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大人はもっと綺麗だと思ってた

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田舎の芋少女が都会のリアルに汚されていくお話。
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大人はもっと綺麗だと思ってた⑺

彼に会えなくなって一ヶ月が経った。
彼には何をLINEしても会えない趣旨の返信しか返ってこなかった。

先輩の告白は適当に断った。

私の心はあの日から、何も動いていなかった。

何度も何度も彼と交した最後の言葉を思い出しては涙を流す繰り返しだった。

会いたい。

あれだけ呆気なく突き放されたのに、
彼を追いかける価値などないと分かっているのに、私は彼に会いたくて仕方がなかった。

次の恋など、

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大人はもっと綺麗だと思ってた⑹

翌朝。

「おはよう」

まだ日が登りきっていない薄暗闇の中、
私はアラームで目を覚ました。

まだ半分夢の中にいる彼に一声掛けて、
私は一人で身支度をする。

「ねぇ」

彼が私を呼んだ。

「ん?」
「こっちきて」

ベッドに近寄っていくと、彼が私の腕を掴んでベッドの中に引きずりこんで行った。

「わっ!ちょっと、何するの!」

笑いながら彼の腕を力なく押し返した。

「私もう時間だよ?」

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大人はもっと綺麗だと思ってた⑸

「ねぇ先週の課題やったー?」
「え、あれまじ終わらん、やばくね?」
「分かる〜私も終わらないんだけど!」

いつも通りの騒がしい大学キャンパス内。
私はもぬけの殻でただ教室の角に座っていた。

課題…やらなきゃな…。

頭では分かっていても、
手が動かない、頭がずっとボーッとしている。

彼との関係に名前をつけたい。

でも、これで会えなくなるのは嫌だ。

永遠に二つの想いが葛藤している。
もう頭

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大人はもっと綺麗だと思ってた⑷

それから毎週のように私たちは会っていた。

会う度に彼は、
「次はあそこ行きたい」「これ食べ行こう」
と次の話をしてくれた。

ある日いつも通り二人で部屋でくっつきながら、紅葉の特集をしているテレビ番組を見ていた。

「ねぇ私、紅葉が終わる前に見に行きたい」

私なりに勇気を振り絞って誘う。

「ええやん、行こう、どこが綺麗かな?」

嬉しそうにスマホで調べ出す彼に、
すぐにでも気持ちを伝えたくな

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大人はもっと綺麗だと思ってた⑶

翌週、私たちは夜景をリベンジする為、車を走らせていた。

「疲れたら変わるからね?」

お互い免許を持っていたので、車の運転は交代交代で行こうと話していた。

「俺の最近ハマってる曲流してあげる。」

彼がおもむろに曲を選んだ。

歌詞が今の二人をそのまま表しているようで、少し気まずくなった気がした。
私だけだったろうけど。

「ここから山道だね、道細いな…」

山の麓につき、車のライトをハイビー

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大人はもっと綺麗だと思ってた⑵

それは大学二年の秋、部活の試合で他大学へ遠征した時の事。

「部活楽しいですか?」

話しかけてきたのは、相手大学の選手。

試合の裏方で仕事をしている時、
相手も同じ場所で試合の補助をしていた。

手さえ動かしていればいいので、
私達は口の暇つぶしに会話を始めた。

「高校はどこ?」
「この選手はどういう選手?」

最初は部活の話をしていたが、
次第にプライベートの話になっていった。

「彼女は

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大人はもっと綺麗だと思ってた

私は男が嫌いだ。

すぐに嘘をつくし、精神年齢低い人が多い。
適当な所ばかりで馬鹿みたいな言動も多い。

本当に大っ嫌いだ。

なのに私は、その男達にとっての『都合のいい女』を演じ続けている。

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二年前の秋、私は大学に通うために田舎のちいさな町から都会に出てきた。

恋愛もろくにしたことがなく、恋愛年齢は恐らく中学二年生くらいで止まっている。

素敵な出会いがあればいいなぁと、
呑気に考えな

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