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第25回神奈川大学英語教育研究大会ー教育現場で活躍する卒業生 ー

 2020年のコロナ禍以来、休止していた英語教育研究大会でしたが、昨年度は筑波大学名誉教授の安井泉先生をお招きしての講演会のみで縮小復活、そして今年度は4年ぶりに小中高の現職教員のゼミ卒業生をお招きして第25回大会を開催しました。コロナ禍の間は、多くの学会が苦労しながらもオンライン開催で何とか活動を維持してきたのですが、それに慣れてしまったためか、対面開催に戻しても参加者が以前通りには戻ってきてくれず、どの学会でも参加者数の減少に悩んでいるところです。そのような中、12月23日の第25回研究大会には、年末の土曜日にも関わらず、みなとみらいキャンパス1階の米田吉盛記念ホールに、神大の現役学生や卒業生、他大学の学生や小中高大の先生方、教育委員会指導主事など計151名の方が集い、令和新時代に求められるより良い学校英語教育について熱く語り合いました。

150名を超える参加者がありました

 高校授業者は久保野ゼミ出身の市川隆則さん(2017年度卒、神奈川県立麻溝台高等学校教諭)、中学校授業者は髙橋ゼミ出身の佐藤千鶴さん(2007年度卒、山形県鶴岡市立鶴岡第四中学校教諭)、小学校は髙橋ゼミ出身の清川直美さん(2000年度卒、横浜市立斎藤分小学校教諭)でした。最後はNHKラジオ「英語会話」等の講師も長く務められた松坂ヒロシ先生(早稲田大学名誉教授)による「英語発音:視覚と触覚を働かせる指導」と題するご講演でした。久保野ゼミ・髙橋ゼミの2・3年生が受講者となり、松坂先生から発音を指導して頂きました。

松坂ヒロシ先生による英語発音指導

以下、神奈川大教職課程学生の感想です。

・1年生
 この会に参加し、現場で働いている先生方がどのような点に目を向け、何を考えて授業を行っているのかということについて学ぶことができた。
小・中・高等学校のすべての授業がほとんど英語で行われているということに驚いた。さらに、英語で授業を進めていくために必要なスライドなどの資料、ジェスチャーを使うこと、新出単語を日本語で説明するのではなく、既出の類義語で置き換えて英語で説明するなど、授業の中にちりばめられている工夫の多さに驚いた。そして、いちばんに感じたことは教材研究の大切さである。授業を公開してくださった三人の先生方の授業の導入は、自分が今まで受けてきた授業にはない形であった。あのような導入を行うためには教科書の内容について深く調べる必要があり、多くの時間がかかると考える。実際に自分が生徒の気持ちになって授業を見ていたが、身近な話題の導入があることによって、自分のことのように教科書の内容について考えることができ、思考力の発展につながると感じた。大人からの目線だけでなく、生徒の目線から見るとどのようなことに興味があり、どのような内容を扱うことによって生徒たちの心を動かすことができるのかを知るためにも、日常の生活にある授業に使うことのできる情報に目を向けていきたい。また、2年生からはさらに専門的な教育法についての授業が始まっていくため、今日学んだことを掘り下げていきたいと考える。

・2年生
 3人の先生の授業、それから松坂ヒロシ先生の発音指導など、タメになるプログラムが盛りだくさんだった。1人目の高校の市川先生は、缶パンを題材と取り上げている本文の授業をしていた。この題材はSDGsと関連していたため、生徒が自分事として考えるのには少し難しい題材であると私は思った。私は実際に高校生の時救缶鳥プロジェクトを学校で行っていたため、このような題材が来た時に自分もやったと思うことができるが、普通に缶パンさえも知らない生徒がいるのではないかと考えると、どこから授業を始めるかが大事だと思った。
  2人目の清川先生は小学校で英語を教えている先生だった。地球の環境を守るために、私たちにできることを考えるという小学生には難しい題材だと思った。しかし、先生がイカと間違ってゴム手袋を食べてしまい死んでしまった鳥の写真を見せることによって、生徒は衝撃を受け、考えるようになるのだと思った。しっかり教材研究をすることにより、教科書に載っていないが適切な題材を準備することができる。これが教科書で教えるということなのだと改めて感じた。
 3人目の佐藤千鶴先生はチョコレートが作られている背景についての授業をしていた。100円と300円のチョコレート、どちらを買う?という話題から入り、カカオ農家の現状について説明したところで、最後にまた同じ質問をしていた。それでもなお100円の方のチョコレートを選ぶ生徒がいる中で、それ以外にも、貧しい人たちを助ける方法は何だろうと疑問を投げかけていた。生徒が考える視点を与える先生の発問力が問われるところだと感じた。
松坂ヒロシ先生の発音指導を受けて、今まで難しく考えていたことでも、少し変えることにより発音できた。将来英語教員になった時に、間違った発音を教えないように、これからも努力したい。

清川直美先生  
佐藤千鶴先生

・3年生
 
今回の英語教育研究大会でも日々の学びにつながる新たな学びを多く得ることができました。
 斎藤分小学校の授業実践では、小学校の段階で中学校で行われているような英語での題材導入が行われていることに驚きを隠せませんでした。ALTと清川先生の2人のやり取りやチャンツ、歌などから得られる豊富なインプットが生徒にこのような題材導入を可能にしているのだと思いました。「中間指導」という点でも多くの学びがありました。タブレット端末を用いてリアルタイムで生徒に指導することで生徒のモチベーションを保ちながら、そしてそれと同時に周りの生徒にも共有することができ、尚且つ間接的に指導することができているのだとわかりました。あのような環境下で育った小学生が中学校以降の英語でどのように成長するのか気になります。
 中学校での授業実践では、我々後輩が目指すべき一つの授業を見たように思いました。特に私は佐藤先生が話すTeacher Talkがとても印象的でした。授業内での生徒への指示出しと本文内容の導入時の語り方は、とても分かりやすいもので、接続詞の言い方など生徒一人一人の理解を促進する導入でした。私も一つひとつの語を大切に語りたいと強く思いました。

・4年生
▶ 市川隆則先生の高1授業: 今回私は、卒論のテーマでもあったリスニング指導に重点を置いて授業を視聴した。生徒に音声を聞かせる前に、Mr. Akimotoはbakerであることなど、知っておかないとリスニングが困難になるような背景情報をあらかじめ与え、リスニングポイントを提示してから聞かせていたため、レディネスができた状態で生徒が音声を聞くことができていたのが印象的だった。

▶ 清川直美先生の小6授業: 普段、斎藤小学校の英語授業にボランティアとして授業に参加させていただいているが、改めて、清川先生がやられている授業は良い意味で小学生相手ではないと感じた。ただ、レベルの高い授業はやっていても、先生が独走しているのではなく、児童もきちんとついてこられている。3年生からスモールステップで発展させていて(同じテーマを繰り返し扱ってもアプローチの仕方が違う)、Inputの量、生徒のintake、outputがバランスよく釣り合っていて、児童理解をきちんとしている(去年の6年生と今年の6年生でも進め方を児童の実態に合わせているので違いがある)からこそ、授業が成り立っている。また、それを一人でやることは簡単かもしれないが、ALTや私たちボランティアにもきちんと役割を与え、ただ発音する人、見回りする人になっていない、というのが感心すべき点であった。私が中学の教員になったときに、このような児童が中学校に上がって英語の授業を楽しみにしていると考えると、その期待を裏切らないようにがんばらなきゃ、と思わせてくれるような授業である。

▶ 佐藤千鶴先生の中3授業: まずは、市川先生のように、リスニングポイント、リーディングポイントを明確に与えているのが印象的だった。また、最初の質問が最後にもう一度現れて伏線回収になっているため、授業のまとまりが感じられた。私だったら、最後はみんな300円のfair-trade chocolateを選ぶと想定して授業を作って終わってしまいそうだが、そこで終わらず、次の質問に繋げること、そしてその繋げ方(生徒には高いから…)に授業構成の緻密さが感じられ、最後の質問も、クリエイティブな発想を求めるものだったので、「思判表」の活動の正解を見られたような気がした。生徒の発言を即座にリキャストしていたのも佐藤先生の指導力の高さを感じた。また、他の先生や髙橋先生からのコメントで、声のトーンについて言及されていたが、私は、教育実習で声の緩急がないとアドバイス頂いていたので、佐藤先生のように、ただ覚えたスクリプトを声に出すだけでなく、緩急のついた、生徒にどこが大事か分かりやすくなる声の出し方を身につけたいと思った。

▶ 松坂ヒロシ先生のご講演と実地指導: 分かりやすい発音指導だった。「ユニバーサル・デザインの誰にとっても分かりやすい発音」という言葉も興味深く、特に教員はそれをするべきだと感じた。佐藤先生の授業のコメントにあったように、相手に合わせて(学年に応じてゆっくり明瞭→ だんだんと自然な速度で)発音ができるようになりたい。


2023年1月21日に開催された第24回英語教育研究大会の報告はこちら!

神奈川大学外国語学部英語英文学科の教職課程の理念はこちら!

神奈川大学外国語学部英語英文学科の「教員養成のための英語科教育研究」はこちら!

髙橋一幸教授をもっと知りたい方はこちら!

久保野雅史教授をもっと知りたい方はこちら!


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