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クボタマサヒコ
2020年7月26日 21:44
『僕はきっとこの温度を忘れることはないだろう。』中学生編 -4 ハードル跳びのエリアからひと際大きな歓声が上がった。ちょうどスタートしたばかりのようだ。状況を把握しようと順位を確認した僕は目を疑った。え…?! 先頭には、他校の選手に大差を付け、カラフルな装いの中で唯一、緑色のジャージと白いスニーカーをまとったやつがぶっちぎりでトップを走っていた。「す・・すげぇ、ノビじゃんっ!」まる
2020年7月22日 22:33
『僕はきっとこの温度を忘れることはないだろう。』中学生編 -3 (Another Story)時を少し戻そう。その日は朝から憂鬱だった。形ばかり在籍している陸上部で、初めて大きな地区の競技大会に出場することになっていたのだ。もちろん誰もやる気が無いうえに、吹き溜まりのような寄せ集め部員にとって、学校を出ての初遠征なんて抗えない遠足みたいなものであった。そもそも、顧問の担任(20代初赴任
2020年7月15日 19:51
『僕はきっとこの温度を忘れることはないだろう。』 中学生編 -2人生初のライブ、それは最高の体験でしかなかった。と言うより他に表現のしようがなかった。(ほ、本物だ…!)(音、デカっ…!)一人で来ていることなんて全くどうってことなかった。最初の一音が鳴った瞬間、全神経はステージに釘付けになり、遠く海を越えて演奏しに来てくれた彼らの一挙手一投足に、終始心を震わせた。あえて言うならば
2020年7月10日 21:34
『僕はきっとこの温度を忘れることはないだろう。』 中学生編 -1「ギターが欲しいっ!」それまでシンセのカタログばかり眺めていた僕は、取り憑かれたようにギターの広告を見漁るようになった。当時は、少年ジャンプの最後の通販みたいな胡散臭いやつばっかりで、まともなモノは、小学生がおいそれと買えるわけもなく、文字通り指をくわえて見るしかない日々が続いた。そうして僕は中学生になった。とい
2020年7月6日 23:58
『僕はきっとこの温度を忘れることはないだろう。』 小学生編 -612歳、また夏がやってきた。望まずとも課せられる呪いみたいな夏休みの宿題。今となっては『Back to the Future』のデロリアンの設計図を提出できる訳もなく、ひとり粛々と日々タフにやり過ごしていくしかなかった。少し時を戻そう。その年の4月。新学期、僕の学校では2年ごとのクラス替えがあり、小さな町ではあっ
2020年7月1日 22:33
『僕はきっとこの温度を忘れることはないだろう。』 小学生編 -5通学路のイチョウの木にはあざやかな緑が色づき、夏への扉は、その入り口をもう開きはじめていた。僕は来る日もひとり学校から帰ると、まっすぐ部屋にあがり、前にもまして狂ったように音楽番組を観あさっては、数少ないレコードを繰り返し回し続けていた。小学生の男子に処理し切れない感情なんて、ぜんぶ音楽に向けるしかなかった。そんな