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当事者の特権と責任~被害にあった者が語るべきこと※11/30訂正あり

もう一つの捏造が明るみに出たことで、某ディレクターによる報道被害の深刻さを改めて感じました。何より恐ろしいのは、これらのケースはまだ「ましな方」だということです。

もっとひどい被害を受けて、より深刻な事態に陥った人たちが、かなりの人数いるのではないか。そして、被害を訴えることすらできずにいるのではないか。残念ながら、そう考える方が妥当なようです。

私が危惧していたように、そしてみちさんご自身がSNSで書かれているように、これは氷山の一角なのです。そうなると、私自身が負うべき責任というのを、考えざるを得ない。それは被害にあった者の中でも、声をあげることのできる者が果たすべき責任です。私にしかできないこと、それは被害について語ることであり、さらには加害者を糾弾することに他ならない。

被害を受けた者が語るからこそ、それらの言葉は説得力を持つのです。

そんなのは当たり前のことなんですが、はっきり自覚したのはみちさんの一件がきっかけです。それまでは、自分を守るためにしているという意識が強かったし、自分ができることはここまで、と線引きしているところがあった。後はメディアと視聴者と他の被害者の人たちが、少しでも力を尽くしてほしいと期待していたのです。私のような一般人が個人でできることには、限界がありますからね。

メディア関係の人たちからは、NHKの謝罪はBPO案件化を逃れるための方便だという指摘がありました。NHKは表向き謝罪したもののまったく反省していない、私のことはクレーマー扱いしている、とも伝え聞いています。事実、今回の件は完全勝利とは言い難いもので、NHKの責任を追及しきれたとは言えません。指摘されるまでもなくそういったことは、本人が一番よく分かっているのです。

ただ、そういう指摘を前にすると、なんだか自分のしたことが軽んじられている気がしたし、すでに満身創痍なのにこのうえさらに鞭打つ気なのかと、しんどい思いがしました。当初はまだ捏造報道と交渉の痛手から回復していなかったこともあり、極度の人間不信に陥っていました。とくに、マスコミ関係の人たちは、NHKに限らず警戒していましたね。なにせマスコミによる被害を受けたばかりだったので。(いまは違いますよ!)

4か月かかった交渉を終え、暴露記事を書き終えたいま、ようやく我が身を振り返る余裕が出てきました。そんなときに第二の被害が発覚したのです。想定内ではあったけれどやはりショックで、そのことの意味を深く考えざるをえませんでした。
他人ごとだといって済まされる問題ではない、ということです。自分のことだけ考えて、自分の立場だけ守って、自分のためにNHKの批判をしていればそれでいいのかな? という疑問を抱きはじめました。

すると、追及が甘いのでは? という趣旨の指摘が、いまになって胸に迫ってきたのです。それもそうだよな、と深く納得するところがある。

私はNHKから被害を受けた当事者なので、ある意味、特権的な立場にあるのです。NHKの不正を追及するにあたって、被害を受けた人間からの批判ほど 説得力をもつものがあるでしょうか?
先に挙げた業界の人たちの指摘は、「特権性を活かしきれていないのでは? 当事者としてどうなんだ?」という問いかけではなかったかと、思うようになりました。

BPOに仲介を仰いでNHKと交渉した結果、9/6にクローズアップ現代の番組内で訂正と謝罪がされました。これはいちおう、放送法9条に定められた「訂正放送」であると見なすことができます(“中の人”たちが反省してるかどうかは別として)。※放送法でいうところの「訂正放送」ではない、とのご指摘をいただきましたので、以下「謝罪放送」に訂正いたします。

この謝罪放送だけ見ても、あまり具体的な内容ではないので、何があったかよくわからない人も多かったのではと思います。本放送を見た人もそこから4か月あまり経過しているため、記憶が曖昧になっているようです。SNSで反応を見てみると、私のことを別の出演者と取り違えているコメントがあったりしました。

ちなみにクローズアップ現代の公式サイトからは、すでに「おわび文」は消されています(2023年11月14日現在)。このままでは捏造報道がされた事実そのものが消し去られ、忘れ去られてしまいます。

クローズアップ現代の公式サイトに記載されたおわび文。すでに取り下げられている。
内容は同番組の謝罪放送とほぼ同じ。

なぜそのような事態が起こったのか、検証がなされていないという声もあり、それはもっともだと思います。交渉の過程においても、捏造の原因について説明を再三求めましたが、納得のいく答えは返ってきませんでした。
検証するためにはBPOの審理に持ち込まなければならない。そうでもしない限り、彼らは決して口を割りません。

だから、番組と公式サイトでの訂正と謝罪というのも、形ばかりで実のないものです。説明責任を果たさないまま謝罪しても、本当に謝ったことにはならないですよね。「おわびはするが謝罪ではない」と誰かが言っていましたが、ああいう詭弁を弄するのが腐敗した組織の特徴で、NHKも例外ではありません。

本来であれば、①捏造の経緯をつまびらかにし、➁担当者を処分した上で、③再発防止策を立てるべきなのです。NHKは「再発防止に努めます」と言いますが、肝心な部分①➁をすっ飛ばして③の再発防止ができるわけがない。まさに絵に描いた餅ですよね。

番組の責任者から送られてきたおわび文の一部。クロ現は過去にもBPO案件化した回があり(「出家詐欺」報道)、再発防止策を立てていたはずが……実効性がまるでないってことですね。

そういったことはすべて承知の上でBPOに審理を求めるのは諦め、最低限の落とし前をつけさせることで、NHKとの交渉は終わりました。消化不良は否めませんが、これが私の限界であり、まさしく「総合的な判断」の結果でもあります。

あの時点ではあれで精一杯だったので、後悔のしようもないのですが、これで終わりというわけにはいかないんですよね。謝罪放送の直後はそう思っていましたが……。
noteもTwitterもやめて、「ひきこもり」だの「社会的孤立」だのといった問題から手を引いて、元の平穏な生活に戻ろうと思っていました。でもそれはできない相談だったんです。

次に私に与えられた課題は、事の顛末を書き残すことでした。フォロワーさんへの報告程度で済ませようと思ったのに、取材や交渉の裏側を1か月かけてほぼ毎日書き続けることになりました。

謝罪放送を見てもよくわからないという人や誤解している人も多く、説明する必要を感じたのです。NHKは説明責任を果たそうとしないし、内情を一番よく知っているのは私ですし、私以外の人が書いても憶測の域を出ない。私が死んだら全てが無になってしまう。それだけは避けたかった。とにかく書かなければ、という一心でした。

幸いこの体験記、というか暴露記事は多くの方に読んでいただき、NHKの「悪行」について理解を深める一助になったかと思います。これを書いたことで私の役割は終わった……はずなんですが、まだ書かねばならないことはたくさんある気がするのです。捏造を生む土壌は何も変わっていないのですから。

捏造や歪曲は、どこの局でもどのような番組でも発生しうる不正行為のようですが、NHKの社会的弱者を扱った番組で捏造がなされていることは、とりわけ悪質で深刻な問題だと私は考えています。被害を受けても抗議できない人、声をあげられない人をターゲットにしているからです。しかも公共放送で。

ここで冒頭の一節「何より恐ろしいのは、これらのケースはまだ「ましな方」だということです」に立ち戻るのですが、私のケースはNHKに抗議したり、このように記事を書いたりできるという点では、「ましな方」なのです(被害の程度が軽い、といっているわけではありません)。
だったら自分のためだけでなく、泣き寝入りした多くの被害者のためにも、何かしなければならないのでは? と考えるようになりました。声をあげられる人が抗議して不正を追及しなければ、被害はいつまでたってもやみません。

とはいえ、表立って抗議したり、正式な手続きを踏んで交渉したりすることは、確かに負担が大きい。そのせいもあってか、「ひきこもり界隈」に属して精力的に活動している人たちでさえ、NHKをはじめとする報道機関の捏造行為を積極的に糾弾することはしません。オピニオンリーダーのような立場にいる人から報道被害の話を直接聞きましたが、いつも泣き寝入りで終わっているそうです。抗議し糾弾する力が十分あるようにお見受けする方々でさえ、そうなのです。

「元ひきこもり」として「ひきこもり」支援にまわっている人たちにとっては、いわゆる「居場所」の運営や相談業務が優先されるため、報道被害の問題まで手が回らないのかもしれません。報道機関にきっぱりNOを突きつけて被害の拡大を食い止めようとする人は、「界隈」には見当たらない。自らが被害にあっても、他に被害者がいることを知っていてもです。NHKと関わりの深い支援団体に属している場合なんかは、いろいろと支障があるのだろうな、とは思いますが。

そういう事情も鑑みて、私のようにしがらみのない人間が根気よく声を上げ続けていくしかないのかな、という結論に達しました。今まで若干腰が引けていたのは先述のことに加えて、私自身のプライバシーの問題や、加害者ではなく被害者の方がなぜか叩かれる傾向などを考えてのことです。そういったことにも留意しながら、できる限りのことをしていこうと考えています。

闘いはまだ終わっていません。ご理解とご協力をどうぞよろしくお願いいたします。



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