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黒野 燁
2019年9月28日 00:39
今年の春から大学に通っている佐藤は、正義感の強い男だった。ーー悪いことをした人間が、法だけで裁かれるのは物足りないーーそんな思想を持つ彼は毎日のように、何らかの悪事に手を染めたとされる人物の個人情報を、インターネット上の様々な媒体を使って拡散させる『ネット私刑』を行なっていた。ーー【拡散希望】○○の犯人の住所特定ーー佐藤は、スマートフォンを使いこの文を匿名のSNSアカウントで投稿し
2019年8月22日 21:32
20年間、作曲家として音楽業界に携わっている私は、10年前に出したアルバムが大ヒット。グラミー賞を受賞した。しかし、あれから私の曲の人気は下降の一途を辿ることとなる。マスコミからは、過去の存在として扱われ屈辱的な生活を余儀なくされた。かつての私は、アイデアが地下水のように湧き出ていた。そして、滝のように降り注ぐ、賞賛のシャワーを浴びる音楽生活を送っていた。もう一度、あの頃に戻りたい。