危ない。慎重に行くぞ」「はい、隊長」
 AとB隊長は、恐る恐る茂みから外に出る。草のようであるが、スケールが大きいのが特徴。「我が星であれば、木になりそうな大きさだというのに」隊長は、緑色の巨大な茎から伸びている植物を見上げた。

 やがて茂みから外に出ると、細い道が賽の目のようになっているところに出てみる。しかし壁と言っても腰の高さまでしかなく、その上を見渡せるのだ。「いったいこれは何のために」Aは首をかしげる。
「いくら星の大気における祖成分が同じだと言っても、生命体の文明の進化の過程にはズレがあるだろう。我々にはわからないようなことでも、この星の生命体には意味があるんだ」
 隊長が諭すように語る横でAは次々と撮影する。この撮影機材と上空で待機している宇宙本船とはつながっており、撮影と同時にその情報が本船に転送されるのだ。

 こうしてしばらく賽の目状になっている細い通路を歩くAとB隊長。「しかし、隊長、これ延々と続いていますね」「うん、ここでの調査はあまり期待の物はないかもな。いったん引き上げて、低空飛行でこの賽の目状の通路がどのくらい続いているのか調査する必要がある。賽の目通路の先に、この星の生命体が住む都市があるか否かも含めてな」
 こうしてAとB隊長は調査船に戻ることにした。まもなく着陸調査船の止めている茂みまで到達する。ここで大きな足音のようなものが聞こえてきた。「隊長!」「いよいよこの星の生命体の登場か。平和裏に話し合えたらよいがな」
 ふたりは足音をききながら、しゃがみこむ。そうすれば外から体が見えない。さらに利き手には、相手次第では使いざるを得ない武器に、手をかけていた。

 足音がますます大きくなっている。Aは中立ちの姿勢で足音の先の正体を見ることにした。そして顔色が変わり、すぐにしゃがみ込む。
「隊長、巨人です。我々とは10倍以上の大きさはあろうかという」「何!巨人が住んでいるのか。ではこの賽の目の通路はいったい」隊長は首をかしげるが、気になった隊長も中立ちになり様子を探る。すると巨人がいて、その横にやはり巨大な生命体が歩いていた。だがその生命体をリードのようなもので結んでおり、それを巨人が持っていて歩いているのだ。
「あれは巨人のペットか獲物でしょうか?巨大な犬のように見えます」
 Aの声に腕を組むB隊長。「巨人と巨犬の住む星か、うーんこれはまずい。いったん離陸しよう。着陸調査船の装備では、あの大きさの生命体には勝てない。本船にもどり今後を協議する」

 ふたりは茂みに逃げるように向かう。Aは一瞬巨人からの視線を感じた。しかしまともに戦えそうもなく、ただ逃げるしかない。どうにか茂みの中に隠れたとき、巨大な雷鳴のような音がした。「な、なんだ!」「隊長、巨人が引き連れていたもうひとつの犬のような生命体から発せられた模様」「で、どうなった」
 茂みからAは巨人の様子を探る。巨人がリードを持っているもうひとつの生命体が、どんどん遠くに向かって歩いている。巨人はこっちを気にしているようだが、やがてあきらめたのか立ち去った。

 こうして着陸調査船に無事に到着したふたりは、慌てながら即座に離陸。はるか上空にある宇宙船本船に向かった。

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「チャパリン、そんなに引っ張るな。今見たことのない虫がいたのに、おい、何怖がって吠えるんだ」こうしてチャパリンと呼ばれている巨大な犬に引っ張られる巨人。「あの虫、まる人のように二足歩行していた気が。だと世紀の大発見だったが、最近寝不足だから幻覚かもな。わかった。チャパリンもう家に帰るよ」

この巨人の正体、それは地球に住むごく普通の人で、朝一番に犬の散歩をしていただけだったのだ。


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