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春を待つ

新しくアルバイトを始めた。

環境が変わることがすごく苦手な私は、
新しい仕事を覚えることにも、
新しい人間関係に馴染むことにも、
膨大なパワーを必要とする。

極度のあがり症で、初出勤の1週間前くらいからソワソワと落ち着かなくなり、前日には心臓がバクバク鳴り始め、家族との会話もままならないぐらいに緊張していた。

そんなふうになる度に、こんなことでどうする、と思う。
お布団の外は怖いことだらけなのだ。
この程度のことで怯えていてはちゃんと生きていけない。

心も、体も、当たり前に暮らしていくにはあまりにも弱すぎる。

昔、父からこんなことを言われた。
『胡桃にとって怖いことがたくさんあるのは分かる。
でも、それに打ち勝てるのは経験だけだよ。
いろんな経験を積んで、怖いものを一つ一つ減らしていくしかないね』

元々ほんの少しの勇気だ。
なけなしの勇気を削り取って使いながら、少しずつ前に進んで生きている。
でも歳を重ねるたび、心は強くなるどころか弱くなっていく一方で、
怖いことも苦手なことも辛いこともどんどん増えていくのに、勇気はどんどん減っていく。

歌うように、流れるように、
軽やかに生きていけたならどんなに楽かと、時々思う。

生きるのが下手な人はきっとたくさんいて、
私も生きづらい方の人間に生まれた。
それでも生きることをやめない限り、震える体で歩いていかなくては。

初出勤の前日、
不安と緊張に襲われながら、縋り付くように『漁港の肉子ちゃん』を観た。

漁港で焼肉屋を営むおじいさんの、方言だらけであったかいセリフが胸に沁みて、ぼろぼろ泣いた。

もう子供といえる年齢じゃないのは分かっている。でも心は年齢に見合わず、大人になれていない。
迷惑をかけることも、恥かくことも、傷つくことも避けて生きてきたせいで成長することも出来なかった。
だからもっと恥をかいて、傷ついて、大人になっていかなくてはと思った。
自分のことを許せるように。
自分のことを愛せるように。

はやく暖かくならないかな〜。
上着がなくても歩けるくらい。

近所の川沿いに連なる桜並木を歩きながら、
風を感じて、
春の匂いを感じで、
やわらかな日差しを感じて、
また『今日まで生きてきて良かった』と思いたい。

去年の春にそう思ったように。


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最近、新しい環境にあてられてこまめにnoteを開けてないのですが、余裕がある時は現れます🌷

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