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短編

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数分以内に読める怪談です。
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#ホラー

ショートショート【葬儀】

ショートショート【葬儀】

道端にカラスが脚を天に向けて倒れている。
確かめずともそれが死んでいる事が分かり、よく見れば黒い虫が集って目をほじくっている。
頭上には無数のカラスが渦を作り、死を悼む様に鳴き声をあげている。
「うわぁすげぇや」
すぐ脇に建つアパートの2階から笑いながら男が顔を出し、空を見上げて言った。
次の瞬間、その男目掛けて黒い竜巻が根を下ろした。

ボタン【オカルト】

「これ本当に押しちゃダメなんですか?」
「気持ちは分かる。だが、まだダメだな」

隣に座る部下がソワソワしながら聞いてきた。
この会話も何回したのか分からないくらいだが、正直私も早く押したい所だった。

飲食店とかによくありそうな楕円形で、土台が黒に押す部分が赤色のボタン。
これを押すのが私達の仕事だった。

頻度は多い時で週に3桁は押す事もあるし、少なければ1ヶ月押さない事もある。
他にやらなけ

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呪いの手紙【ホラー】

呪いの手紙【ホラー】

何故こんな手紙が貴方宛に届いたのか、皆目検討もつかないでしょう。両親にも恵まれ、順風満帆な学生生活を送り、社会人としてもキャリアがあり、奥さんに子供が2人もいる。それなりの苦労はありつつも贅沢や旅行で楽しい一時を過ごしていますね。しかし私はそんなあなたに死んで欲しい。可能な限り苦しみ抜いて一縷の希望に縋り、それにすら裏切られて絶望の中汚らしく惨たらしく死んで欲しい。あなたがこの世界にのうのうと生き

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虫【怪談】

虫【怪談】

友人の両親が営む実家兼食堂で昼食を食べていると、突然、友人が右手で顔の近くを払う様な仕草をした。聞くと「虫がいたみたいだ」と言う。
翌週、昼食を食べている時にまた手で払う動きをしたが、その時友人の顔の近くには何もなかった為
「虫はいなかったよ」
と伝えると、半ば無意識にやっていたのか、友人はハッと驚いた後に深刻そうな顔をして

「……いや俺も最初は虫だと思ってたんだけど、最近違うって分かったんだ。

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