小栁智義

医療系スタートアップの創出に関わっています。 仕事としては京大所属ですが、Noteでの…

小栁智義

医療系スタートアップの創出に関わっています。 仕事としては京大所属ですが、Noteでの意見発信は組織の意見を代表するものではありません。 京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構 ビジネスディベロップメント室長/特定教授

最近の記事

Venture Creation Model #3

前回のこのコンテンツの投稿から半年以上経ってしまっていますが、当時の原稿を元にから第3弾お送りします。 Venture Creationには人を巻き込む強いミッションを持て! ここまでボストンを中心としたVenture Creation Modelについて見てきた。最後は日本での実施可能性について論じるが、その前にもう一度Flagship PioneeringがなぜPioneeringという言葉を使っているかを確認する。 コンセプトとしては”First-In-Categ

    • 7月8-9日開催!ヘルスケアの研究→開発を加速するHVC KYOTO

      2024年7月7日、8日に英語おんりーの医療系ピッチ&マッチングイベント、HVC KYOTO 2024を京都で開催します。 大学の研究者もWelcome! 今年からは大学の研究者の発表にも重点を置きます。 「事業計画とかよくわからない」で構いません。ヘルスケアビジネスは規制産業で、取りうる打ち手は実は限られていますが、それを研究者の方に学んで事業計画をかけ、なんてどだい無理な相談なのです(と言いつつ、これまで8年間、それを突っ込み続けてきたのはほかでもない筆者ですが…)。

      • 情報革命は技術を民主化したが、ヒトゲノム計画はバイオ研究を中央集権化した。でも、ChatGPTは?

        ヒトゲノム全解明はライフサイエンス研究を民主化したか?  ヒトゲノム計画が終わったら研究者は誰でもその情報を元に自由な発想で研究ができて、今まで以上に新しい生命現象がわかり、病気の研究や新薬開発が進む、って思っていた(当時20代のワタクシ)。本気だった。なぜかと言うと、4回生のときに必死になって大腸菌の酵素のDNAシークエンスを同定したら、発表前に大腸菌ゲノムが発表されたではないですか!オレの半年返せって当時は思ったが、半年くらいで良かったと今は思っている。あの当時、筆者は

        • 創薬のシルクロードー創薬スタートアップと「Translational Research」のプレイヤーは変わり続けることを知ろう

          外部での講演前に考え方を整理するシリーズ。 今回は「オープンイノベーション」「Translational Research」 「事業化」できない構造に最初からなっている、日本の各種プログラム いわゆる「事業化」というと日本で最近話題になっているのは「スタートアップ」で、「ユニコーンを作れ」とか「リスクマネーが足りない」とか言うことになっている。でも、ことヘルスケア、特に創薬となるとやることは実は決まっていて、それぞれのステージゲートでの成功確率を計算し、如何にリスクヘッジ

        Venture Creation Model #3

        • 7月8-9日開催!ヘルスケアの研究→開発を加速するHVC KYOTO

        • 情報革命は技術を民主化したが、ヒトゲノム計画はバイオ研究を中央集権化した。でも、ChatGPTは?

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          BioJapan 2023 見たこと、感じたこと

          10月11−13日の3日間、ライフサイエンス業界では日本最大のBioJapanがパシフィコ横浜で行われた。おそらく2009年頃から断続的に参加しているので、毎回この業界の変化を感じる場所ではあるが、今年感じたこと等々について書き留めておく。 京大ブースは大盛況! 筆者は昨年4年ぶりに京大に復帰したものの、一人チームで細々と水面下での活動を行ってきた。今年は京大が一丸となってブース展示を行うということで、調整役として活動全般の取りまとめを担当した。 研究すごいですよー、と

          BioJapan 2023 見たこと、感じたこと

          「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」について考えてみる 3 現在→未来

          ここまで、経済産業省が掲げる「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」が必要となってきた背景と、目指すべき未来の製薬業界の姿について述べてきた。ここから読む人のために予備知識としては、 日本のアカデミア・製薬業界は欧米の時流に乗り遅れ、Biotech企業を中心とする創薬エコシステムを作らなかった。そのために資金もなかった。 製薬企業がデジタル化の進む医療で生き残るためには、一般市民と医療IT人材への教育への参画が必要 と言う感じで書いてきたことを念頭にこの項を理解してほしい

          「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」について考えてみる 3 現在→未来

          「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」について考えてみる 2 未来

          一つ前の項では経済産業省が実施している「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」が必要とされる背景と、出回っている情報だけでは理解しにくい行間について解説した。簡単にまとめると、 日本は基礎研究力があるが、開発の仕組みを研ぎ澄ます努力が欠けていた 特に資金量が足りなかった 今になって資金だけを入れようとしてもうまく動き始めてくれない… という状況だ。 この項では3000億円という規模や、その使いにくさを一旦忘れ、日本の創薬エコシステムのバラ色の未来、現実的な未来そして、残

          「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」について考えてみる 2 未来

          「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」について考えてみる 1 現状

          中途半端な打ち手が続いてきた日本の創薬エコシステム育成 広く日本社会に大きく関わる内容ですが、創薬に関連する業界内向けの話題です。 世界で数少ない創薬能力を持つ国だ、という自負にも関わらず、日本の製薬業界はパンデミックの流行に対してワクチンも治療薬も創出できなかった。利益追求型の製品設計、グローバル企業との競争に勝ち残るための積極的な海外進出、一方で新興企業が育ちにくい中小乱立の国内市場構成などいくつか課題はあるが、なにより「国内のスタートアップが競争力を持たない」ことが最

          「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」について考えてみる 1 現状

          BIO2023でみた米国のUpdateと日本の資金調達環境(あくまでもSU支援者としての観察)

          少し前の原稿からですが、6月のBIO2023の前後で接した米国市場の状況と、それのときに感じた国内に期限を持つスタートアップの資金調達環境についての文章です。 2023年6月NY、街中は人で溢れていた San DiegoでのBIO2022では、不況の影響をモロに受けて不況をどう乗り切るか?と言う話題で持ちきりだったし、San Diegoのダウンタウンでもホームレスが以前より増えていて驚いた。その後9月に訪れたStanfordでのSPARK Global Meetingでも

          BIO2023でみた米国のUpdateと日本の資金調達環境(あくまでもSU支援者としての観察)

          Venture Creation Model #2

          前稿ではじめたVenture Creation Modelの2回目です。 ここではFlagship Pioneeringのホームページ情報をもとに、Venture Creation Modelについて解説する。(インタビューしたわけではないので、多分に想像が入っていることはご了承ください) Flagship PioneeringではVenture Creationの段階を4つに分けている。 Explorations, ProtoCo, NewCo, GrowthCo

          Venture Creation Model #2

          Venture Creation Model #1

          これまでは「日本の科学技術への投資が云々」というと、ノーベル賞学者の先生方が、自分の分野にお金をよこせ、とでも言っているかのように聞こえ、議員さんたちからは「バイオに20年以上投資してるけど結果が見えないじゃないか」というコメントがあった(らしいと聞いています)。ところが今回のパンデミックで、日本はモデルナ、ファイザー、アストラゼネカのワクチンに依存し、しかも前者2つは「mRNAっていう技術らしいよ」ということで、「日本にはない、見たこともない技術で出来た未来のワクチン」のよ

          Venture Creation Model #1

          Innovationは主要貿易物産だ!

          2021年5月21日モデルナ社製とアストラゼネカ社製の新型コロナウイルスワクチン製剤の販売が承認された。モデルナのワクチンはファイザーと同じくSARS-CoV2タンパク質の一部をRNAの状態でリポソームを使って細胞に送り届けるものだ。一方のアストラゼネカ(AZ)のワクチンはアデノウイルスベクターを使用して二本鎖DNAの状態で細胞に送り届ける。 報道では「ワクチン供給が遅い」とか「接種順番の不公平」と言うニュースが多いが、いくつかあるのが「なぜ日本製がないのか?」というところ

          Innovationは主要貿易物産だ!

          大きくならない雪だるま

          今日は5月14日。蔓延防止措置の延長や終了。東京オリンピックの開催方法や、中止の方法など、大きなレベルでの決断の話が周りにあります。一方で身近なところを見ても、年次計画の実行が始まり、自分の仕事の計画の中での目標から、月次、週次、毎日の仕事に落とし込む決断が必要となります。 特に東京オリンピックの話を見ていると、①そもそも東京オリンピックに立候補した頃からのイベント自体の是非、②蔓延防止措置で仕事や娯楽を奪われたことへの不満 vs. 医療体制崩壊への不安、の議論の飛び火、③

          大きくならない雪だるま

          2020年10月9日という日付

          2019年にウチの中二がヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種をしたとき、日本政府はまだHPVワクチンのリスクの説明を全面に打ち出しており推奨はしていませんでした。国内でのHPVウイルスワクチンの課題については村中璃子さんの一連の活動があり、 国際的にもジョン・マドックス賞(Nature誌の元編集長が創設した、科学ジャーナリズムで注目されている賞)の受賞で高い評価を得ています。 実際、WHOは2015年時点で既に日本政府に対して警告を発出しており、長い間ワクチン副

          2020年10月9日という日付