英語教員養成特修ゼミナール 2023年度 卒業論文発表会&神奈川大学英語教育講演会
神奈川大学外国語学部英語英文学科です。2024年1月27日(土)に、英語教員養成を軸とする久保野ゼミ・高橋ゼミの卒論発表会と、神奈川大学英語教育講演会がおこなわれました。英語教育講演会では、武庫川女子大学の村上加代子先生をお招きし、「(支援を要する)児童生徒への英語の読み書き指導-英米でのdyslexiaと子ども達への指導もふまえて」のテーマでご講演いただきました。
久保野ゼミ、髙橋ゼミの 2023年度 卒業論文発表会
久保野ゼミ、高橋ゼミの4年生がそれぞれ発表をおこないました。
2023年度 神奈川大学 英語教育講演会
引き続き、2023年度「神奈川大学 英語教育講演会」を開催しました。今年度は、武庫川女子大学の村上加代子先生をお招きし、「(支援を要する)児童生徒への英語の読み書き指導-英米でのdyslexiaと子ども達への指導もふまえて」のテーマでご講演いただきました。参加者は本学の教職課程の学生はもとより、他大学の学部生・院生、小中高の現職の先生方、また、他大学の先生方も含む153名(学生56名・一般97名)のご参加をいただき会場は「満員御礼」となりました。
英語教師の多くは、英語が得意で大好きで教師になる人が大半ですので、自己の経験から「単語のスペリングなどは努力すれば誰でもできるものだ。覚えられないのは、本人の努力不足で怠けているからだ」と考え、「テストすれども指導なし」「叱責/激励すれども指導なし」の人が多いのが実態ですが、英米の小学校ではnativeの子ども達に丁寧に何年もの時間をかけて指導しています。単語の綴りが覚えられず、テストで点が取れないのが、入門期の中学生の躓き、英語嫌いになる最大原因ですが、その大半は教師による「落ちこぼし」と言わざるを得ません。村上先生には小中学生への実際の指導も通した臨床研究のご体験もふまえてUDL(Universal Design for Learning)について、熱く語っていただきました。
以下、英語教員養成特修ゼミ生(次年度入ゼミ予定の1年生を含む)の感想の一部です。
<1年 Aさん>
英語教育講演会で村上先生のお話を聞いて感じたことは、一番にたくさんの学習者がいる中で誰かが当たり前に思っていることが人によっては違うということだ。例えば、アルファベットの形を覚えるのが難しいという内容で、私はアルファベットを勉強した時に困ることはなかったために、自分が教える立場になった時、今回のお話を聞いていなかったら、きっとなぜできないのかわからずに、「頑張って覚えなさい」としか言えないだろうと感じた。そして学習に対して何かしらの障害を持つ人は学力を向上させるのが難しいというマイナスな固定概念を今まで持っていた。それは全くの間違いで、方法次第で力を大きく伸ばせることを知った。まず理解している子の顔だけを見ないことが一番に能力向上の助けのきっかけになると思った。学習方法の内容の中のデコーディング指導などは、ただ頑張れと言うのではなくしっかりと方法を提示して学習者に寄り添いながら教育できる素晴らしいものだと思った。私が将来教員になったら活用していきたいと思った。
<1年 Bさん>
今回村上先生の講演会を聞いて、日本では特別な支援を必要とする生徒に対しての支援が不十分であることが分かった。特に英語の分野はほとんど手つかずの状態であることが分かった。また、日本の教育方法では文字認識をベースに語彙・単語、文法と構造、流暢さ、読解の順番で習得するのでディスレクシアの人のことを全く想定していないため、音韻認識とデコーディングの部分をより強化して指導していくことが必要だと分かった。読み書きのための聞く力を育てるためにいきなり単語から教えるのではなく音素の部分から細かく分けて発音させることによってより良いデコーディング指導ができることが分かった。先生が仰っていたように選択肢を増やすことが大切であり、字の書き方ひとつをとっても右利きの人のアルファベットの書き方だけではなくアメリカでも行われているように左利きの字の書き方の指導や左利きが書きやすい書き順の指導を行うことが大切だと分かった。今回学んだことは今後の模擬授業などで生かしていきたい。
<2年 Cさん>
今回の村上加代子先生の講演を通じて、学習障害を抱える子どもたちへの英語教育においての様々な躓き方やアプローチの仕方について学ぶことができた。学習障害といっても児童によって学力や躓き方は全く異なり、個々の課題にあった英語指導をする事が重要だと知ることができた。特にディスレクシアの児童に対する指導法がとても興味深かった。英語はディスレクシアが世界で2番目に多く出現するという話には驚愕した。確かに英語は音声と文字との規則性は低く、スペリングを正しく書くことや単語を正しく発音することを難しく感じる児童も多いと思われる。そのような児童に対して村上先生が行っていたデコーディングとエンコーディングの指導法が特に参考になった。実際に指導する様子の動画を見て、児童が正しく発音出来ている様子がとても印象的だった。他にも様々な指導法について学ぶことができ、これらの指導法は非常に参考になり、将来の学習や指導に役立てていきたいと感じた。
<2年 Dさん>
今回の英語教育講演会ではdyslexiaという言葉やインクルーシブ教育の意味について初めて知った私にとってとても興味深い内容であった。障がいの「がい」は「害」の字ではないというように、障がいは個人に問題があるものではなく、障害だと思われてしまうような環境を作ってしまっている社会に原因があるという言葉から、全ての人が同じ環境で生きやすいような手助け(UDL)が教育にも必要だと改めて感じた。障がいのある児童などに対応する時には長期的かつ継続的に段階をふんだアプローチが必要であることから、教師一人ひとりが障がいについて理解していなければならないし、全員で協力して対応していくことが求められる。その子ども達が躓いてからではなく、躓かないように私たちが普段から指導していくことが必要である。クラスの中でこぼれてしまう生徒を作らないためにも、教師の声掛けや支援体制が大切になってくると分かった。
<3年 Eさん>
村上先生の講演会に参加して感じたことは大きく2つあります。1つ目が生徒の躓きを回避する授業を設計することです。大学の模擬授業では、あらかじめ生徒がこのくらいのレベルならできるだろうと予測して授業を作る。しかし、実際に生徒全員ができるとは限らず、人によって躓く原因が異なる。そのために、教師は授業を計画する時には、生徒が間違いやすい箇所はどこで、わからない生徒にはどう対処するか、また必ずしもやり方を1つに定めずにその生徒に合った教え方を見つけることが重要だと思いました。2つ目は、語彙力があるのに単語が読めない生徒の対処法が印象に残りました。原因は日本語が母語の英語学習者は音声よりも単語の綴りを意識して勉強しており、英語のフォニックスなど、音声に触れる機会が少ないことが挙げられました。まさに生徒は教わっていないこと、練習していないことはできないということを思い出しました。まずはフォニックスを用いて音声で慣れ親しんでからスペリングの指導に移る、またデコ―ディングやエンコーディングを使用して音声を文字に変換する練習が効果的だと思いました。最後に教育実習ではできる生徒だけを見るのではなく、できない生徒に寄り添った授業が展開できるようになりたいです。
<3年 Fさん>
塾で教えている生徒の中にも、発音は分かるがスペリングが分からない、文字を読めるが発音できない生徒がよくいる。ついこの間も単語の書きのテストで writeをwirteと書く生徒がいた。その原因はフォニックス指導や音韻を意識させる指導がされていないからだということが分かった。writeの場合は、wrの音が分かるような指導をすれば良いのかなと思った。講演の中で一番印象に残ったのは実際のデコーディング指導の映像である。無意味語で音素を繋ぐ練習をして、文字数を増やしていき、初見の単語や文章でもスラスラと読めている児童の姿を見て、私もこれを真似しながら読みの指導をしたいと思った。まず読み方のルールを教えることで後の語彙、文法、読解のスキルを鍛えることが出来ると思うし、児童・生徒が自ら学んでくれるようにもなると思った。英語に躓いている人の中には、学習障害のせいではなく日本の英語教育のせいで躓いている人も多いことが今回の講演でよく分かった。他にも学習者自身ではなく指導のせいで英語を苦手とする人はたくさんいると思うので、そのような人を作らないように英語を指導していきたいなと思った。
<4年 Gさん>
村上先生のお話は、小学校や中学校の個別支援級でLDの生徒と関わっている私にとってとても興味深く、もっと自分で勉強してみたくなるようなお話だった。教員や保護者が、LDに気付いてあげているかどうかで、生徒が理不尽に怒られてしまうのか、それとも適切な指導によって生徒の困り感をなくすことができるのか、「天と地の差」であると感じた。「できている子の顔を見て授業を進めていませんか?」という先生の問いかけが私にとって一番ずっしりした言葉であった。どうしても、授業をテンポよく進めたいから、そうするためのスクリプトを作っているし、頭の中で描かれているものは理想の授業である。躓いている子ほど、声に出せず、一人で悩んでしまうであろう。ただ、診断が下りる前は、どこまでが勉強の苦手な生徒で、どこからがLDなのか、素人からすれば判断の境界線が難しいところでもあると思う。また、疑問に思ったのは、例えばフォニックスやデコーディングを全体に向けて丁寧に指導すべきなのか、それともLDの生徒だけを取り出して行うべきなのか、ということである。フォニックスをあれだけ丁寧にすれば、ご講演で紹介のあった生徒のように、驚くほど成長する。しかし、それを全体でやる時間は中学校の指導時間には組み込まれていないし、もしやるとしても今は英語に触れ始めた小学校の早い段階からやるべきなのではないか、と感じた。ただ、普段の授業の中でも、左利きの生徒に対する押すではなく引く書き方の提案(英語圏では左利きが要注意というのは初めて聞き、驚いたし、日本語も書き順にとらわれなくてもいいのではないか、と感じた)や、書字障がいがあるのであれば、タイピングにするなど、学習方法の選択制というのはどんな場面でも有効であり、どんな場面でも生徒に様々な選択肢を与えられるようにし、そして、どんなやり方がよいか生徒にも聞いてあげたいと思った。
記:久保野雅史・高橋一幸
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