ちゃんくま

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【読書7】今日も誰もが水たまりで生きている/高瀬隼子著「水たまりで息をする」

第165回芥川賞候補作にもなった高瀬隼子さんの「水たまりで息をする」が先日文庫化されたということで改めて読んでみることにした。 あらすじはこちら 「すばる」でこの小説と初めて出会った時の衝撃は凄かった。 まず、ある日突然、水道水に嫌悪感を示しお風呂に入れなくなるという設定がとても斬新だ。けれども絶対にあり得ないかというと実際、世の中には様々な恐怖症があるわけだし、もしかしたらもしかして誰の身にも起こりうることなんじゃないだろうかと思わせる絶妙な設定。 そして、何と言っ

    • 【スキンケア】"メガ割"という魔物にやられて物欲モンスターが誕生する話

      Qoo10メガ割という魔物 Qoo10というショッピングサイトをご存知だろうか? ファッション、家電、生活用品などなど多様な商品を取り揃える通販サイトである。様々なショップが出店していていわばバーチャルなショッピングモールのようになっている。 使いやすいか?と言われると正直色々と思うところはあるし、実際使いこなせていない気もするのだけれど、韓国コスメが非常に充実しているのが気に入っていて数年前からなんだかんだでお世話になっている。 このQoo10を舞台に年に4回繰り広

      • 【映画】2024年5月に観た映画

        いろいろと気になる映画はあったものの今月は2本だけ。 ①青春18×2 君へと続く道 藤井道人監督が手がける日本と台湾を舞台にした ラブストーリー。 予告を観て何となく展開を察してしまったがとりあえず観に行ってみた。 ストーリー的には予想通りの展開だったし、何となく既視感もあるんだけれど、トータルで観ればすごく良くて「あぁ…観てよかったなぁ」という気持ちが心の奥底からふつふつと湧いてくるようなそんな作品だった。 まず何がいいってジミーが日本にやってきて尋ねる場所。鎌倉、

        • 【読書6】2024年5月に読み終えた本

          えーっと…今日から6月だそうです(白目) 大好きな5月はあっという間に去って行った。5月は12か月の中で一番好きな月かもしれない。 暑すぎず寒すぎず晴れの日が多い印象。夏至に向けて日が長いのも嬉しい。 最近は初夏のように暑い日もあるけれどクーラーはギリギリまでつけない。 代わりに窓を全開にして風に当たりながら本を読むのが好きだ。 そんなわけで5月の風に当たりながら気持ちよく読み終えた本のまとめ。 ★★★★☆ チョン・セラン著「フィフティ・ピープル」 珍しく韓国文学に手

        【読書7】今日も誰もが水たまりで生きている/高瀬隼子著「水たまりで息をする」

          【読書5】魂よ熱くなれ!/横山秀夫著「クライマーズ・ハイ」

          いまさら感MAXだが横山秀夫氏の代表作「クライマーズ・ハイ」を読み終えた。 今から約20年前に発表され、映画化もドラマ化もされた名作だ。 あらすじはこちら 著者の横山氏はかつて上毛新聞社の記者として日本航空123便墜落事故に遭遇している。その経験が本作のしびれるようなリアリティと圧倒的な熱量に繋がっている。 もちろん物語の中心には日本航空123便墜落事故があるが、それ以外にも親と子の関係、男同士の友情、報道のあり方、地方新聞の役割、新聞社内での派閥闘争などなど重厚なテー

          【読書5】魂よ熱くなれ!/横山秀夫著「クライマーズ・ハイ」

          【読書4】過去から続く今、未来へ続く今/柴崎友香著「百年と一日」

          とても素晴らしい小説に出会ってしまった。 しかし、どんな小説なのかと言われると非常に紹介が難しい。 柴崎友香さんの「百年と一日」は、場所が持つ記憶のようなものを綴った短編集だ。ある場所における百年を超える出来事がまるで一日の出来事を語るようなサイズで語られている。それぞれの短編に登場する場所や人々には必ずしも名前が与えられておらず、いつの時代の出来事なのかも、どこの国の出来事なのかも明らかではない。それぞれの物語にものすごい起承転結があるわけでもない。でもそこが素晴らしい。

          【読書4】過去から続く今、未来へ続く今/柴崎友香著「百年と一日」

          【読書3】ローカルから世界へ/中貝宗治著「なぜ豊岡は世界に注目されるのか」

          本書の舞台は兵庫県の北部に位置する小さな都市・豊岡市。 約10年間兵庫県議会議員として、その後約20年間豊岡市長として全身全霊で豊岡のまちづくりに携わってきた中貝宗治氏が綴る熱き"地方創生物語"だ。 目指せ!「小さな世界都市」 豊岡が目指すのは「小さな世界都市ーLocal&Global Cityー」(=「人口規模は小さくても、世界の人々に尊敬され、尊重するまち」)。 大都市との格差是正を目指すのではなく、世界に通用する「ローカル」を磨き上げて世界で輝くことを目指すことを選

          【読書3】ローカルから世界へ/中貝宗治著「なぜ豊岡は世界に注目されるのか」

          【読書2】芸術を愛する全ての人へ/森村泰昌著「生き延びるために芸術は必要か」

          コロナ禍を経験したアート好きであればつい手に取りたくなる一冊ではないだろうか。 本作はセルフポートレイト作品で知られ、「私とは何か」を追求してきた美術家・森村泰昌氏による"人生論ノート"である。 概要はこちら 本作で語られる内容はタイトルよりもやや広く、「生き延びる」をひとつの大きなテーマとして様々なテーマについて語る構成となっている。 本書に興味を持たれた方は、まず「はじめに」を読んでみていただきたい。 森村さんの基本的な価値観、そしてどのような思いで本作を書かれて

          【読書2】芸術を愛する全ての人へ/森村泰昌著「生き延びるために芸術は必要か」

          【読書1】いくつになっても大人になりきれない大人たちへ/角田光代著「三月の招待状」

          眠れない夜に思うことは いつからだろう。未来のことを考えるよりも過去のことを思い出すことが多くなったのは。 いつの間にか40になった。 非常におこがましいけれど、昔から何となく80まで生きるつもりでいて(などと言いながら今日死ぬかもしれないけれど…) そういう意味では今まさに折り返し地点に立っていることになる。 歳を重ねれば重ねるほどにあんな記憶やこんな記憶が自分の中のタンクに溜まっていく。 黒歴史は何となくタンクの底の方に沈殿して行き(させて行き)、そこそこの思い出は

          【読書1】いくつになっても大人になりきれない大人たちへ/角田光代著「三月の招待状」