「店長の仕事」面接のポイント
以前の記事“「店長の仕事」ポイントとなる4つのこと”では、
お店の器を作る、
中身を作る、
人を作る、
ファを作る、
の、4つの大きなポイントを紹介しました。
今回は3番目のお店の人、つまりスタッフづくりの入り口である、採用面接について、そのポイントとなる面接する側の心構え、用意すること、面接の流れ、注意点などお話しします。最後に質問例もいくつか挙げていますので、ご覧ください。
<面接はお見合い>
最初に抑えなければいけないポイントは、採用面接は、応募してきた候補者を品定めする場ではないということです。候補者と相対するときに、決してそのような姿勢で臨んではいけません。
採用面接とは、お見合いの一種だと思ってください。
一方的に採用する側が、される側を評価するのではなく、面接を受けに来た側も、「この会社は実際どんな会社だろう」、「このまま入社してもいいだろうか」と、思っています。
候補者は、事前に求人募集の条件や資料を読み、数ある会社の中から選んで応募してきています。しかし、これは採用する側が相手の履歴書を読んで、数多くの応募者の中から選んで面接に進んでいることと、全く同じです。「実際はどんなだろう」、「会って確かめよう」と、お互いに、同じように思っているのです。
応募してきた候補者が全員採用されるわけではありません。店長の仕事の“④ファンを作る”を思い出してください。ファンのつくり方は、なにもお客様に限った事ではないのです。固定客が何人いるかではなく、見込み客を何人抱えているかが店長のポテンシャルを図るうえで重要な項目となります。
たとえ不採用となっても、「あ~残念だったな~、気に入っていたのに」、「あそこで働いてみたかったなあ」、「今度あの店に行ってみよう」と思ってもらえるような対応を取る必要があるのです。
店長は日ごろから、いかにして多くのお客様にご来店いただくかということに日夜心を砕いていると思います。このことは、なにもお店の中だけのことではないのです。面接に来たすべての人に、お店のファンになってもらうことは、採用したスタッフを育てるうえでも、運悪く不採用となった方も将来のお客様となっていただき為に、最初に抑えておかなければいけないポイントです。
不採用となった候補者への対応は、一歩間違えると敵を作る結果となり、お店にとって大きなダメージともなりかねません。
逆に面接が終わって帰るときに、「いいこと教えてもらったなあ、受かるかどうかは別として、面接に来てよかった」と、思ってもらえるような姿勢を心がけてください。
決して上から目線な態度はしないでください。
<事前に用意すること>
(人材について決める)
新規採用することが決まったら、やらなければならないことがいくつかあります。
まず、どんな人を、何人、いつまでに入れるか、どんな条件にするか、ということを具体的に考えなければいけません。
会社の現状、将来設計をしっかりと見つめ、
その達成のためにはどんな人材が必要なのか、
体制を踏まえた上で何人くらい必要なのか、
それに合致した人材を入れるためにはどんな条件が必要なのか、
現状の相場はそのくらいになっているのか、
会社が出せる経費枠はどのくらいなのか、
現在いるスタッフの水準はどのくらいなのか、
それとかけ離れたものにならないか、
それらの溝を埋めるにはどうしたらいいか、
こうしたことをじっくり考え、話し合いはっきりさせておかなければいけません。
店長として、会社の方向性を再確認し、自分のビジョンにより近づけるよう交渉も辞さない覚悟を持って決めてください。
(媒体について決める)
そうした基準が決まったら、求人する媒体をどうするか決めることになります。
求人広告を出すのか、
ハローワークに申し込むのか、
人材派遣会社に問い合わせるのか、
知り合いの紹介を探すのか、
方法はいくつかありますが、それぞれメリットデメリットがあります。
求人広告は費用が掛かりますが、かける費用や媒体によって、応募してくる人材に大きな格差があります。広告を出す会社の特性をよく把握することが重要です。ハローワークは無料で手軽に利用できますが、応募してくる人材の幅はかなり広くなります。人材派遣会社も広告同様会社によって特徴があり、強い部門と弱い部門があります。担当者と求める人材についてよく打ち合わせし、人材派遣会社を選ぶこともいい人材を確保する近道です。知り合いの紹介は一番信頼できる方法です。しかし、タイミングが合わなければどうしようもないので運次第かもしれません。これらの複数の手段を使うのが効率的でしょう。
<面接の進め方>
(問い合わせからすでに始まっている)
募集を開始すると、ほどなくして問い合わせが来ます。メールの場合は店長が見るでしょうが、電話の場合も店長が受ける方が望ましいです。電話口での話しぶりや問い合わせ内容、挨拶の仕方は、合否判定の大きな参考になります。電話の切り方も要チェックです。しゃべり終わってすぐにガチャンと切られたらNGですね。かかってきた問い合わせ電話を店長に取り次ぐ時や、不在時の対応の仕方、お伝えする内容、お聞きしておく項目、こちらからかけなおすのか、かけなおしてもらうのか等は、あらかじめ全スタッフに共有して、不手際の無いようにしましょう。その際に電話を受けたスタッフに、印象等その時の様子を確認しましょう。
(履歴書を読み込む)
それと並行して履歴書も送られてきます。
受け取る側としては、手書きの方がベストですね。字のきれい下手ではなく、丁寧に真剣に書いているか、乱暴にいい加減に書いているのかを見ます。これだけで候補者の意気込みを読み取ることができます。
最近ではパソコンで打ち込んで、印刷したものを送ってくる方がいますが、字が下手なのを気にしているのか、ただめんどくさいからなのか、とにかく意欲的でないことは確かで、マイナスイメージしかわきませんね。自分を売り込むといったことの認識が低い、或いはそのように考えていない、ということになります。
内容よく読んであげましょう。学校で教わったような、ネットで拾ってきたような定型文では、だめです。自分のことがきちんと書かれているか、訴えるものがちゃんとあるか、よく考えられているのか否かをじっくり読み込みましょう。名前と連絡先しか書いていないような、それに近い履歴書なら、面接するまでもないでしょう。
(対面での面接)
そして実際に候補者と会う対面での面接となるわけですが、募集することに決まった時に描いた欲しい人物像に合わせた質問と、履歴書を読んだうえでの質問の両方用意するといいでしょう。事前にいくつか、その人用の質問をメモして面接に向かいます。
その前に、こちらの身だしなみももう一度鏡を見てチェックしましょう。
早めに面接会場に入り、入ってくる候補者の姿勢、態度、身だしなみ、髪型、歩き方、お辞儀の仕方、挨拶の仕方、名前の言い方、場所や時間が守られているか、等々しっかり確認します。
面接での質問の具体例は後述しますが、こちらが知りたいポイントは、
“どんな特徴を持っているか”、
“どんな能力があるのか”、
“どのように貢献できるのか”、
いったことです。これらの要求にマッチした人物なのかどうかを見極める作業です。
自己紹介の時に、きちんと自分を表現できているか、
自分のことをしっかり伝える力はあるのか、
話し方は堂々と自信に満ちたものか、
志望動機は具体的で会社のことをよく調べたものになっているか、
おざなりの抽象的な表現になっていないか、もしそうなら具体的に突っ込んでみる、
こちらが求める能力や経験は、どの程度持っているのか、
何をやりたくて入社してくるのか、
それはこちらが求めるものを一致するのか、
こちらの質問をしっかりと理解し、適切で明確な受け答えが出来ているのか、
その際の表情、目の動き、身振り手振りはどうか、
こちらの目をちゃんと見て、落ち着いて話しているか、
コミュニケーション能力は備わっているか、
入社後しばらくしてから、「こんなはずではなかった」などと思われないように、何を求めているのかをしっかりと探り、アンマッチしていないかをチェック、
などなど、こうしたことを判断していきます。
面接の流れとしては、まず最初に相手の緊張をほぐしてあげて、話しやすい環境をつくることです。
質問するときは、決して上から目線にならないように意識する必要があります。
前項でもお話ししたように、対等の立場であることを忘れずに、相手にもこちらのことを理解してもらうようにします。
会社の社会的意義や目的を話すのもいいでしょう。社内の和やかな雰囲気を話すのもいいでしょう。又、社員になった場合のメリットを伝えることもいいかもしれません。こちらの魅力を伝えるのです。向こうもこれから入社する会社の品定めをしているということを忘れないでください。
更に言うと、採用不採用にかかわらず、こちらのファンになってもらうことが最も重要なことです。
(面接で顧客づくり)
面接は顧客づくりだと思ってください。話しすぎないよう気を付けて自社をアピールしましょう。
「いいこと教えてもらった。次の面接では気を付けよう」、「その会社受けてみてよかった」、「不合格だったけど、どこが足りなかったんだろう」、「でも今度あのお店に行って買い物してみたくなったなあ」、面接で嫌な思いをさせるのではなく、終わって帰るときに、「来てよかった」と、何か得るものを渡すことで、より有意義なものになります。
判断する際は、固定観念に囚われてはいけません。フラットな気持ちで候補者を見てください。
特定の特徴にこだわらず、いろいろな個性を選ぶことも多くのお客様を得る鍵です。
そして、一番のポイントは
“意欲的かどうか”、
“前向きかどうか”、
“目が輝いているかどうか”
と、いうことになります。ここをしっかり押さえておけば素敵な人材に出会えるでしょう。
<オンライン面接>
最近、特にコロナ禍以降対面ではなく、オンライン形式でパソコンの画面上で面接することがあります。どうしてもやむを得ない場合を除いて、接客業のスタッフを選ぶ採用面接で、直接会うことの無いリスクは、今までの経験上、非常に高いと言わざるを得ません。今まで述べてきたような、様々なチェックをする場面が非常に限られてしまい、正しく判断することが難しいからです。
出来るだけ、この形式は避けるようにしましょう。
実施する場合は、パソコンの接続状況を事前に確認し、早めに行って接続し、トラブル時の代替案も考えておき、面接時はこころもちゆっくりはっきり話すようにすると聞き取りやすくなります。
<質問の具体例>
はじめまして、私は**です。今日はどうぞよろしくお願いします。
最近寒暖差が大きいですが、体調崩したりしていませんか?
夕べはよく眠れましたか?
電車は遅れていませんでしたか?
ここまで迷わず来れましたか?
いいバッグをお持ちですね、どこで買いましたか?
今日の**はとてもよくお似合いですね。
**にお住まいということですが、かなり時間がかかったのではないですか?
あなたのセールスポイントは何ですか?
**がお得意のようですが、いつごろから始めたのですか?そのきっかけは?
いちばん打ち込んできたものは何ですか?
なかなかいい趣味ですね、一度教えてもらえますか?
何か得るものはありましたか?
何かエピソードがあればお話ししてもらえますか?
とても健康そうですが、なにか健康管理法はありますか?
打ち解け合える友人は何人くらいいますか?
友達はあなたのことを何と言っていますか?あなたの役割はありますか?
同業の他社も募集しているようですが、当社を受けようと思った理由は何ですか?
入社が決まったら、どのような仕事がしたいですか?希望はありますか?
将来のビジョンとか目標はありますか?
当社の業務と同じような経験はありますか?
**の専門的な知識はありますか?
接客販売では、何が一番大切だと思いますか?
何かアルバイトをしていましたか?
どんな目的で?何か学ぶことが出来ましたか?マイナスだったと思う事はありますか?
**デパートにおられたようですが、どんな時期に、どんな商品を、どんなお客様が買っていましたか?
前職では**のプロジェクトにいたということですが、あなたの役割について教えてもらえますか?
当社の仕事では、**のようなつらい仕事もこなさなければいけませんが、あなたなら、どうやって克服しようと思っていますか?
これなら人に教えられるということはありますか?他の人に負けないということは何ですか?
一番誇りに思うことは何ですか?
一番感動したことは何ですか?
一番悲しかったことは何ですか?
一番がっかりしたことは何ですか?
なにかを決めるとき、人に相談しますか?自分で決めますか?
転職を考えるようになったきっかけは何ですか?
前職で「こんな制度や条件があったらよかったのに」と思う事はありますか?
前職と比較して、当社を受けようと思った決め手は何ですか?
前職とは全く違う業種になりますが、そうしようと思った理由は何ですか?
(NGな質問)
避けなければいけない質問例
本籍や出生地に関すること
家族に関すること
家庭環境に関すること
住宅事情に関すること
生活環境に関すること
宗教や政治に関すること
思想に関すること
労働組合の加入状況等に関すること
学生運動に関すること
購読新聞に関すること
(NGな回答)
最後に何か質問はありますか?といったときに、休みのこととか、福利厚生のことを聞いてくるのは仕事をするやる気に疑問があります。
又、前職の退職理由の説明の中で、だめだと思うものは、
自分の時間がなかったので
自分の性に合わなかったので
人事異動で、或いは多すぎて
前の会社は金儲け主義で、
上司とウマが合わなくて
社内で派閥があって
社内の人間関係で
面接時の説明と違っていて
そうではなく、新しくチャレンジしたいからといった積極的なものを期待しましょう。
ざっと思いついた具体例を挙げてみました。
今回は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。良かったスキ・フォローをしていただけると嬉しいです。次回も「店長の仕事シリーズ」を予定しています。こちらも見に来てください。よろしくお願いします。
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